抜粋
10月21日(月)
元気な音楽を聴きながらメール返信をやろうと思って探していると特に元気ではなかったがフランク・オーシャンが出てきて、そこからふと思い出してリアーナの『ANTI』を聴くことにした。このアルバムはほんとすごい。何度聴いても感動する。この作品と結びついているのはトラヴィス・ソーチックの『ビッグデータ・ベースボール』で副題は「20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法」で神山町のベローチェでこれを聴きながら読んでいたら感動して涙を流していたその時間だ。ということを思い出したのはこれを書いている今のことで、館ではリアーナが歌い始めると今日すべき連絡をリストアップし、それからヨーイドンという感じで始め、やっていった。
10月22日(火)
今日は一日シフト。とにかく前半でやることを潰すべく旺盛に動き続け、店は昨日は忙しい月曜日になったが今日は低調でのんびりしたものだった。それにしてもパンプキンチャイのチャイなりケーキなりはだいぶ好評で、今月で本当に終わらせちゃっていいのかな、という気にもなる。今月だけだから頼んでもらえているという部分は大きいだろうけれど。一方で弊害というか難しさもあって、ケーキがパンプキンチャイとチーズケーキで割れるとチーズケーキにしか使わない材料、マスカルポーネとか生クリーム、そこらへんの消費ペースが落ちて特に生クリームを使いきれなくなりそうで、まあそれも仕入れのペースの調整の話ですが。でもひと月限定メニューとかだとペースを合わせていくうちに期間が終わるものだとも。これはこれまで下北沢がパフェとかで体験していたことで、やりくり難しかったろうな、と改めて。
それでカレー等々の仕込みを潰していき、6時になると「いま夜番に入ったことにしよう」と気の持ちようを再設定した。すると、「働き始めたばかりなのになんでこんなに疲れているんだろう!」ということになった。
10月23日(水)
スタッフ募集まで一気にやり、やろうと思えばやれるじゃないですか、と思って自分を褒めた。その他にも細々としたタスクをいろいろと潰せて心地よかった。しかし終えるつもりだったすべてを終えることはできないうちに疲れ、3時間やっても全部が済むわけじゃないんだな、と思いながら切り上げた。切り上げるとくまざわ書店に行き、『嫌われた監督』を買おう、昨日の三笘の座談会の『思想』をペラペラして他の記事も面白そうだったら買おう、と思ったのだがどちらもなくてびっくりした。どちらも余裕である、となぜかたかを括っていたので。
10月24日(木)
ここから「夜ヤりに行くと命名した営み第二段階」としてディスコに行き、それから〈オフィス〉という名の売春宿に行く、その中でどんどん強まっていく不安とパニックの感覚がモヤらしいというか、『無分別』のモヤで、ああこれモヤだ、という感じで凄みがあった。売春宿で汚いトイレに這いつくばってパスポートを探すところでその汚さが真に迫ってきて「うっ」となったので閉じ、寝ようと思うのだが眠気がいっこうにやってこず、目を閉じるとおでこのあたりでアプリの画面が動き回っていて、ここをこうしたい、あれをこうしたいといううっすらとした思考未満の思考が流れ続け、途中で再度明かりをつけて本の続きを読んで見事なオチというか背筋の寒くなる終わりだった。付記も面白くてモヤはこの小説の出版によって国を追われるような感じになり、だけど売れ続けている、エルサルバドル人にとってモヤといえばこれ、というものになり続けている、ということだった。それで頭に戻って少しだけ「フランシスコ・オルメド殺害をめぐる変奏」を読み、閉じ、寝ようとするが眠られず、そうしているうちに4時半になった。結局6時半に寝た。
10月25日(金)
9時半起き、ねんむい。10時から佐藤くんと、11時から大河内さんとミーティングをして明らかに頭が回らず恐縮。お昼にうどんを食べると布団に入って3時間ほど昼寝。だいぶすっきりした。
10月26日(土)
疲れが溜まっている的な疲れではなく身体的に疲れているというか筋肉的に、というのか、疲れている感じがあって背中や腰に張りを感じる。行きもザゼンボーイズを聴き、店に着くとスピーカーに繋げて大きな音で聴いた。『らんど』が終わると『すとーりーず』にし、それも終わると『ZAZEN BOYS 4』にした。「Asobi」がやっぱり凄かった。聴いていると何度か涙ぐみそうになる感じがして、やっぱり向井秀徳は僕にとって唯一無二過ぎるなあ、と思う。いつでもどこでも冗談が始まりうる感じ、こういう姿勢ってありなんだ、と中学3年生の僕は衝撃を受けた。シリアスであることが真面目であることなわけではない、という姿勢、これは本当に大きな影響を僕に与えた、と私はかぼちゃのケーキを焼きながら考えた。
10月27日(日)
少しすると拍手が起き、メンバーがステージに上がってきたらしかった。ライブが始まったら立って見るものだろう、と思って立ってみたが、拍手が落ち着くと向井秀徳が両手で座ることを促すジェスチャーをし、会場から笑いが起こり、そしてみな従順に座った。暗転し、ライブが始まって、かっこよすぎて涙がべらべらと溢れ、そろそろ一線を超えて嗚咽しちゃいそう、『タレンタイム』を見るときのような泣き方しちゃいそう、ティッシュ持ってない、これはやばいな、と思っていたが、最初の5曲くらいで落ち着いてくれてそこからは落ち着いて見ることができた。結局3時間で36曲というかなり長大なライブで、うしろの2時間くらいはお尻がずっと痛かった。