####木村俊介『善き書店員』(ミシマ社)
2017年5月31日
夕方まで書き書きをしてひと段落というかもう疲れたというところで、暇なので昨日買ってきた『重版未定2』を読むことにした。ひとつ読んでそれから『善き書店員』を読んだ。本というものはいい。
本というもの自体が好きなんです。装丁も好きだし、開いて読んでめくっていくという動作も好きで、見るのも触れるのも好き。めくるといろんなことがわかる。紙の束の中に、物語が、世界が入っている。本の中にはいろんなものが入っている。一方的ですが、何百年も前の人に本を開いたら会えてしまうし、読むことそのものはいつも個人的なことなんだけど、感想を誰かと話すとか、本を使っていろんなことができるし、ひとりの読書がひとりだけのものではなくなっていくのも好きですね。
読んだ時のことを思い出せる、というのも本のよさですよね。今日、ラジオで好きな本について話そうと思って持ってきた、文庫で四年前に出たリチャード・ブローディガンの『芝生の復讐』、これは読み直していたら本のページとページのあいだから桜の花びらが出てきたんですよね。あ、これは春に読んだんだよな、公園の角で、とか、あちこち折ってあったり線が引いてあったり、四年前の自分に再会できた気になったんです。普段はそんなに本に痕跡を残さないけど、当時の自分はそうしたかったんだな、と思ったりしました。ブローティガンに再会できるだけでなく、四年前の私が読んだ『芝生の復讐』というのはどういう体験だったのかも再認識できる。いまの自分が線を引くならここじゃなくてこっちだなとか思うわけですから。四年前の自分とのコミュニケーションも生まれる。
木村俊介『善き書店員』(ミシマ社)p.28
5月が終わる。今月もよく働いたなと、それだけ思う。それだけというのは嘘だった。でもよく働いた。疲れた。
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