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2015.01.30
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昨日も書いた通り三鍋昌春の『ウイスキー 起源への旅』を読んでいて、これがすこぶる面白い。読んでいるだけでどんどんウイスキーが飲みたくなる(ワインもビールも)。ジョイスのこともあるのでアイリッシュが気になる。しかしアイリッシュウイスキーとは何か。
第5章でそれが説明されているので今日はそこからアイリッシュウイスキーとはなんぞやでどんなやというのを学びたい。(以下括弧内は上記の本からの引用)
まず言えるのは、この章のタイトルが「アイリッシュの繁栄と衰退」となっている通り、アイリッシュウイスキーは繁栄したのち衰退した存在ということだ。スコッチにその座を奪われたと。ただし、21世紀に入って復活の兆しを見せてはいるらしい。
アイリッシュウイスキーのもととなるウシュク・ベーハー、生命の水は、政治的なあれこれでワインの供給が制限された4〜7世紀のアイルランド教会や修道院で誕生した模様。
ウシュク・ベーハーはすなわちアクアヴィテで(多分)、なんか生命の水っていう感じのわりと宗教的な役割のやつで、祭祀のときとか医療用とかに使われるものだった。それがその高いアルコール度数から「これエールよりもいいんじゃない?腐らないしガツンと来るし」という感じで飲用になっていったらしい。
特に冷涼な気候のアイルランドでは体あたたまるし、農民の我々からしたら最高だよね、という感じで国民の魂の酒になっていったと。個人的に作るのは法的にアウトとなってもポティーンと呼ばれる密造酒が多く作られたとのこと。
そんなこんなで、アイルランドの酒作りはいっときはスコットランドのそれよりも優位に立っていた。
「ウシュク・ベーハーはもっぱら蒸留免許を購える業者によって工業製品として大量生産され、進化していった。ただし、その進化はスコットランドのウシュク・ベーハー蒸留業者達より早く、また優れものだった」
「ブレンデッドスコッチウイスキーが登場する前のイングランド本国はもとより、世界に広がる大英帝国連邦の各国、そしてアメリカで大いに売れていた。その数量はスコッチをはるかに凌駕するものであった」
たくさんの製造業者がいた。「最盛期にはブランド数400、原酒を賄う蒸溜所は160にも達した」
栄華を誇った!「アイリッシュは16世紀から20世紀初頭までは間違いなくウイスキーの盟主として君臨していたのだ」
しかし、いくつもの不幸によってその座から簡単に転げ落ちる。
国内での節酒運動の拡大、連続式蒸留機の発明によるおいしいブレンデッドスコッチウイスキーの登場、得意先のアメリカで施工された禁酒法、大英帝国連邦各国が課したアイルランド製品への高関税による世界市場からの締め出し。あるいは作り手たちの慢心もあったのではないかと書かれている。
そんなこんなであっという間にスコッチの時代に。という話らしい。現存しているアイリッシュウイスキー会社はたったの3社と、その凋落っぷりはけっこうすごい。
そんな中でアイリッシュ・ウイスキーの特徴とは何か。
「爽快な麦の香りとライトでスムーズな口当たり」とのこと。
それを実現している3つの要素。にわか知識のコメンタリー付き。
その1「大麦麦芽だけでなく麦芽化していない大麦も使うこと。これが爽快な麦の香りを生み出す」
スコッチのモルトウイスキー(これ言い方合ってるのかな)は大麦麦芽だけを使用、というところとのあれですね。
学習 > ウィスキー > シングルモルトウイスキー | fuzkue(フヅクエ)
その2「使用する麦芽はピート香を付けないため、爽快な麦の香りが引き立ち、しかも香りや味わいが軽快になる」
なんか乾燥させるときに泥炭であるところのピートを焚くんですよね、スコッチ。それでスモーキーなフレーバーがあれになる的な。
学習 > ウィスキー > ピート | fuzkue(フヅクエ)
その3「ポットスティル(単式蒸留釜)で三回蒸留すること。二回から一回増えることによってウイスキーの精製度が上がり、雑味、えぐみが少ない、ライトでスムーズな口当たりになる」
らしいですよ。
総じて、というところで。
「アイルランドの波乱に満ちた歴史と人々の心を思うと、アイリッシュウイスキーは香味以上の感懐を飲み手にもたらす」
これ、この章の最後のところに書かれてるんだけど、著者は本当にスコッチが好きなんだなあ、というのがよく伝わってきてとてもいい。
そういうわけでアイリッシュウイスキー、いろいろ飲んでみたいなと。いま店にあるのはジェムソンだけなので、他のも調達したい所存。
photo by Casey Bisson