2018年のよかった本ベスト10

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というわけで2018年、読書。一年前、こう書いている。
ところで今年2018年の読書に関する抱負を最近思いついてそれは「読了にこだわらない読書をする」です。
たった今「減った」と嘆いたり慰めたりした矢先にあれなんだけど、というかだから、そう言ってしまうその口を閉ざしたい。大事なのは何冊読んだかではなくどれだけ豊かに愉快に本と付き合えたかであって、読み切ろうが読み切るまいが関係ないはずだ、というか読書の豊かさと読み切ったか否かは比例しないはずだ
それで、抱負に従い、無事そのようにできた感じがあってそれはやっぱり僕はよかった。
がんばらない、無理しない、飽きたら放棄する、そういうことをやっていたわけで、だから、ちょっと読んで、あ、ダメだ、合わない感じがする、と思ったらわりと気軽に置いちゃっていたので、先日アップした「2018年の読書の記録」でも見ていると「あれ、この本すぐ名前出てこなくなる」というのがあって、全然踏ん張らない。この、踏ん張らない読書によって踏ん張ってみたら面白くなったかもしれない本をみすみす手放しちゃったことも起きているだろうけれども仕方がない。それよりもそのときどきにちゃんと気持ちが反応するものを読むことのほうが大事というか大事とかでなくまあとにかく、真面目にちゃんと無責任に振る舞おう、というところで、そういう年だった、その中でいくつもいい読書が実現された、よかった10冊。ランキングとかではなく、読んだ順番。
トマス・ピンチョン『重力の虹』(佐藤良明訳、新潮社)
山野井泰史『垂直の記憶』(山と渓谷社)
ジョン・ウィリアムズ『ブッチャーズ・クロッシング』(布施由紀子訳、作品社)
ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』(鼓直訳、水声社)
武田百合子『犬が星見た ロシア旅行』(中央公論新社)
グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』(真野泰訳、新潮社)
ジョゼフ・チャプスキ『収容所のプルースト』(岩津航訳、共和国)
マルセル・プルースト『失われた時を求めて』(井上究一郎訳、筑摩書房)
リチャード・フラナガン『奥のほそ道』(渡辺佐智江訳、白水社)
宇田智子『市場のことば、本の声』(晶文社)
保坂和志『ハレルヤ』(新潮社)
柴崎友香『公園へ行かないか? 火曜日に』(新潮社)
中井久夫『徴候・記憶・外傷』(みすず書房)
ジャック・ロンドン『マーティン・イーデン』(辻井栄滋訳、白水社)
山口慎太朗『デリケート
滝口悠生「アイオワ日記」『新潮 2018年11月号』〜『新潮 2019年1月号』(新潮社)
ケイト・ザンブレノ『ヒロインズ』(西山敦子訳、C.I.P.Books)
村瀬秀信『止めたバットでツーベース 村瀬秀信 野球短編自撰集』(双葉社)
吉田健一『時間』(講談社)
10冊では収まらなかったし「冊」とはなんだというふうなのもあるがなんでもいい、こうやって並べて見るだけでもいい気分が戻ってくるようで、やっぱりいい一年だったと思える。以下一言ずつ。
『重力の虹』
こんなに「何がいま書かれているのか全然わかっていないで読んでいる!w」となりながら随所随所で雷に打たれたように面白いというそういう読書ってめったにあるものではなかった。
『垂直の記憶』
謎の「山!」という時期に読んだらあんまり面白くて一晩で読んでいた。
『ブッチャーズ・クロッシング』
見える!荒野が俺には!見えるぞ!という、なんかひたすら目の前にあった。
『夜のみだらな鳥』
「なんでこれがこんなにというかいったいなにが面白いんだろうwww」という感じで「謎www」と思いながらただただ面白く読んでいた。ぶよぶよ大賞1位。
『犬が星見た』
トイレで扉が開かなくなってロシアの少女二人が手伝ってくれてドタバタしながらどうにか開いて「あー楽しかったね」と武田百合子は二人に日本語で言って、その「あー楽しかったね」が僕はずっと忘れられないというか楽しいことがあるたびにそう思うようになった。
『マザリング・サンデー』
とにかく真野泰の訳文が大好きだった。私たちに許された特別な時間の終わりだった。
『収容所のプルースト』
なんでだか、なんでだったんだろう、この本が視界に入るたびにうれしい気持ちになる。なんかすごく「今年の1位って言われたらこれかも」感がある。プルースト読み始めた。
『失われた時を求めて』
半年読んでまだ4巻だけどひたすら退屈だったりひたすら面白かったりして総じてひたすらそれはいい読書だった。10年とかぶりに読んでいて、こんなにゲラゲラ馬鹿らしく笑えるものだったか、というのは思ったりはしている。
『奥のほそ道』
ただただつらかった、憤りと苦しさがこんなに、読んでいるだけで生まれるものか、と思った。その中でも救いになるおじいさん店主がご飯とか振る舞ってくれる場面、あれを読んだあと何度も思い出した。
『市場のことば、本の声』
ちまちまと1つ2つずつ、何ヶ月も掛けて、栄養補給みたいな感じで店で働く休憩中の時間に読んでいてその付き合い方が理想的だったしこういう本との付き合い方ってできるんだなと初めて知った。
『ハレルヤ』
読んで次、読んで次、というのをやめて読んで戻って2度め読んで3度め読んで、という読み方をした、読むごとに違うところが目に入ってきたり毎回同じところが好きだったりいい読み方できた。
『公園へ行かないか? 火曜日に』
やっぱり柴崎友香は最高〜!と思いながら「ごめんちょっと待ってて、読んでるから」という感じで貪り読んだ。
『徴候・記憶・外傷』
なにが面白かったんだっけな、忘れちゃったけど「おっもしれー!」と思いながら読んでいたことだけ覚えてる。
『マーティン・イーデン』
マーティンがめっっっっちゃがんばってた。
『デリケート』
これどうしても身びいき的に思われそうなんですけれどもどうしてもこれがただの身びいきだとは思えない。何度も泣いた、読んだあと、何度も何度も何度も何度も彼らのことを思い出した。今でもそう。
「アイオワ日記」
やっぱり滝口悠生は最高〜!と思いながら毎号『新潮』買ってという毎号文芸誌買うとかやったことないことやった。今完結編「続続続」読んでるけどもったいなくて進められない。
『ヒロインズ』
熱量大賞1位で止まんない、止まんない!と思いながら読んだ。俺も戦おう、と思った。
『止めたバットでツーベース 村瀬秀信 野球短編自撰集』
野球ノンフィクションってこんな形もありうるのかあ、という、どれもビシビシ抜群に面白かった。
『時間』
最初の1行とかだけで「はいもう最高」という本だった。吉田健一読んだことなかった、これからたくさん読めると思うと嬉しいしとりあえず『時間』まだ全然読み終わりそうにないのもうれしい。
2019年も愉快に読みたい。
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