メールマガジン「読書日記/フヅクエラジオ」 | fuzkue
##5月5日(日)
タオルケットだけで寝ていたら寒くなったので遊ちゃんを起こして布団ごと移動してもらってそれでやっとあたたかく眠れて、起きて、ぎぼさんと飲むときは布団敷いて行って帰りもタクシーで帰ってくることにしよう、と言った、僕もしゃけスタンドに行きたい。
店、今日はご予約も4つか5つ程度で少なく、と思ったら12時半に満席になって10人全員のオーダーを同時にこなすような状況になってそれは15とかのオーダーを頭の中に入れて最大の出力で最適な組み立てをするみたいなそういう作業でなにか怖さみたいなものがあって間違えたらいけないというような、あって、怖い、と思いながらどうにかこなしたらやることもなくなり座った。突風みたいだった。
その10人の中には日本語を解さないカップルの方もいて最初に入ってこられた男性に日本語で話しかけると日本語を解さないとわかって後ろから来た女性が「日本の人かな」と思ったので日本語を発したら同じように解さない方で僕の偏見というか先入観というか見た目でいろいろ判断しているんだなと思っていくらか恥ずかしかった。この店しゃべれないんですよ、と言うとそれは承知の上という感じで「writing and reading」みたいなことを言われて座られて、メニューを指し示しながら日本語、読めたりしますか、と尋ねるとオフコースでノーだけどトランスレイトのアプリがあるからみたいな感じで、トランスレイトのアプリで見るにはフヅクエのメニューは長すぎた、コーヒーとケーキとティーとケーキということに落ち着いて、それから席料の説明をパソコンを持っていってして、それで出した、ティーはおすすめをということだったので今の紅茶のネパールのミストバレー茶園のやつにして出すときに説明のやつを持っていって「Nepal」と言って見せたらいいリアクションをもらって清々しかった、二人は二人ともノートを出して文章を書いていた、僕のところからよく見えるのは男性で改行しないでずーっとノートに何かを書いていてそれは滞在中何ページにも渡って右ページしか使わないというような書き方だった、途中で頃合いを見て今のプライスこれね、それでもしワンモアコーヒーだとプライスこうなるね、という説明をして、いいリアクションをもらって清々しかった、途中で女性がこっちを見たのでちょっと待ってねとやってから行くと置いているエッセイを執筆した「stone」の冊子を開いていたところでこれあなただね、と嬉しそうに指をさすのでそうだよミーだよ、というふうだった。『読書の日記』を見て「もしかしてユー?」と言われ、「マイ・ブック」と答える、それでめちゃくちゃいいリアクションをしてもらう、という場面を何度か想像した、どういう虚栄心なのか。その「マイ・ブック」の発声のイメージは『デス・プルーフ』でカート・ラッセルが酒場のテラスというか店の外の板張りのところで手帳を出してスピーチする場面だった。3時間ぐらいだろうか、ガシガシにいい時間を過ごしていってもらえて、やっぱりその、言語で通じ合っていない人たちと通じ合う感じというその気持ちよさはけっこううれしいものがあった、よかった。よかったと同時にやっぱりメニューと案内書きの英訳バージョンはつくりたいなと思って、やっぱり読んでもらいたい、読んでもらって、より真価みたいなものを知ったうで喜んでもらいたいというか、今日喜んでもらえたなら、読んだらもっと喜んでもらえるはずだ、という思いがあるのだろう。
今日はソロで、最初のその突風のあとはいったん凪いでというか着々とウェイティングのところに記入されたり予約が後ろに入ったりしながらそれが起こるまでは凪いで、座ってお酒のメニューを考えたりするような時間もあったが、入れ替わる時間とかでまた猛烈な風が吹くようなことが2度3度とあってすごかった。今年のゴールデンウィークは去年のそれとは違うような気がすると思って、お客さんも多いし、という以上に、滞在時間も長いし単価も上がっているような気がすると思って、もしそうだとしたら、それは、今日はフヅクエでめちゃくちゃ楽しむぞというような、読書というレジャーみたいなもの、そういうものが定着というのか、進んだ、そういう表れだと思って、それはいいことだった、と思って夜遅くになってエクセルを開いて去年のゴールデンウィークと今年のゴールデンウィークの数字を出して比較してみたところ人数は去年よりも1日5人くらい多くて、それは素晴らしいことで、それで単価もやっぱり100円ほど高かった、これも素晴らしいことでそして滞在時間も20分長い、総じてその思っていたとおりで、うれしい。と思っていたところメールを開いたらフヅクエに新しい評価がつきました星5つですというグーグルの口コミの通知が来て見ると「This is my new favorite place in Tokyo. It's not for everyone, there is no speaking inside, only gentle reading, writing, studying, mostly analog, some sounds of the slow preparation of coffee, thee and foods. The owner is a great guy who really has a vision for this place. You pay a fixed steep price for your coffee and cake, but after that extra is free of charge. It's the kind of place that still enabled or even invites contemplation, even in the middle of Tokyo, it's a true inspiration for me.」とあって今日のその方で、なんだかとっても俺はうれしいよ、と思っていた直後にラップの切るところに指をこすって血が出た。
と思ったら「steep」って法外に高いって意味なの!? と今なって笑った。
ここに来て謎の靴ずれ。
今日はどうにも開放的な気分でやりきった、がんばった、よく働いた、そういう充足感とともに、あと1日という大きな喜びがあった。もう終わったも同然だった。すごい。こんなにがんばれるものなのか。うれしい。とてもうれしい。
あと1日!
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##この週に読んだり買ったりした本
マルセル・プルースト『失われた時を求めて〈5 第3篇〉ゲルマントのほう 2』(井上究一郎訳、筑摩書房)
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ビー・ウィルソン『キッチンの歴史 料理道具が変えた人類の食文化』(真田由美子訳、河出書房新社)
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