今日の一冊

滝口悠生『「続続アイオワ日記」『新潮 2019年1月号』(新潮社)

2018年12月28日
しばらくBenchmark Emailをイジイジしたのち帰宅して、今日はこれを楽しみにしていた、という、であるならドトールでも読めばよかったのではないか、という、滝口悠生の「続続アイオワ日記」を読むべく『新潮』を開く、読む、一週間、読書をそっちのけで「読書日記」を続けていくにあたっての新しい環境構築というか準備というかに追われというか勝手に追い込んでひたすら打ち込んできて頭がずっとオンの状態にあった熱した頭が読めばたちまち、冷まされていくというかゆるめられていく。滝口文章まちがえた滝口悠生の文章をずっと読んでいたい、ずっとこれ読んでいたい、と思いながら、読んでいく。
それにしても、今回に至っては「最後まで」であるとか「最後になって」であるとか、そういう書かれ方が何度かあって、これまでも未来から、折り込むように書かれる日記だったが、それがアイオワ終わりという終点をも含んでくると、より、なにか小説というか、小説とはなにか、わからないが、小説というか、を読んでいるような感触があらわれた、時間の枠組みが決められることと、それは関係あることなのか。

私たちがフィッシュアンドチップスの袋を下げて店を出ると、アウシュラたちは私がさっきビールを買ったスーパーで何か食べ物を買っていて、またそれを買うのに迷っているのかやたら時間がかかり、私とカイは外で待ちながら、ここで何か買うならはじめからそれでよかったのでは? と勝手に振り回されていることはわかりつつややいらだちと脱力の感じをふたりで覚え、手にさげたフィッシュアンドチップスを食べる気力ももうほとんどなかったのだが、それでもホテルに戻って、アラムは部屋に帰り、中庭のテーブルでアウシュラとアドリアーナとカイと私とでビールを飲みながらフィッシュアンドチップスを開けて食べはじめたら、味など全然期待していなかったこれがひじょうにおいしく、私とカイは、おお、ベリーナイスだ、とふたりで励まし合うように感激して元気になった。どういう流れでだったか、雪の話になり、エクアドルのアドリアーナは自国ではほとんど雪を見たことはない。台湾もほとんど降らない。東京はしょっちゅうではないがたまに降る。リトアニアは冬はずっと雪だ。 滝口悠生「続続アイオワ日記」『新潮 2019年1月号』(新潮社)p.257

読んでいたら元気な明るいうれしい気持ちになっていった。それでニコニコしながら布団に入って、布団に入ると僕は遊ちゃんの掛け布団を一度剥ぎ取っていつもタオルケットをかぶっていないから、どこかに小さくなっているタオルケットを取って広げて遊ちゃんの体に掛ける、そして掛け布団を掛ける、それから横たわり、もう一枚のタオルケットを、足をバタバタさせながらなんというかおさまりをよくして、それに包まれ、掛け布団の半分をもらう、そのときいつも、楽しい、うれしい、と思う、それを今日もおこなって、「アイオワ日記」をおしまいまで読んで、寝た。

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