今日の一冊

2019.09.04
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####金井美恵子『カストロの尻』(新潮社)
2017年9月4日
なんでだか「とてもとてもとても」と打っていたら「Très très très」と頭のなかで言っていて、たぶん金井美恵子を読んでいてフランス人の俳優の話なんか、出たっけか。
「小説家の「幸福」」というタイトルの原稿依頼の手紙をいただいた時、私はたまたま谷崎潤一郎の『瘋癲老人日記』の一部を、連載中の小説に引用したくなり、記憶しているものと原文が一致しているかどうか出典にあたるべく、昭和四十九年に上梓された中央公論社豪華普及版(と、なんとなく形容矛盾という感じもする)谷崎全集十九巻を読んでいた最中で、この小説の冒頭部分には、主人公の老人が新宿の第一劇場へハイヤーで歌舞伎見物に行くのだが、折しも、六〇年の反安保運動が昂ぶりを見せていた最中、デモ隊とぶつかるのは避けられないために、早目に家を出る必要があると運転手に言われ、しかたなく、そうするということが書かれている。
金井美恵子『カストロの尻』(新潮社)p.9
という一文から始まるのが金井美恵子の『カストロの尻』でこれは「「この人を見よ」あるいは、ボヴァリー夫人も私だ/破船」という章なのか一編なのかで、エピグラフにはプルーストの『サント=ブーヴに反論する』の言葉が引かれているというかそのあとも途中で挿入されるこういうものはエピグラフという呼び方でいいのか。それでだからフランス語が僕の口から漏れたとしても不思議ではなくて、とてもとてもとてもと言った以上は暇とも言いたくなったのでグーグル翻訳に「暇」と入れると「Temps libre」と出てきて、フランス語は暇なんていう簡単な言葉を言うのに二つも単語が必要なのか、と思って違うんじゃないかと思って、ところでこれを入れ替えると「フリータイム」と訳された。自由の時間。次に「とても暇」で打つと「Très occupé」となって、これを入れ替えると「非常に忙しい」となった。これは不思議なことだった。「非常に暇」は「Extrêmement tranquille」で、入れ替えると「非常に静かな」となり、それをさらに入れ替えると「Très calme」、ここで安定した。
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