今月の福利厚生本 (松原さん) パク・ソリョン『滞空女 屋根の上のモダンガール』(萩原恵美訳、三一書房)

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月1冊、リクエストされた本を渡しておしゃべりをする「今月の福利厚生本」。今回は韓日翻訳家になるため邁進している西荻窪店の松原さん。なんで読みたくなったのか、うかがいました。(聞き手:酒井正太)
・・・
じゃあ、これ本でーす
ありがとうございまーす
タイクウジョ、韓国の本だよね
そうですね
へー、どんな本なんだろう
なんか、あたしもよくわからなくって、読みたいなって漠然と思ってて
うんうん
ちょっと調べてみたら実在するカン・ジュリョンさんのお話らしいんですよ
ふ〜ん
この人、なんか労働運動とかしてたみたいで、そのときのお話ってことで、1931年くらいの
うんうん
このくらいの時代の作品、ちょうどいま翻訳の課題みたいので出てて
あーそうなんだ
それでどんな感じなんだろうって思って、時代背景も難しいし、あんまり馴染みがない、あんまりこの時代の作品をいっぱい読んでないから、それでもう翻訳されてるものがあるんだったら、どんな風に翻訳されてるんだろーって思って気になって
なるほどなるほどー
あと労働運動とか女性運動の先駆けみたいで、そういうのも気になって
この人の史実の小説なのかな、小説だよね、多分ね、なんか賞取ってるんでしょ、これ
そう、ハンギョレ文学賞っていて、ハンギョレってこれ向こうの新聞なんですよね
あ、そうなんだ、へー
あの、なんだろう、ちょっと進歩的な?
うん、リベラルな感じの
はい、そこの文学賞取ってますね
最近の本なの、これ?
これ原作どうなんだろう、翻訳は去年なんですよ、あ、でも2018年の賞ってことはその頃かなー、あ、2018年て書いてますねー
数年前だ、この作家の人は知ってた?
知らなかったです、この訳者の方の本も読んだことがなくって、たのしみですねー、翻訳も色んな方がいるので、韓国文学の
ほんとに増えたよね、どこの本屋さん行っても
コーナーあるじゃないですか
ねー、あるよねー
すごいなーって思います、あたし韓国に留学に行く前、2018年の前半ころなんですけど、まだ本屋さんに行ってもこんなになかったですよ
そうだよね
そう、だからそれから三年くらいで、この変化はすごいですよね
なにが火がつくきっかけだったんだろう、あれかな、なんだっけあの有名なあの
キム・ジヨンですか?82年生まれ
うんうん
あれが結構おっきかったのかもしれないですねー、影響が
最近は読む本はやっぱり韓国のものが多い?
うーん、原書も読んだりするからやっぱり多いですけど、でも最近は違うのも読んでます、他の翻訳、英語とかフランス語とか、いろんな翻訳された本を読んでみようと思って
あー、そっかそっか
どんな感じかなーと思って、あとフェミニズムとかそういうのも一緒に知れたらいいなと思って、最近よく読んでるのはヴァージニア・ウルフ
あーそうなんだ、フヅクエにヴァージニア・ウルフ結構あるよね
ありますよね、読みたいと思って自分で文庫になってるのを買って通勤中とかに読んだりとかしてて、あと伊藤野枝
あー大杉栄の奥さん、甘粕事件であの
知ってるんですねー
へー、じゃあほんとあれだね、けっこう左の方角に傾いた感じの 笑
危ないですね 笑
伊藤野枝の自伝とか?
そうです、『野に火をつけ、白痴になれ』を読んで、あれがおもしろすぎて、あれ書いてる栗原さんって人が、たぶんおもしろすぎて
あーあれ読んでないやー、あの人のアナキズムについての本読んでめっちゃおもしろかったー
文章がおもしろすぎて
ね!あ、おれもちょうど栗原さんの本読んでるわ、一遍上人についてのなんか
あたしの友達も、なんか伊藤野枝から大杉栄の本すっごいいっぱい読んでて、最近
へー、なんかあれ、フヅクエで反逆起こしたりしないよね?笑
しないです 笑 そんなことはしないです 笑
ふふふ、僕も昔大杉栄めっちゃはまったー、日記とかすごいおもしろい
いっぱい本ありますよねー
本選ぶのってどうやって選んでる?
