####内沼晋太郎、綾女欣伸『本の未来を探す旅 台北』(朝日出版社)
シリーズ前作の「ソウル」を僕はもっぱら自分で仕事を立ち上げた人たちの物語として読んでいて海を越えて隣の国の同じような世代の人たちが楽しくストラグルする様子に何度も感動して一人出版社の方が言った「すべての決定に淋しさがあります」という言葉がずっと残ってときどき思い出す。だから「台北」が出たのを知って読もうと思っていたが大きな書店に行っても小説コーナーに行くくらいですぐにレジに行ってしまうから忘れていることも忘れて買いそびれてあとで気づくということを繰り返していた。
それでプレオープンを知らせる看板を見て扉を開けて階段を上がると上がりきらないところで顔が覗いて鈴木さんで本屋イトマイに来た。鈴木さんは友人で店の話は何度も聞いていたし勝手な意見もたくさん言っていてその店がとうとう始まって店が始まったときに僕は「おめでとうございます」という言葉を思わないから言わない。店を始めることが夢でそれが実現したらおめでたいのであれば実現した途端に終わりに向かうしかなくて実際はそうではなくて店は始まったときからようやく始まるし先のことを考えると途方もない気分になるその気分を抱えながら楽しくなったり面倒になったり悲しくなったり疲れたり希望を覚えたりそうやって日々を生きていくのがきっと店でだから店というものには「おめでとう」というタイミングなんてどこにもない。どこにもないなら始まりのときに言ってもいいかもしれないと今思ったがそれは今思ったのでありその夜は思わなかったので言わないでコーヒーを片手に持ったり棚に置いたりしながら本を見ていた。
小さい書店は全部の本を見られるような気にさせてそれは普段は近寄りもしないジャンルの棚も見られるということでそうやってぐるぐるとしていたら時間が経っていって疲れてきた。そろそろ帰ろうと思っていると本の本のコーナーで「台北」を見つけてそうだそうだと思い出してきっとこの本も自分で仕事を立ち上げた人たちの物語でそれをちょうどその物語の始まりにいる人から買うことになった。
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