くどうれいんさんが選ぶ5冊

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フヅクエ文庫とは

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誰かにとって大切な本が、また別の誰かにとって大切な本になったらいい。さまざまな選者による、忘れがたい一冊を集めた選書シリーズです。寄せられたコメントに導かれて、思いも寄らない本との出会いをお楽しみください。

選者

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くどうれいん
作家。1994年生まれ。俳句短歌は工藤玲音名義。著書にエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)、『虎のたましい人魚の涙』(講談社)、絵本『あんまりすてきだったから』(ほるぷ出版)など。初の中編小説『氷柱の声』で第165回芥川賞候補に。

    選書にあたって

    熱い温泉に入りたいときにまずはかけ湯をするように、読書をするぞと意気込む前にとりあえず手に取ってぱらぱらと読む。そのうちその本のほうがたのしくなって一向に大きな浴槽に入れないこともあるのだけれど、わたしにとって、熱い湯船以上に、なんだか妙に手なじみのいい桶で、ちょうどいい温度のお湯を掬う時間も大切です。すべて「どこから読んでも大丈夫」な、本を集めました。

    フヅクエ文庫034
    くだらないことだけを一日のこととして残すのは、むしろクールなのではないか

    だれもが知る漫画家のトホホとした可笑しみがたくさん詰まった絵日記。うっかり「くだらないなあ」と思うけれど、一日にいろいろなことが起きるのに、くだらないことだけを一日のこととして残すのは、むしろクールなのではないかと思ってしまう。なにを描いてもこの人の絵はこの人の絵で、わたしはそれがうらやましい。 フヅクエ文庫034(選者 くどうれいん)

    フヅクエ文庫035
    短篇を書くとき必ず意識をしてしまう一冊

    「くどうさんはこういう短篇を書けるようになると思います」と言われて、ええっ、わたしにはあまりにも……と思いながらも、短篇を書くとき必ず意識をしてしまう一冊。クレーム対応でこんな小説が書けるようにわたしもなりたい。 フヅクエ文庫035(選者 くどうれいん)

    フヅクエ文庫036
    生活に蓄積する心地よさの総量が全然違う

    花を見たときに「雑草」と思うか、「花」と思うか、「小さくて白い花」と思うか、「はこべの花」と思うかで、生活に蓄積する心地よさの総量が全然違うと思っています。たとえば「雨」にまつわる言葉をあなたはいくつ知っていますか。名前の数だけ名付けた人やシーンがあると思うと、それだけでうおーと思います。 フヅクエ文庫036(選者 くどうれいん)

    フヅクエ文庫037
    ビールを買って、おつまみ何にしよ、と思うときのような高揚

    大酒飲みで有名な詩人が書いた食にまつわるあれこれ。最近この人の飲んだお酒の総量を資料を読み解いて研究している人がいると知り、240日間で最低でも日本酒約562合、ビール約93本、ウイスキー約110杯飲んでいたとのことで大変豪快に笑いました。目次を眺めるだけでも、ビールを買って、おつまみ何にしよ、と思うときのような高揚があります。 フヅクエ文庫037(選者 くどうれいん)

    フヅクエ文庫038
    母親よりも年上なはずなのに、この人はもうともだちな気がしてしまう

    作家・タレントとして活躍する彼女の愉快な食エッセイ集。母親よりも年上なはずなのに、この人はもうともだちな気がしてしまう。パカッと笑ってズバッとしていて、肝心なところが抜けている。そういう女性にわたしはとても憧れている。「叱られバター」「ギュイーン料理」「殻取り男」タイトルがほら、もういいでしょう。 フヅクエ文庫038(選者 くどうれいん)