読書の日記(8/26-9/1)

2024.09.06
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抜粋

8月26日(月) 

先週敷野くんが潮目が変わった、カレーと定食の流れがずいぶん変わって定食の比重が高くなってきた、と言っていて週末もそれを感じていたが今日もずいぶん定食だったみたいで昨日いっぱいだったのにだいぶ減っていた。キーマカレーに変わってしばらくのあいだはもっぱらカレーで、新しくなったこともあるだろうけれど夏は味噌汁よりもカレーなのだろうと思っていた。その流れが涼しい風を自覚するよりも前に変わって人の体は思っている以上に生きているというか頭より速い。

8月27日(火) 

喫煙所で煙草を吸いながら、アプリというものを幻のように感じる、と私は考えた。目の前にないとき、ないように感じる。ビルドされてシミュレータに表示されて初めて存在する感じがする。その状態を前にしないと思考が始まらない感じがする。 書かれたコードは楽譜のようなものだろうか。演奏されて初めて立ち上がる。小説のようなものだろうか。読者に読まれて像が結ばれて初めて存在する。その瞬間だけ存在する。たくさんの幻の中で私たちは暮らしている、と煙草を吸いながら私は考えた。

8月28日(水) 

先週からマンション全体で窓の入れ替えの工事が始まってたまにインパクトドライバー的な音が聞こえていた。長時間続くものではないのでそう気になる感じはなかった。でも自分たちの家の日はやはり気になるもので、家の中に見知らぬ人たちがいて何かをしているという状態は心地いいものではなかった。今週はそういう週で昨日が下北沢で撮影で、今日明日がこれで、金曜は初台で冷蔵庫の搬出搬入があって要は専門業者にテリトリーを明け渡す週ということで、本来自分たちでコントロールできる領域がそうではないものになる、というのは落ち着かない気分になるものだった。僕はそう感じるが、ウルスラさんだったらなんと言うのかな、と思う。むしろ張り切る状況かもしれない。

8月29日(木) 

今日は張り出し窓で、はめ殺しの窓の扱いはそうじゃない窓よりもずっと難しそうだった。既存の窓に刃を入れて切り、強い嫌な音がした。無事に切れるとふたりがかりで取り外し、扱いを間違えたら割れちゃいそう。取り付けはもっと難しそうで、ハンドル付きの絶対に落ちない吸盤みたいなものを窓につけて持ち上げ、かなり重そう。落としたらかなり悲惨だし、窓の重みに引っ張られて一緒に落ちてもおかしくなさそうに見えた。その大きくて重い、枠のついた一枚の窓を、外側の枠のところに、いやそれ、どうやって、と思うがどうにかねじ込み、難所を越えるとひとりで固定作業をしていった。これまで二重窓になっていたのでこの窓からの眺めというのをちゃんと見たことがなかったが、下の家の今はつやつやした緑の紅葉の葉がたくさんせり出していてよかった。これもまた借景というふうだった。

8月30日(金) 

眠くなり布団。眠くなっての布団なので小説もすぐに眠くなってしまう。マコンドでひどい事件が起きてアウレリャノ・ブエンディア大佐が憤怒したところで寝た。

8月31日(土) 

食後は今日はもう集中力もないし終わりと思っていたが、明日の予習を始めていた。メールでのサインアップ時のアドレス認証機能の実装で、Firebaseを見にいくとそういうテンプレートがある模様。これ使う感じなのかなとクロちゃんに相談し、進め方を提示してもらい、認証系の現状把握のために必要な情報を列挙してもらうところまで。続きは明日。マコンドでは死者。

9月1日(日) 

度を越して暇な日になってしまった。雨予報は大罪だ。ということにしたい。雨が降るのはしょうがないが、数日前からの注意喚起は勘弁してくれ、という気持ち。無茶な要求だ。でもやはりこれだけこの週末は大変な雨だという予報を強く出されると、人は出ないよなあ、とは思う。どうなんだろうか、そんなことはなく、他はにぎわっていたのだろうか。とにかくフヅクエは極端にダメな休日になってしまって悲しい。『リーン・スタートアップ』を読んでいる方があって、この本俺も読んだよな、と思って配膳がてら本棚を見てみるとあったのでやっぱり読んでいた。宇野、ボラード、五十嵐さんちを思い出す。岡山を離れる前々日とかの本当に間際に僕は宇野に行ってボラードに行って五十嵐さんの家にお邪魔した。夕飯をごちそうになって泊まらせてもらった。このときに教わったのだったか、このときに読んでいたのか、どちらだったかは覚えていないが、この本は、寂しさと希望の入り混じった日の宇野の、ボラードに行くまでの道の、特に縁石、それからシャッターもだったか、そういう情景と結びついている。
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