読書の日記(11/11-17)

2024.11.22
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抜粋

11月11日(月) 

起きると部屋から出てきた遊ちゃんに誕生日おめでとう、と言われてそのことを思い出して、僕の頭にあったのは『正反対な君の僕』のことたった。読んだか聞くと「あっ!」ということで僕がトイレに行ったり歯を磨いたりしているあいだに読み、少しするとぶぶぶぶぶ、という音が聞こえて見ると床に座り込んでぐすんぐすんと泣いていた。それを見ただけで僕も涙が込み上げた。
家を出て歩きながらもあの場面この場面と思い出され、涙が込み上げた。わかるよ、わかる。ありがとう、ずっとありがとう。やっぱり、濱口竜介の映画を思うし、滝口悠生の小説を思う。こんなふうに人に伝えられたらいいなとこいねがう言葉を、照れや恐れを突き破って発すること。それがどれだけ「なかなかこうは言えないよ」というものであっても、あるいはそうであればあるほど、フィクションというものの意義があるのではないか、と歩きながら私は考えた。濱口竜介、滝口悠生、阿賀沢紅茶、と私は考えた。

11月12日(火) 

うどんを茹でて冷やして食べた。横浜優勝特集の『Number』を読みながら。横浜が優勝しちゃうのか、と思ってから何度も浮かんだのが村瀬秀信で『止めたバットでツーベース』の人で、好きな書き手だった。その人の記事もひとつあり、優勝決定の日は恐山に逃げ込んでいた、その帰りの空港、優勝決定後3時間のところで書き始められた文章は胸を打つものがあった。それを読みながら、保坂和志は何を思っているだろう、と優勝から初めて、横浜ファンとしての保坂和志の存在を思い出した。僕はずっと、保坂さんが『Number』とかに野球のこと書いてくれないかな、と思っていた。最初の『読書の日記』が出たあとのトークイベントで保坂さんとお話させてもらう夜、控え室ではじめましての挨拶をした僕はそれを話した気がする。バカみたいに緊張していたからバカみたいなことを話したのだろう、と思うと微笑ましく、でもなんであれ、『カンバセイション・ピース』で横浜スタジアムのライトスタンドを見事に描き出した小説家に、この機会に、何かを書いてもらうようどこかしらが依頼すべきなのではないか、とは本当に思う。とっても読みたい。

11月13日(水) 

食後も白湯を飲みながら試行錯誤を繰り返し、最後のほうはビルドのたびに『エッセンシャル思考』を読むといういい加減な取り組み方をして、ドラッカーからの手紙のところがよかった。チクセントミハイのインタビュー申し込みへの返事。
「2月14日のお手紙を拝読し、非常に光栄に思っております。貴殿のご活躍は常々拝見しており、多くを学ばせていただきました。そのようなお方を失望させるのは非常に心苦しいのですが、残念ながらインタビューに答えることは不可能なのです。創造的と言われましても、私はその意味を存じておりません。私はただ地道に進んでいるのみです。……無礼な奴だとお考えにならないでほしいのですが、私にとって生産性の秘訣とは(創造性はわかりませんが生産性は信じます)、特大のくずかごを用意し、すべてのこうした誘いをそのなかに入れることなのです。これまでの経験から言って、生産性とは他人の仕事を助けることではありません。天から与えられた才能を最大限に生かすべく、持てる時間のすべてをそこに費やすことなのです」 グレッグ・マキューン『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(高橋璃子訳、かんき出版)p.169
いろいろいいが、「不可能なのです」というのもいい。ドラッカーからの手紙。チクセントミハイからの手紙。どんな名でも、「からの手紙」とつけるとすべて何かのタイトルみたいに響く。それで最後のビルドを走らせると見届けることなく布団に行き、今日はそのまま『エッセンシャル思考』を読んだ。

11月14日(木) 

いつのまにか内沼さんが消え、席を外して戻ってきたら大高さんと殿塚さんの姿が消え、僕も消えることにして辞した。店に寄ると佐藤くんがスープの試作をしていたのでいただくとすごくおいしかった。肉は入れないことにして、代わりにではないがピーナツを入れた。他の豆も入れるといいかも、と話した。おいしくておかわりした。

11月15日(金) 

へとへとに疲れて終えて今日もピクシーズを聴きながら帰路。今日は持って帰っていいお米がなかった、夜に追加で炊いた分もほぼなくなった、なので何も持たずに帰り、コンビニでカツ丼と春雨サラダみたいなやつを買った。あと再び大谷が表紙の『Number』も。風呂で散髪した。ご飯を温めた。サッカーの続きを見た。ストレッチをした。

11月16日(土) 

弱々しい気持ちで早く布団に入って『失われた時を求めて』。今の夜会のパートあんまり面白くないなあ、これいつまで続くんだろ、外に出てほしい、と思いながらも面白いところもあった。

11月17日(日) 

それからふらふらすることにして神山町の方向に歩いて、ここはなかったよねと言うとだいたいあったということで、僕はだいたい見逃していることが知れた。SPBSに入り、入った瞬間に、本屋さんはいいなあ、という気持ちになる。平台に『酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話』が見えて数日前にたぶんツイッターとかでこの本について見かけ、もともと存在は知っていたがそれでより気になっていたというか、酒も煙草もやめられない人間なので気になるところだった。『女の園の星』も見え、ひきちゃんがツボに入って10分間笑い続けた、と書いていたので気になった。遊ちゃんも読んでいるそうだ。
SPBSは向こうの平台の文庫コーナーがけっこう独特というか面白い場所である気がしていて、読みたい本がいろいろあった。壁のほうを見ていくと庄野潤三の『世をへだてて』というのがあり、知らないタイトルだった。ときどき庄野潤三成分を摂取しがほうが気持ちよく生きていけるような気がするので買うことにして、でも依存症のやつもやっぱり気になったので買うことにした。
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