####吉田健一『東京の昔』(講談社)
うろうろしていると東京コーナーのような本棚の前にいて「東京の昔」というタイトルの本が目に入ってタイトルの下に「吉田健一」の字をみとめ、「お、吉田のけんちゃん」と思って手を伸ばした。それで開いてみると「湯豆腐というものがある。これを書いている今がまだ冬だからそれが頭に浮かぶのかどうか知らないが冬の晩にこっちが出掛けずにいる時はおしま婆さんがよくこれをやって自分もこっちの部屋に来て二人で仲よく豆腐を突っついた」とあり買った。
ところでそれは本屋イトマイに行った晩のことで吉田健一は去年の暮れに買った『時間』があまりによくてこれは文喫で帰る直前にふと目に入ってきて開いたら「!」と思ったため買った本で、それが初めての吉田健一で、だからどちらもたまたまだった。どうしてそうなるのかと考えたら文庫本だからで普段書店に行っても目当てがあれば別だが目当てが特にないときは文庫本のコーナーに足を運ぶ習慣がないから目に入る機会がない。それでこうやって出会い頭に出会って買うことになるのだが本屋イトマイに行ってみて「自分がときわ台住民だったら」と考えたりしながら過ごしてみて小さな書店、町の本屋、そういう存在のよさ、意味、意義、それも暮らしの中に小さな書店があるということの豊かさみたいなものが初めてちゃんと少しわかったような気がした。僕は大きな書店ばかり行くしそれで事足りているとばかり思っていたが小さくないと体験できない体験があってそれは日々の暮らしの中にあってほしい。ふっと入って「おっ」となるような。だから誰か初台で書店をやらないか。
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