ドミニク・チェン『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』(新潮社)

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####ドミニク・チェン『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』(新潮社)
3月13日(金)
10時過ぎに別れ、楽しかった。あまりに楽しいモードになっていて、どこかでどーんと落ちそうだと思いながら、約束通りに歩いて帰った。自転車を押して歩きながら、歯はズキズキというよりはじーーーっと低めの音が鳴っているような痛みで、でもまだ全然大丈夫だった。帰ってソファに座って少しだけ仕事をするのでパソコンに向かって俯いていると、マスクをしている感覚になった。板を切っているときの頭の角度がそれを呼び起こしたのだろうか。
今日も少しだけドミニク・チェン。
今でも鮮明に覚えているのは、小学校に上がった初日に、はじめて教科書を渡され、簡単な読み書きを習って帰宅した時のこと。自分のなかで誇りと興奮の混ざった感情が、はち切れんばかりに膨らんでいた。
それは二人の少年少女のイラストと共に書かれた、「Voici Yves. Voici Natasha. Voici Yves et Natasha.」(これはイーヴです。これはナタシャです。これはイーヴとナタシャです)という、主語と動詞と対象語という文法の基本形すら入っていない、幼稚なフレーズだった。それでも、フランス語という未知の言葉で世界を記述し、表現する可能性を手にすることで、眼前に立ち込めていた霧が晴れるように感じたのだ。 ドミニク・チェン『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』(新潮社)p.22
小学二年生の国語の授業のときに「火」の字を習って、一年生だったろうか、習って、それで前夜に見た「ヘイヘイヘイ」に出ていたTRFの曲で「火照る」とあって、授業では「ひ」とか「か」しか言われなかったけれど、「ほ」と読むこともあるということに大いに興奮した僕が授業後、先生に「ほとも読むんですよね、ほてるとかの」と言いに行った、あの興奮を思い出した。あれは何か言葉の秘密を知ったようなそういう興奮だったような気がする。教室と廊下の境目でそれを僕が言ったときの先生のリアクションは薄く、そのときは先生は全知全能だと思っていたから思わなかったが、「火照る」の「ほ」のことは知らなかったのではないか。というか、今の僕もその記憶がなかったら言われても全然ピンと来なかっただろうなと思う。
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