アリ・スミス『秋』(木原善彦訳、新潮社)

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4月5日(日)
酒を飲む。アリ・スミスの『秋』を今日も。飲み、つまみながら読む。
途中、なにかの有志の団体のnoteの記事を見ていたら外出を控えよう、外出してもいいのは、というところに「必要のある仕事程度」とあった。善意なのはわかる。けれど、必要のある仕事程度というのは、なんのことなんだろうか。誰も、全く不必要だけど仕事をしていますなんて、思っていないじゃないか。どうにもやりきれない、猛烈に悔しいような気持ちが湧いてくる。
疲れたわ、と彼女は言う。
たった三キロ歩いただけじゃないの、とエリサベスが言う。
そういう意味じゃない、と母が言う。あたしはもう、ニュースに疲れた。大したこともない出来事を派手に伝えるニュースに疲れた。本当に恐ろしいことをすごく単純に伝えるニュースにも疲れた。皮肉な言葉にも疲れた。怒りにも疲れた。意地悪な人にも疲れた。自分勝手な人たちにも疲れた。それを止めるために何もしないあたしたちにもうんざり。むしろそれを促しているあたしたちにもうんざり。今ある暴力にも、もうすぐやって来る暴力にも、まだ起きていない暴力にもうんざり。嘘つきにもうんざり。嘘をついて偉くなった人にもうんざり。そんな嘘つきのせいでこんな世の中になったことにもうんざり。彼らが馬鹿だからこんなことになったのか、それともわざとこんな世の中を作ったのか、どっちなんだろうと考えることにもうんざり。嘘をつく政府にもうんざり。もう嘘をつかれてもどうでもよくなっている国民にもうんざり。その恐ろしさを日々突きつけられることにもうんざり。敵意にもうんざり。臆病風を吹かす人にもうんざり。
臆病風には吹かれるだと思うんだけど、とエリサベスが言う。 正しい言葉遣いにこだわることにもうんざり、と母が言う。 アリ・スミス『秋』(木原善彦訳、新潮社)p.57
夜、ねんそうくんと電話。フィジカルリリースの前に、配信を先に始めないか? という相談。フヅクエの音楽を自宅で聞けることで、少しでも気分が落ち着く人が、ほんのわずかかもしれないけれど、いるのではないか、とふと思い。
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