今日の一冊

2019.04.17
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####フラナリー・オコナー『フラナリー・オコナー全短篇 上』(横山貞子訳、筑摩書房)
2018年4月17日 食後、フラナリー・オコナーの短編集を開いた、1ページ読んで眠くなり、ソファに横になった、12時過ぎにがんばって起き上がり、シャワーを浴び、ウイスキーを注ぎ、改めて読み始めた、それで3つ読んだ、「善人はなかなかいない」「河」「生きのこるために」を読んだ、受動的な暴力というか、受精した暴力というか、胚胎した暴力というか、なんというか、暴力の胞子みたいなものがふっと人の中に入って、それが自動的に発動されるような、そういう感触があった、総じて気分が悪いというか、居心地のよくない話で、寝る前に読むものではないなと、『夜のみだらな鳥』を寝る前本として昨日まで読んでいた身ながら、思った、そして寝た。
少年はおこってふり向いた。「悪魔のところへいっちまえ。おれの母ちゃんなんぞ、だらしのないばばあさ。おまえの母ちゃんなんか臭いスカンクさ!」そう叫ぶなり、少年はかばんをもって車から外の溝へと飛び降りた。 ミスタ・シフトレットは強いショックを受けて、あいたドアもそのままで三十メートルばかり進んだ。少年の帽子とおなじ灰色の、かぶらのかたちをした雲が太陽をかくし、べつのもっとおそろしげな形の雲が、車の後ろから追ってくる。この腐りきった世界が自分を呑み込もうとしている。ミスタ・シフトレットはそう感じた。片腕をあげ、それから胸に打ちつけて祈った。「おお主よ! いますぐ現れて、堕落した者たちをこの世から洗い去ってください!」 かぶらのかたちの雲はゆっくりと降りてきた。何分かたつと、後ろから高笑いするような雷鳴が轟きわたり、缶詰のプルトップほどもある、信じられないくらい大きな雨粒が、ミスタ・シフトレットの車を襲ってきた。すばやくアクセルを踏みこむと、ミスタ・シフトレットは半分しかないほうの腕を窓から突きだし、激しい夕立と競争しながらモービルへといそいだ。
フラナリー・オコナー『 フラナリー・オコナー全短篇 上 』(筑摩書房)p.85,86
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