あたし結構、読んでる本の後ろとかに載ってる紹介とか、あと、訳者あとがきとかに出てきた本とかでどんどん関連して読んでくことが多いと思う
おんなじおんなじー、芋づる式にね、こう
そうそう、あと本屋さんに行けば装丁とか見た目で選ぶってこともあるんですけど、結構最近家で買うことが多くて、ポチッとしちゃうことが多くて、ってなっちゃうと自分が興味があるかないかみたいなとこが多くって、紹介文とか読んで選んじゃいますねー
松原さんはやっぱり翻訳家を目指してるから勉強の要素も考えながらになるよねー
そうですねー、それを最近考えちゃうから純粋に読書って感じがあんまりないっちゃないんですけど
なにを注意しながら読むの、翻訳を意識したときって
なんか、元の文はこうかなーって想像しながら、ああこれはこう訳すんだって、あと訳註の付け方ですね
うんうん
結構人によって付け方違ったり
あー訳註の、そっかー
作品の雰囲気に合わせて結構変えてたりするっていうのと、小説と人文書だとぜんぜん違ったりするんで
あーそうなんだねー、おもしろーい、考えたことなかったー
あと植物とか食べものの名前をどうしてるのかなーって
へー
自分が訳すときに結構難しいなって思うところがそういうところで、文化的なところっていうか、日本でどんだけ浸透してるかなっていうのを考えて
あー、それは自分は知識としてあるけど、それが他の広い人が読むにあたってってどうなのって感じか、たしかにねー
そうそう、色んな読者の人がどこまで知ってるかっていう、キムチとかサムギョプサルとか誰が聞いてもわかる食べものはそのまんまでいいけど、じゃーあんまり知られてなくて、でも韓国に行ったことがある人だったらわかるとか、そういうとこかなー
あー、おもしろー
そういうのをどうしてるのかなーっていう、のとかをみながら
へー、あ、そういえば課題かなにかで詩をやってるって言ってたじゃない?あれはどうなのその後
それは去年まで授業で翻訳してたのを、いま初稿のゲラがあがってきて、えっと訳者の校正が一回目、その訳校の確認は一回だけなんですけど、私それの校正もやることになって
へーすごーい!
あ、でも簡単な、不統一とかそういうところなんですけど、いまそんな感じですね
へー、それは出版されるんだよね?
はい
たのしみー、西荻にも置こー、前に翻訳したやつもねー、詩って特に難しそうだねー
難しい、だから先生と生徒みんなと世界観とか結構話し合ったりして、みんなで話し合って話し合って方向性を定めていってみたいな
へー、なんか単純に置き換えられれない単語とかあったりするの?
んー置き換えられないというか、なんか音遊びしてるやつとか
あー
詩ってそういうことがあったりするじゃないですか、ってなっちゃうと日本語の横に音のルビふっちゃうとか、やりようはあるっちゃあるんですけど、それをどう考えるか、どれが一番いい方法なのか、読書に伝えるのにっていうのが難しいかもしれないです
へー
すごい勉強になったなーって
もうどれくらい経つんだっけ、こころざしはじめて
まだ3、4年くらいですかね、翻訳やりたいなって思ってから
あ、でもそんなに経つんだね、もともとなんでだったんだっけ翻訳って
翻訳はなんかもうすっごい子供っぽいんですけど、韓国語の勉強はじめて学校通ってたときに、なんか外国語を勉強するときって、この文を韓国語にしましょうとか、日本語にしましょうみたいな問題をやるじゃないですか英文でも、それで日本語に直すのが上手いっていうか、褒められたのがあって、あ、楽しいなーと思って勉強進めていくうちに韓国文学の翻訳本とか読むようになって、あー韓国の本もおもしろいんだなーってすごい思って、それでできればいつか翻訳してみたい、ふふ、そんな感じ
へーそうだったんだー
昔から本を読むの好きっていうのはあったんですけど
韓国のさ、日本で最近流行している本っていうのはやっぱり現代の作家のものだよね?
そうですねー
古典っていうのもやっぱりあるんだよね、そういうのも読んだりするの?
ちょっとずつ 笑
日本でいう漱石とかそういう人もいるんだよね?
いるんだけどー、なんか難しいのが、そのくらいの時代で韓国語で書かれた本がどれだけあるのかっていうのもよくわからなくて、植民地時代じゃないですか、言語統制されてたのでー
あーそっかー、へー
日本語を使うことが、だからそのくらいの時代、漱石とかって何時代?
明治あたり?
1910年くらいから日韓併合してるので、ちょうどなんですよね
そっかそっか
だから、あるんだろうけどあんまり多くなかったりとか、たぶん処分されちゃった本とかもきっとあるんだろうし、わかんないですけどね、ちゃんと調べてないんで
ねー、きっとね、あるんだろうね
昨日まで読んでたパク・ワンソさんっていう人の自伝的な本があるんですけど、その方が1931年生まれで、ちょうど植民地下に生まれ育って学校で日本語を習うような世代の人だったんですけど、その人とかもやっぱり学校で日本語も習うし、図書館で読む本も日本語の本で、だからその影響を受けた文学っていうのが小説とかでもみんな日本語で読んでるっていうのが書いてあって、すごい複雑だなって思って
へー
お母さんは日本語わからないんですよ、その方はたまたま小ちゃいころ育ったところで、韓国語のハングルの文字を家で教えてもらってたからハングルのものも読めて、解放後
解放後?
解放後っていうのは日本が負けたとき、韓国軍に併合されたときっていって解放後って結構でてくるんですけど、その解放後は急にみんなハングルを勉強しなくちゃいけないんですよ、それまで日本語だったのが、国語がハングルになるっていうので結構みんな苦労したらしいんですよ、大学とか高校の授業とか、でもそのパク・ワンソさんはハングルを読めたのでそこはそんなに苦労なく、すんなり自分の国の本も読めたし、それは小説家になる上でおおきかったのかなーって
へー、それは原書で読んだの?
それは翻訳で読みました
読み比べもしたりするの?
読み比べも両方あれば、それが多分一番いい勉強法ですね、自分でまず翻訳してみて、それで翻訳書読んで、それでどう違うかっていう
そっかそっかー