今日の一冊

2019.05.17
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####グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』(真野泰訳、新潮社)
2018年5月17日
『マザリング・サンデー』を開いた。真野泰訳。ほんの少し読んだだけで、ああ、これはよいものな気がする、となった。僕はすっかり、『奇跡も語る者がいなければ』で真野訳に魅せられて、大きな信頼を寄せているらしかった。読み始めてすぐに、
「いや、うってつけの上天気じゃないか、ジェーン」この日の朝、ニヴン氏は淹れたてのコーヒーとトーストを運んできた彼女に向かって言った。
グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』(真野泰訳、新潮社)p.10
という箇所にあたり、そうしたら空腹を感じ、パン、そうだ、パンを食べよう、と思ってパンをトーストして、食った。そうしたらシール用紙が届いた、届いて、すぐに印刷をしてみて、印刷できて、カッターで切って、貼って、豆を挽いて、ドリップバッグ袋に入れて、シーラーで留めて、それを外側クラフト内側アルミの三方袋に入れて、シーラーで留めて、ということをしたら、あ、できた、これは売り物のドリップバッグだ、できる、これでできる、となった、なって、うれしい気もしたが、やってきたのは虚しさだった。
こういうとき、フアン・ホセ・サエールの『孤児』を思い出すようになっている気がする、思い出した。探検隊の人々を狩り、切り分け、焼いた。その匂いに集落の人々は集まり、よだれを垂らしながら火とその中で焼けていく肉を見つめる。そして配られる。貪るように食う。満腹になる。あれだけ食べたかった肉を食べてしまった今、やってくるのは途方もない虚しさである、とでもいうような顔で放心する人々、の様子を思い出す。できてしまっては面白くなかった、作ってみようと欲望しているときがそれ自体が報酬だった、できあがって欲望が満たされたとき、報酬はなくなり、労働となる。そういう感覚がいくらかある。あって、そうなった気がした。ほんとにできたの?www やることはまだいろいろあるんじゃないの?www なにいってんの?www という気もするし、実際そうだと思うが、早めに、というところでいったんそうなった。
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