##1月2日(木)
起きるともう機嫌が、母子ともに直っていた、姪っ子は昨日からみかんの白いすじをくれて、僕がすするように食べておいしいおいしいと言っていたから、今日も喜ばせてやろうと思ったらしく、みかんをむきむき、くれた、やさしいね、と言って、ありがたくずるずると食べて、味はない。うさぎさんが眠っていた、うさぎさんにんじん食べたからおなかいっぱいになって眠ってるの、そうなんだね、コーヒーを淹れた、ブルンジの深煎りの豆で、つやつやとずいぶんしっかりとした深煎りで、そして淹れてみると真っ黒の、どっしりとした、ちびちび飲みたくなるそういうコーヒーだった、覚めてくると次第に甘みが出てきた、箱根では大学生たちが懸命に走っていた、スターブロックという僕が小さいときに遊びまくったおもちゃが出てきて僕は自動車をつくった、姪っ子はひたすら一本の長い線を作って東京の駅の線路だった、それからより高度なものをつくろうと本を開いていくと観覧車があって、観覧車をつくろう、とつくり始めたがすぐにこれは途方もない、と思ってやめていたら、姉と母がつくり始めて、姪っ子そっちのけで熱中してつくって、だんだん形になっていった、遊ちゃんは椅子とテーブルと宇宙人をこしらえた、姪っ子が「楽しいねえ」と言って、うれしかった。数日こういう時間を過ごしてきて、ちょっとそろそろ一人になりたいな、と思った。
突然入社洒落積丹ハコたんてゃ隠亡まkhsなこうt積丹半島積丹半島積丹半島
午後、母方の実家に行って少し過ごし、戻り、それからショーゾー。今日は昨日とは人の数が違って前には何組もあった、電話番号を記して、昨日はできなかったそのあたりの店をうろうろ、をやった、ショーゾーの雑貨屋というか道具屋というかで花瓶になるものをひとつ買った、チャウスで新年会のときに持っていく寺田本家の日本酒とバターのいとこを買った、それからなつかしいお菓子があったのでそれも買った、隣の雑貨屋でワイングラスの形のグラスを買った、今もウイスキーのストレートやショートカクテルとかのときに使っているやつでイランのグラスだった、ふたつ買った、それでやっと電話があってショーゾーに入って、「ちょっと俺は日記を書くね」と言って日記を書いた、珍しい席というか左に下りたほうの席でこっちじゃないほうがずっと好きだったが今日はしょうがない、正面に遊ちゃんが座っていて今は須賀敦子の『コルシア書店の仲間たち』を読んでいる、須賀敦子とコルシア書店の仲間たちがジャック・タチの『ぼくの伯父さん』を見に行くところだという、今日のショーゾーのスタッフの人もまたよかった、細部に宿るというか、細部に表れる。ちょっとそろそろ浅煎りのコーヒーを飲みたいな、と思った。
今日はあっという間で、日記を書き終えたくらいで帰るべき時間になって帰った、帰りながら、ショーゾーの芯の強さや気持ちよさみたいな話、それからセレクトショップの話をしていた、僕は岡山のボラードに、遊ちゃんは長野のわざわざに物を売る商売にはこうあってほしいという美しい姿を見て、話しながら、僕は、真面目に働く人たちが好きだよ、と思った、上っ面のかっこよさや、近しい人たちとのつながりや特に心のこもっていない「いいね」のつけあいとかなんてクソどうでもいい、誰の顔を見て仕事をするのか、誰に喜んでもらおうとするのか、それは常に考えたい、真面目に働き続けたい、話していたら泣きそうになって少し言葉に詰まった、年々、真面目な働きに対しての思いが強くなっていくようなところがあった、昨日と同じように空は鈍い重い赤色から徐々に黒になっていった。
