2017年の振り返りと2018年の目標

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手放して、積み上げる。より強くなっていく。それを繰り返している。繰り返していきたい。
2017年。総じていい一年だった。とまず思える。そのことを言祝ぎたい。ラブリーでチャーミングな一年だった。 2017年は僕は忘れることのない年になるだろう。そのことを言祝ぎたい。
この一年で店はけっこうダイナミックに変わった、最終的には前進した、という感じだった。
順を追って。いくらか賭けみたいな変化がまずあり、売上的な好調と店としての停滞みたいな時期があり、また賭けみたいな変化があり、それから売上的な低調と店としての前進があった、最後には「本の読める店」になるという革新的な変化があった。
賭けみたいな変化。
まず1月、それまで16時だった週末の開店時間を12時に変えた。12時24時という12時間営業になった。
それから2月、それまで18時だった平日の開店時間をやはり12時に変えた。12時24時という12時間営業になった。これはひとつの賭けだった。これまで平日の昼間というのは「定食川越」として近所の勤め人を相手に定食だけを出す店としてやっていた、フヅクエとは関係がないものとしてやっていたのでしゃべったりできる普通のランチの店だった、それは売上全体の小さくない割合、30%以上を占めていた。それをほぼ捨てて、最初から最後まで、フヅクエという万人向けとはとても言えない形態の店で営業することにした。定食屋のままであったほうがたぶん賢明だった。平日に昼間にフヅクエを開けてみたところで、いったいどれだけの人が来てくれるというのだろうか。ほぼ間違いなく売上は減るだろう。賭けだった。
1年やってみて、その賭けにはまあ勝ったといって差し支えなさそうだった、満身創痍の勝ちという感じだが。店を営業する時間は1.5倍に増えた。生じた売上は1.25倍になった。つまり、2017年はこの場所を限界までフヅクエとして稼働させることでどうにか売上を伸ばすことができた、というのが数字的な結果だった。よかったよかった。
売上的な好調と店としての停滞。
1月、週末の営業時間が延びて売上がよくなった。2月、平日も変えて、ここは定食屋分がなくなるのでだいぶ大きく減らすかと思ったら最小限の傷で切り抜けられて(つまり昼からフヅクエに来てくださる方が、ありがたい、助かることに、ある程度おられて)、3月から8月までは売上的には非常に好調だった。この数字だったらまともに暮らしていけるぞ、これ維持できれば俺は気分いいぞ、というものだった。しかしずっとこれを続けていくのはしんどい、働く時間を減らさなければとても体がもたない! だからスタッフの募集をはじめた。
表向き快調。しかし店としては停滞していた、新しいことは何もやっていなかったし、やる余裕がなかった。なんせ店をずっと営業している以上ずっと店にいなければならないし、売上が伸びているということは仕事量も増えるわけだし、さらにこの時期ぼくは本の執筆というまったく別のことをやっていた。ひたすら店を回し、隙間を縫って本を書く、ということをずっとやっていた。なにも余裕のない日々だった。休日もひたすら書いていた。(なお本の話はせっかく初稿300枚を書き上げるまでは進めたのに僕が短気を起こしたためなくなったというかなくした。原稿はあるので、今はどこか出してくれる出版社ないかな〜と思っているところ。)
賭けみたいな変化。
7月、パソコンの使用を制限するという仕組みの変更をおこなった。これによってフヅクエでパソコン仕事をするという過ごし方はほぼできなくなった(ほとんどタイピングを要さない仕事なら引き続きできるけれど)。これによって、フヅクエでパソコン仕事をするという過ごし方をするお客さんを受け入れることができなくなった。そういう方々から上がっていた売上をぜんぶ手放すということだった。これは、決して小さな損失ではなかった。
ただ、ちゃんと間違いなく当たり外れなく本を読める環境であり続けるためには必要なものだと判断したため、舵を切った。おっかないな〜この決定おっかないな〜と思いながら、清々しさみたいなものというか、本を読める店としてまたひとつ筋が通ったというか、強くなったようないい気分もまたあった。
売上的な低調と店としての前進。
秋から売上がどんどん下がっていった。けっこう深刻に落ちた。まずいぞ、というところまで落ちた。パソコンの方を取り込めればこんなことにはならなかったのに! この時期、先述の本を書く仕事は夏で終わっていたので、店も暇になり、僕も暇になる、ということになった。そんな折りにトンプソンさんという新スタッフが入った。
これはフヅクエにとってすばらしいタイミングだった。10月11月12月、最後の3ヶ月はひたすら店を新しく、よりよくしていく期間になった。ああしよう、こうしよう、そうしよう、そうした、こうした、ああした、じゃあ次はと、ひきちゃんとトンプソンさんとの3人チームで(チーム!)店を改善していった。厨房内のあれやれこれやがとにかく整理されていったり、スープとパンというわりと新たなキラーメニュー的なメニューが導入されたり、看板を作り直したりショップカードを作っていろいろ置いてもらったり、ぐんぐん店をよくしていく動きが推進されていった。一年のうちで一番楽しい時期になった。
また、新スタッフの加入によって2017年の目標だった「ワークライフバランス」が達成されつつあるというか、最後の最後にそれが実現しはじめた。12月後半から、これまで13時間×週6日だった僕の店における労働が、13時間×3日+6時間×3日くらいになりつつあって、ずいぶん楽になった。というか今はいきなり時間があいて持て余しているというのが実感だが。でも楽になると、もっと店のことを考えられるようになりそうで、これはいいことでしかなかった。(増えた人件費に見合うだけの売上が必要だが……! 夏までの売上であれば賄えた(からこそ募集していた)が今の水準はまずい収支で、だから、もとに戻らないと……!)
