名づけえぬもの

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先日日経MJのトレンド面に「「おしゃべり禁止」カフェ、若者集う」という記事が載っていたそうですよということを書いたけれども、しかし「そんなトレンドひとつも聞いたことないっすわ、記事に載っているお店だってわりとずっと人気でしょ、少なくとも俺が行った1年前とかそういう時分はすでに集ってたよ若者」と思ったり「しかも記事でいちばん大きく取り上げられている神戸のお店はweb見たらこの5月からおしゃべり禁止時間を短縮されるみたいだし、トレンドどころか」とか思ったわけだったのだけど、でもトレンドっていうのはこの記事を足掛かりにくらいの感じでもしかしたら力技みたいなもので作られたりするのかもしれないな、おそろしいっすわ、ということを思ったりもしたわけだった。
それにしてもあたかも「フヅクエもおしゃべり禁止の店だから、やっぴー、追い風!」みたいなテンションで書いちゃったような気がするのだけど、しかしそれは本当に追い風なのか?
ということをそのあと我に返った際に思ったというか、それこそ、トレンドなんていうものの中に埋まり込んでしまったらあんなに嫌がっていたただの消費の対象に成り下がるということなのではないか、少なくともそのリスクがたいそう大きくなることなのではないか。
「カフェ」っていう括りですら抵抗があるのに、「ああ、無言カフェのフヅクエね」とか言われた日には、本当になんていうか、そう言った人のxxxをxxxしないと気が済まないくらいの気持ちになるかもしれない。
しかしまあ、カテゴリー問題というか拡張子問題というかって難しいよなあ、とかいまだに思っているところなのだけど、今日これを読んだ。
『ゼロ・トゥ・ワン』は面白く読んだ記憶はあるのだけど、確か2箇所で「〜するくらいだったら飲食店ででも働いておけ」みたいな、全然文意違ったかもしれないけど、ともかく唐突な飲食店蔑視みたいな箇所があり、その都度「黙ってろよwww」と思いました、という印象が強かったこともあり内容すっかり忘れちゃったのだけど、講演の途中まで読んでいる限りは面白くて、なんとなく内容も思い出してきたというか、ああそういえばそんなこと書かれていたな、と思っているところで。
その中で「流行語を使いすぎていることは、じつはまったく差別化できていないことの表れなのです。」と言われていて、ちょうど「拡張子なあ…」と思っていたところだったので「そうだよね」と思った、という話なんですが。というか。
「流行りの言葉をつかってしゃべると、みんなも耳にしたことがありますからコンセプトをわかってもらいやすいし、説明がしやすくなる、という一面はあります。でも、わかってもらいやすい場所にいてはいけないんです。」とも。「いいぞいいぞ、ピーター」というか。
いやなんていうか。名前をつけるというのは差異に目をつむって大雑把に括って思考を止めてわかったような気になるという手軽な行為なんだと思うのだけど、そういうのに収まらないでいたいよね、というか。収めようとしたら収まらない、みたいな存在でありたいよねというか。
フヅクエはただフヅクエとして欲望されたいよね、されねばならないよね、というか。なので今日から「サードウェーブ系無言ブックカフェ」とでも名乗ろうかと思います、という話でした。
photo by 斉藤幸子