本の読める店

2014年に読んで楽しかった10冊

Entry blog fuzkue63

「2014」や「10」という数字になんの必然性もないことはもちろん承知しているのだけれども、とか、こういうエクスキューズを挟んでおかないと書き進められないあたりに僕のみっともなさ捨てきれなさ情けなさがいつだってあるように思うのだけど、やっぱり1年のあいだに何冊読んで、それで何が面白かったっけな、とか考えるのって楽しいわけで。

今年読んだ冊数は93冊で、あと一つは読み終えるだろうから94冊になる見込みで、例年は50冊くらいだからこれは僕にとってすごく多い数字というか29年生きてきて一番多いはず。理由は2つ見当たり、とても時間があったということと、チャラチャラーっと読める類の本もけっこう読んでいたこと、じゃないかと。
そういう中で93冊を並べてみると、そんなん読んだっけ、いや読んだのは知ってるけど、みたいなものも多数あり、丁寧に読まないと本当にクズみたいな感触しか残らないなと改めて知りました。毎年思って毎年そうならないけど来年は丁寧に読みたいな。

で、10冊。読んだ順。

 1. ロベルト・ボラーニョ『2666』
 2. 佐々木敦『シチュエーションズ 「以後」をめぐって』
 3. 保坂和志『未明の闘争』
 4. 岡田利規『エンジョイ・アワー・フリータイム』
 5. ローラン・ビネ『HHhH プラハ、1942年』
 6. 井野朋也『新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには?』
 7. マイケル・ルイス『マネーボール』
 8. ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』
 9. ヨアン・グリロ『メキシコ麻薬戦争』
 10. セルバンテス『ドン・キホーテ』
 11. 佐久間裕美子『ヒップな生活革命』
 12. 東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』
 13. ロベルト・ボラーニョ『[改訳]通話』
 14. 保坂和志『朝霧通信』
 15. 岡田利規『現在地』
 16. 蓮實重彦『「ボヴァリー夫人」論』
 
あれ、16冊になった。まあいいや。以下適当なコメント。
 
2666は去年の12月24日から今年の1月5日で読まれたので年をまたいだ読書だったのだけど、今年の1冊を挙げるなら間違いなくこれで。ぶっちぎりに面白かった。僕が一番好きなのは第一部で、都市と都市をまたぎまくるダイナミックさとふいに立ち現れる親密さめいたものに本当にうっとりとなった。そもそも書物をめぐる小説ってすごく好きで。同じボラーニョの通話は短編集。旧訳も読んでいたのだけど好きすぎるので改訳版も買った。相変わらず冒頭のセンシニがたまらなかった。
シチュエーションズは震災以後の小説や映画をめぐる批評。非当事者性をまるごと受け止めること。アクチュアリティを標榜するわたしたちからわたしに立ち戻ること。野蛮さを獲得すること。何かと刺激的だった。
保坂和志は未明の闘争も朝霧通信もとにかく充実していて、ひとつひとつの場面がことごとく面白かった。
岡田利規の戯曲2冊。立ち位置がいかに変容すれど、この人の書くことにはまあなんか本当にどうしようもなくグッとくる。ひたすら真摯だと思う。大好きというか帰依したい。
HHHH。真摯といえばこの小説もまた。疑い、立ち戻り続けること。ベルク本。ベルクが大好きなので。フヅクエもアグレッシブさであるとかフィロソフィーであるとかを持ち続けたい。マネーボール。野球が大好きなので。野球好きにはとにかく楽しい一冊。銃病原菌。歴史ってすげーってなったので。そりゃピサロが勝つわ、というのがよくよくわかった。麻薬戦争。メキシコが大好きなので。麻薬カルテル最強すぎる、というのがよくよくわかった。
ドン・キホーテ。全6巻もあるのかってのは知らずに読み始めたのだけどダラダラと読んだ。途中で退屈したりしながらも最後まで読んで本当によかった。ドン・キホーテってこういう話だよねっていう認識って読まずともわりと持たれがちだと思うのだけど、そういう要約にはとてもじゃないけど回収できないものが書かれていた。二人の登場人物をどんどん好きになっていったし、木馬の場面とかも多分有名なんだろうと思うのだけど、知ってる?あそこってものすごい美しい場面なんだよ、って誰にというわけじゃないけど教えてあげたくなった。
生活革命。ジワジワとそういう流れ確かにあるよねーと思ったので。良いもの、共感できるもの、に人が流れるとしたらそれはすごくいい世界だと、本気で思う。弱いつながり。軽薄さと無責任さの肯定ってすごくいいなーと思ったので。何かと「そうですよねえ」と肯んじながら読んだ。
ボヴァリー夫人論。論を読む前に改めて読んだボヴァリー夫人もやっぱりものすごい面白く、そしてこの批評的エッセイと呼ばれるものもまたアホのように楽しかった。ドン・キホーテ同様の持たれがちな印象みたいなものをことごとく払いのけていく手つきがとにかく格好いい。エンマ・ボヴァリー?そんな名前はどこにも書かれていないじゃないか!何を読んでいるんだ!いいから読め!と。800ページ、最初から最後まで途切れない緊張感。極上の推理小説を読んでいるようなワクワクドキドキがあった。書かれていることを凝視することの大切さと面白さ。大興奮でした。

こんな適当なコメントならない方がいいんじゃないかと思わないでもないけれども、ともあれ、2014年の読書はこんな感じだった。

なお、フヅクエ特別賞としては、ってこれ何かのアワードだったのかなという感じに突如なったけど、フヅクエ特別賞としてはホセ・ドノソの『別荘』で。お客さんから言及されることが一番多かったのがこの小説。

そういうわけで来年も愉快な読書をしていけたらという所存。

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