今日の一冊

Ben Lerner『10:04』(Granta Books)

2017年9月16日
わーっと、仕事をしながら、『10:04』のことを思い出していた。抜歯をするのだったかで全身麻酔にするか局部麻酔にするかで悩む語り手とアレックスのやりとり、それを思い出してあたたかい心地になっていた。
でもそれは語り手とアレックスのやりとりではなかった。小説内小説の、作家とライザのやりとりだった。

「僕は局所麻酔にする」と彼は決断した。
「崇高なる風景がかの若者に勇気を与えたのであった」と低い声でライザは言った。
「やめてくれ」と彼は言った。
「ナポレオンは戦の前日、ただ一人アルプスの山々と言葉を交わし、静かにその助言に耳を傾けたのであった」
「やめろよ」彼は笑いながら言った。 ベン・ラーナー『10:04』(木原善彦訳、白水社)p.75,76

最高。ここで生じる笑いが好きでたまらない。演じることがもたらすというか増強させるリアリティみたいなものを僕はたぶんすごく好んでいる。せっかくなので原文を見てみた。

"I'm just doing local," he resolved.
"The sublimity of the view has lent the young man courage," Liza said, deepening her voice.
"Shut up," he said.
"Napoleon alone on the eve of battle communing with the Alps, receiving their silient counsel."
"Shut up," he said, laughing. Ben Lerner『10:04』(Granta Books)p.65

E。

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