「本の読める店」になるという革新的な変化。
秋のいろいろの変革のひとつで、ふいに思い立ってふいに導入された変更だった。しかしそれは予め用意された変更というか、長い時間を掛けて醸成されていった結果みたいなものでもあった。
フヅクエという店を説明する言葉が、これまでの「ひとりの時間をゆっくり過ごしていただくための静かな店」から「本の読める店」というシンプルな、これ以上ない、すばらしいものになった。それまでも体現はされていた、実装はされていた店の軸が、完璧で端的な表現として昇華された感じだった。店としてものすごい強靭になった気がしている。
これは先述の短気を起こしておしまいにした本の取り組みのひとつの成果でもあって、主にこの店のことを書いていたのだけど、その仮タイトルが「本の読める店」だった。なんて据わりのいい言葉なんだろうと思ってずっと持っていたのだけど、それがこのタイミングで解き放たれた。だから本が出なかったとしても本を書いた時間、考え続けた時間はとても意味のあるものだった。書きながらフヅクエのことがよりよく理解できていった気もしていた。
ところで一年前の振り返り記事にこんな箇所があった。長いのだけど、長いので要約するけれどつまり「これまでよりもっと「読書」を前面に押し出していきつつある、そしてもっと出していきたい」ということだった。
もっとなんか「本」にフォーカスしようみたいに秋ごろからなっていった気がする。本であり読書でありに。ただの謳い方の問題かもしれないけど。ここは読書の場所なんだ、という謳い方により意識的になってきたというか。webとかはいまも「一人の時間をゆっくり過ごしていただくための静かな店」って書いてあるのだけど、Twitterのプロフィールの文章は秋に変えていて、今は「ゆっくり本を読みたい、そんな人のために作ったカフェのようなバーのような食事処のような静かな店です。」となっている。
ゆっくり過ごしていただける場所ですよーとか静かな場所ですよーとかだからおしゃべりはご遠慮いただいてますよーとかぐねぐねいろいろ言うよりも、最高に本を読める店、というそれを押し進めたいようなそんな気分になっている。最高に本を読める場所、である以上ゆっくり過ごしたいし静かなのがいいし喋ってる人いたら無理でしょ、だからそういうことになるでしょ、ということなので、そのすべてを表すのが最高に本を読める場所というそのワンフレーズで済むので、そこを押し進めるのが得策なのかなみたいな。そのあらわれが会話のない読書会であったり、あるいは読書日記であったり、な気がする。(...)
今までどおり読書に限らず「一人でゆっくり静かな時間を過ごす」をしたい方全員に向けているのは間違いないのだけど、アピールの仕方としてはもっともっと読書を前に出したい、という気分がある。そこで進んでいこうと。なんせ読書好きのための聖地に朕はなるつもりなので、そうしていこうと。
こうやって一年前の言葉を見て、俺は思うんですけど、お前かっこいいよと、それやってるよと、進んでるよと、ちゃんと実行に移してるよと、ちょっと感動した。うるっとした。見事やってて。なんというか。立派すぎるwwwwww
そういうわけでナイス2017年でした。それで2018年の目標は、だから、売上のアップです。いやそれは目標じゃないな、売上アップは「後生だからお願いします」という神頼み的なもので、今年の目標はなんだろうな、なんだろう、いい一年にすることです。いやそれはだから、いい一年にするためにはどうありたいか、それが目標というか、どうやっていい一年にするんですかというところで、なんですかね、年末に「 ひとの読書 」というインタビュー企画を始めたわけなんですけどそれもなんというかすばらしいもので、大満足だったのだけど、だから、上述の去年からのものを含めると「会話のない読書会」をやり「読書日記」を始め、定食屋もなくなってパソコンもできなくなってより先鋭的に読書の場所になって、さらに拡張子も「本の読める店」になり、それで「ひとの読書」を始め、すべてに共通しているのは「読む」のそばにいるということだった。(「ひとの読書」の記事をアップして見たときに改めて感じたのだけど、PCだと画面の左上は「本の読める店 fuzkue」と書かれているわけなのだけど、この記事とこの拡張子の、矛盾しなさというか、一直線でスッとつながる感じというか、知らない人がなにかのきっかけで読んで「これはなんの媒体なんだ?」と思ったときに、「あ、本の読める店のWebなのね」と一瞬でスッと腑に落ちる感じ、これはすごいなと思った)
だから今年も「読む」と真面目に付き合うこと、「読む」のまわりでのびのびすいすいと遊び回ること、それを続けていきたい。
その一環でとりあえずですね、ゲヘヘヘヘ、先日思いついてですね、「これはスマッシュヒット間違いなしだ! たいへんたいへん! 怪物を生み出してしまう!」と大喜びしたのですがちょっと作りたいものができてつまり読む関係グッズ、物販、いろいろに卸したりしてね、というね、お金生む、商品、金の卵、開発。フヅクエの外でお金を生むものを作りたいというか作れると非常にヘルシー。というか楽しそうなのでそれやりたい。
ともあれとにかく当然ですが今年もたしかに間違いなく「本の読める店」であり続ける。どこよりも本の読める店になる。本を読みたいんだよねと思ってフヅクエの扉を開けてくださった方全員に気持ちのいい、そうそう、これだこれ、たしかにwww 読めるwww という時間を味わっていただけるよう、全力を尽くしたい(まじめだ!)。
それでは今年もよろしくお願いいたします。