帰り着くと新年の宴のような時間がまさに始まるところで頼子さんや順人くんももう来ていた、おいしいマグロの刺身やローストビーフやおでんやマグロの皮の酢の物やサラダを食べながらビールを飲んで、それから八海山になった、順人くんが持ってきたお酒は今年は響だった、姪っ子は長い昼寝が続いていて、僕はちょこちょこと立ち上がって空いた皿を洗ったりしていた、なんとなく皿を溜めるよりもちょこちょこと片付けながら進めていきたい気がするらしかった、始まってしばらくすると一洋さんが来て、珍しかった、手巻き寿司をバクバク食べた、眠っている姪っ子を見に行こうとしたら父もそうしようとしていて、それで一緒に行って、そうしたら起きた、横に横たわって、僕は宴会の場に姪っ子が登場するのを熱望していた、しかし酔っ払った、居間に戻って、しばらくしたら横になって、寝ていた、一洋さんが大きな声でなにかを話していた、起こされて、寝室に行った、寝た、起こされて、僕が寝ていたあいだの話を聞いた、ヘラヘラした、一人減りまた一人減り、静かになった部屋でポケットWiFiのことを調べたりした、僕はこの3年くらいUQモバイルの3ギガの通信のプランだった、通信量を見てみたらわかりやすく10月から増えていてそれまで1ギガ2ギガのあいだだったのが4ギガになり5ギガになっていた、でも微妙なはみ出し方だ、さらにポケットWiFiを使おうとするほどのことでもない、もちろんポケットWiFiを使えばパソコンも使える、でもそんなにWiFi環境外でパソコンでネットを使う必要性はあったろうか、ドトールで使えたら、と思うこともあるがドトールも使えないことはないからどうしてもというときは接続したらいい、見ているとUQモバイルのデータ無制限のプランがあってそれは2600円とかだった、今が1700円とかで、1000円の増加で無制限になるこれがいいのではないか、テザリングもできるし、と思ってこれかと思ったが、よくよく見ると今が受信最大225Mbpsなのに無制限プランは送受信最大500kbpsとある、最初は「より速くなるのか」と思ったがよく見たら「kbps」だ、12月後半がそうだった3ギガ超過時が200kbpsだったから、500kbpsというのはきっととても遅い、試しに今の状態を見ると下り45Mbpsとあって、500kbpsというのはやはりきっととても遅い、父が流していったエラ・フィッツジェラルドを聞きながら、ソファにあった犬の小さなぬいぐるみを踊らせて、しばらくそれで遊んでいた。
残された響を何杯か飲みながら、『大阪の宿』。
「お米さあん。おゝい、お米さあん。」
ひとつ置いて向の部屋から、大きな声で呼んだ。
「看護婦さんが帰らはつたので、御機嫌がわるおまんねぜ。」
くすつと笑つたが、もうひとつお酌をして置いて、
「一寸御免やす。」
といふと、なほしきりに呼び立てる三番へ、小走にかけて行つた。
三田はとり残されて始めてゆつくりした気持になつた。前の下宿とは違つて、手綺麗な料理で、酒も意外に結構だつた。手酌で飲んで、さつさと飯も済ませてしまつた。
日が暮れると、対岸の家々の燈火が水に映つて、あたりの景色は一段と立勝つた。川風の涼しい縁側の椅子に腰かけてゐると、三番でお米を相手にくどくどと管を巻いている男の声が聞えて来る。
「あれえ、わるさしたらあかん。」
どたんばたん揉あふ物音につゞいて、陽気に笑ふ声も聞えた。
三田は夜の空を仰ぎ見ながら、旅愁を感じてゐた。
水上滝太郎『大阪の宿』(岩波書店)p.21
のんきでいい。大阪弁の調子がいい。立ち勝るというのがよくて、このあと出てきた三田の友人の田原もいい。いい気分でお酒を飲みたくなる、と思ったら、今がまさにそれだった、本を読みながらいい気分で飲んでいた。
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##この週に読んだり買ったりした本
今福龍太『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』(みすず書房)
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