今日の一冊

保坂和志『季節の記憶』(中央公論新社)

2017年11月5日
スープを作りたいという気分は何で芽生えたのだろうか。とりあえずなにか作りたいような気はしていたがそれがスープであったのはなんでだろうか、と考えると昨今あたたかいものを食べたく、鍋を食べにいきたいと思っていろいろ調べたりしていた、そういうこともある気がするし、野菜ゴロゴロのスープで思い出すのは昨日ちょうどそれが読まれているところを見た『季節の記憶』だった。夜ごと、父は翌朝に息子と食べるためのスープを作った。あたたかで気楽なスープ。幸せなイメージだった。

それで十二時ごろ読むのをやめて明日の朝のスープのジャガイモとニンジンとタマネギとカリフラワーと豚肉を切って火にかけた。男親と子どもという生活をしていると野菜が不足するという観念がいつの頃からか植えつけられているから、僕は毎朝野菜のたくさん入ったスープを食べることにしていて、そのスープをいつも夜のうちに作り、息子も子どものくせにどういうわけかニンジンでもピーマンでも食べるから僕のスープをたいてい喜んで食べる。それで三、四十分でスープを作り終わってベッドにもどると息子ははじめ寝た格好から九十度横になっていたり完全に僕の寝場所に移動していたりしているのだが、そのままにしておいて、もうしばらく、だいたい二時まで本を読んでいると息子が一度オシッコをしたくなって起きることになっていて、息子が起きなければ僕が起こしてトイレに連れていく。一年ぐらい前から息子は自分がオシッコをしているあいだずっと僕に見られていないと怖がるようになったから僕はトイレの戸を開けてそこに立つ。 保坂和志『季節の記憶』p.43,44(中央公論新社)

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