読書の日記(9/9-15)

2024.09.20
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抜粋

9月9日(月) 

田村くんとの交代で、初のひとり昼番はつつがなくこなせたようで何よりだった。交代するとカレーを小分けにした。夜も暇で、9月は盛り上がってほしい月なのですが。
随所で真面目に働きながら主に座り、引き続き暗闇の中の手探りのような作業を続けた。
夜も早く終わり、エアコンフィルターの掃除をした。

9月10日(火) 

つまり何ができた?
クラウド移行(AWS EC2とRDS)が成功しました。
バックエンド(Node.js)がEC2上で動作しています。
データベース(PostgreSQL)がRDS上で機能しています。
フロントエンド(React Native)からバックエンドへの基本的な通信が確立されました。
主要な機能が動作しています。
つまり?
アプリの基本機能が予想以上に正常に動作しています。
APIエンドポイントの更新が完了し、クラウド環境と正しく連携しています。

9月11日(水) 

遊ちゃんもちょうど買い物に行くということだったので一緒に出、最初は空気を涼しく感じていたが、歩いているうちに体が少しずつ熱を溜めていく感じがあり、最後は暑くなった。くまざわ書店に行き、コミックコーナーに直行すると『氷の城壁』の13巻があって、帯に「・・・好き。ずっと大好き。」とあってふたりで悲鳴を上げた。表紙は寄り添ってはにかみ笑いを浮かべるミナトとこゆんで、ふたりがこんな笑顔になる日が来るとはなあ! とこれだけで感激。「だってさあ」と言ってジャンプコミックスのコーナーに行って既刊のやつを探して1巻を取ってこゆんの無表情の顔をふたりで見た。遊ちゃんが「ミナトも」と言って何巻だったかミナトが表紙の巻を取って見せてきた。
遊ちゃんは『群像』が目当てで、開くと濱口竜介特集があってそこにあった写真を見て僕は早押しクイズみたいな感じで「ビクトル・エリセ」と言った。遊ちゃんがぎょっとした。
本屋さんにいたら、本読みたいなあ、という何か切ない悲しい気持ちになっていくのを感じた。いつになったら休むつもりなんだろうか。遠い。でも休まないとダメ過ぎる。

9月12日(木) 

2時半、布団に入ると『百年の孤独』を開いてフェルナンダが切れ散らかしていた。アウレリャノ・セグンドを責めさいなむ言葉を何時間も発し続けた。耐えきれなくなったアウレリャノ・セグンドが「頼むから、静かにしてくれ」と言うとフェルナンダは声をいっそう大きくした。アウレリャノ・セグンドはゆっくりと立ち上がった。
ベゴニアや羊歯や蘭の鉢をつかみ、ひとつずつ床に投げていった。フェルナンダは愕然とした。それまで、繰りごとに隠れた恐ろしい力を意識していなかったのだ。しかし、もはや手遅れだった。奔流のようにほとばしる怒りにまかせて、アウレリャノ・セグンドは戸棚のガラスを割り、あわてることなく一枚ずつ瀬戸物を取りだして、床にたたきつけてこなごなにした。屋敷じゅうに紙幣をべたべた貼ったときと同じようにゆっくりと、落ち着いて手ぎわよく、ボヘミアン・グラスや手描きの花瓶、薔薇があふれた舟に乙女をあしらった額や金メッキの枠の鏡をつぎつぎに割っていった。広間から穀物部屋まで、壊れやすいものをすべて手にかけ、最後に台所の水がめを中庭の真ん中に投げつけた。それは鈍い音を立てて砕けた。そのあとアウレリャノ・セグンドは手を洗い、防水布をかぶって出ていった。そして真夜中近くなってから、乾し肉を少々と数袋の米、虫のついた玉蜀黍ややせたバナナの房などをかかえて戻ってきた。おかげで、このときから食べ物に不自由しなくなった。 ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』(鼓直訳、新潮社)p.494,495
ものが壊れるのが僕は悲しいので悲しくなりながら読んだ。誰かがブチギレる場面でずっと記憶の近くにあるのは『かなわない』と『奇跡も語る者がいなければ』だったが、この場面もランクインしてくるかも。壊れたものは元に戻らないから悲しい。金継ぎすればいいってものではない。寒くなる前に金継ぎしないと、と思っているマグカップがいくつかある。

9月13日(金) 

電車で眠く、日記を書こうと思ってUlyssesを開いていても指がいっこうに動かないので諦め、本を開いた。当初は「若い女性たちにも社会を変える力がある」みたいな文脈で普及していった「girl power」という言葉が、広告とかに取り込まれていく中で次第に個人の成功や個人の選択という新自由主義的な色の言葉になっていった、一方日本での「GIRLS POWER」は脱毛広告のキャッチコピーとして登場した、というところを読んだ。店に着くとアイスコーヒーをつくって冷たくておいしい。朝ごはんを食べた。

9月14日(土) 

武田さんからおすすめエッセイを聞かれて『傷を愛せるか』が浮かんだのでそう送った。

9月15日(日) 

食後、『氷の城壁』。ミナトがひたすらかわいい。本から顔あげて「えー!」と言ってから「ほっほっほっほ」と笑いが出た。恋するミナトってこういう感じなんだあ! と私は考えた。途中で一度12巻に戻ってざーっと読んでからまた13巻に戻り、何度もため息をつきながら最後まで読んだ。「尊い」とか「てぇてぇ」とか見かけるが、本当にそういう語彙しかなくなる感じってあるなあ、と私は考えた。それからEC2インスタンスの様子を見に行くとなぜかSSH接続ができ、アプリも動いた。何かをやったわけではなく、なぜか解決した、というのが嫌で、これはまた同じことになるんだろうなと思い、明るい気持ちにはとてもなれなかった。また眠くなって布団に倒れた。90分昼寝した。疲労感が極まっている感じがある。
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