ヴァージニア・ウルフ『波〔新訳版〕』(森山恵訳、早川書房)

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月1冊、リクエストされた本を渡しておしゃべりをする「今月の福利厚生本」。今日は初台・下北沢の山口くん。なんで読みたくなったのか、うかがいました。(聞き手:阿久津隆)
・・・
ぜんぜん気づかなかった。あ〜いたいたいた、やった〜
『波』、新装版が出てたんだね
そうみたいですね〜、最近
最近ね
ふ〜ん、
『波』あれだよね、横に〜みすずの〜やつもあるよね
あくつさんの、やつがあります
へえ〜〜『波』難しかったな〜、なんか途中で、ダメだったんだよな〜
へえ〜
山口くん、楽しめるかも
そうなんですね
いや、ぜんぜんわかんないけど、フォークナー、ばきばきたのしんでたあの感じ、『アブサロム、アブサロム』とかをばきばき楽しんでたあの感じを思うと、ばきばき楽しかったりするかもね
なんかフォークナーと、ウルフは、けっこうおんなじ感じで語られることも多いですよね
あ、そうなんですか?
うん、なんか、なんだっけな、意識の
あ〜流れ的な?
意識の流れ系みたいな括りされること多いですよね
うんうんうん、あそっかそうなんだね、うんうんうん、なんかね〜、『灯台へ』はおれ、なんか、人生、ベスト、小説、10とかに入る1冊なんだけど
あ、へえ〜
5とかにも入っちゃうかもしんないな〜、10かもなでも
『灯台へ』やめちゃったな途中で
あそうなんだね、あれはなんかなんども読みたいな〜っていう感覚あって、でもそれ以外っておれほとんど読んだことないんだよな〜、日記、日記くらいだよな〜。なんかほか読んでる?
あの、『船出』っていうデビュー作
あ〜〜〜
を、あっちのほうがぼく『灯台へ』より読みやすくて、それもまだ途中なんですけど
はいはい
それもけっこうおもしろかったのと、『自分ひとりの部屋』がすごいよかったですね
そうだよね、読んでたねそういえば
あれがすごいよくて
ふ〜ん、読んでみような
でもどうなんだろ、小説ってなったら、ちょっと、むずかしそう
なんか、どうやって、ね、いや〜わかんない、ちょっとぜひ、ばきばきにおもしろいですっていう、後日談を聞きたいね
楽しみですね
あの、分厚い、どでかい、どでかフォークナーは読んだの?
どでかフォークナーまだです、なんか、最近、ちょっといろいろ同時に読みすぎてて、さすがに、さすがに同時に読みすぎてるなっと思って、まだ、とってますね
あれ、そういえば本読めるようになってきたの?
最近読んでますね、そうなんですよ、なんで、なんでなんだろう、なんでなんだろうな、なにがきっかけだったんだろう、あ〜でも千葉さんの『オーバーヒート』と、滝口さんの『長い一日』、そのふたつを連続して読んで、やっぱおもしれ〜ってなったんでしょうね
よかったね〜、よかったねっていうか、なんか、まあ、よかったかもね、読めない時期があるっていうのも
そうですね、読んでたときはその読書メーターっていうのをつけてて、そうなるとどんどん読み終わることが目的になっちゃてたから
わかる〜〜〜
記録をつけてると
そうなんだよねぇ
だからいま一回ぜんぜん読まない時期を経たことによって、ツイッター見るくらいの感覚で本読めるようになったから
いや〜なんかわかるというか
いい感じです
やっぱね〜、読み終えないとっていうの、なんか、そそなんか読み終えないと、読書メーターと、読んでる中みたいのがあんだよね?たしかね
あ、へえ〜
あれ、積ん読、欲しい本、積ん読してるやつ、読んでるやつ、読み終わったやつみたいなタグのつけ方じゃなかったっけ?
あ〜そうだったんだ、なんか、読了したときだけつける感じで使ってました
なるほどね、ほんとに、あれはそうなんだよね、読み終えないと読書の時間が、なんていうの、可視化されないというか、読み終えないとゼロじゃないすか
うん
あれはたぶん、けっこう、よくないよね
そうですね、なんか、あの、ラジオ体操のスタンプ全部とろう、押されないと気持ち悪いみたいな感じとおんなじでコンプリート、コンプリートの方向の。映画見てたときもフィルマークスずっとつけてて、それが、それやめてから本数はめちゃくちゃ減ったんですけど、観る本数は、でも逆にもう、おもしろいな〜って純粋な気持ちで観れてるから
そうだよね。ぼくなんか、いつかな、三年前くらいだったかなぁ、読了っていうものを、こう、やめるというか、読了にとらわれない、しかし記録好きなので記録はつけたいっていうのを両立するために、日々の読書記録をスプレッドシートでつけてますね
うん
そうなると、初年度とかはそこに読了枠とか置いてたんだけど
うんうん
それも無しにして、どっかから、だから、ただただ、何月何日、何を読んでいたっていうのがガーッとリストになってるみたいな。そうしてからだいぶ、だいぶ楽、楽になったというか
ふふふ
なんかね〜〜、そうなんすよね〜、読み終えないと読んだことにならないっていう呪縛っていうのはけっこう、けっこう多くの人がかかえてるような気がするんだよね
うん〜
それを、解除していきたいよね
うん、やっぱり記録つけてるとすごいとらわれてましたね
なんかね〜〜
いまはだからすごい、それを、そのなんか縛られた読み方から解き放たれたんで、いい感じですね
いや〜それはよかった。でも、なんかこれ前も話した気がするな〜、でも一方で、なんていうの、粘りがなくなった気がしてね
あ〜
そそ、すぐ諦めるようにもなった気がして
へえ〜
あ〜これしんどいな〜ってなったときに記録つけてたときは、あの、読了の記録をつけてたときは、いやでももうちょっと耐えて、もうちょっと先までいったらもっとなんかおもしろいことあるかもっていうのでなんか、粘ってたのが、それがなくなって、もしかしたらちょっと軽くなりすぎたところはあったりしてっていうのはちょっと一方で思ったりするんだよね
もともとないかもな〜、あんまりその変化はない
うんうん
もともと粘りがないのかもしれないですね
あ〜〜へえ〜〜、粘りはないけど読了にはとらわれてたんだね
うん、なんか、わりと、判断がめちゃくちゃ早いんだと思います、最初の5、6ページくらいで、あダメだと思ったらだぶんもう
なるほどね。波、波、おもしろいといいね
おもしろいといいなぁ




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山口慎太朗(山口くん)
1993年熊本県生まれ。作家や脚本家として活動しています。家にいる時はだいたい芸人さんのラジオを聴くか、格闘ゲームをやっています。本は短い話よりも長いものの方が好きで、海外の小説を読むことが多いです。何言ってるか全然わかんない文章も、よくわかる文章もどっちも好きです。バナナマンと坂元裕二さんと滝口悠生さんと梅原大吾さんがマイヒーローです。
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阿久津隆
1985年栃木県生まれ。埼玉県大宮市育ち。日ハムとヒップホップとコーヒーとビールが好きです。「1冊しかダメ」と言われたら『富士日記』(上中下)か『プレーンソング』か『カンバセイション・ピース』か『小説の自由』か『茄子の輝き』か『10:04』か『2666』か『失われた時を求めて』(全10巻)であるとかをダンボールに詰めたいです。 著書に『読書の日記』『読書の日記 本づくり スープとパン 重力の虹』(NUMABOOKS)、『本の読める場所を求めて』(朝日出版社)。『新潮』『ユリイカ』『GINZA』『すばる』等、連載や寄稿等少数。