読書の日記(6/24-30)

2024.07.05
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抜粋

6月24日(月) 

午後、佐藤くんからパフェの写真が送られてきて、びっくりするくらいきれいな写真でびっくりして、感激して、「おいおい! これは売れるだろ!」とテンションがたくさん上がった。
テンションが上がることもあれば下がることもあって月末の振り込みをしたら預金残高が見えてしまい、深くて広い恐怖の中に落ちた。ここのところは売上も上向きだしそんなに減らないペースになっているのではと思っていたが順当に減りそうで、怖い。お金の心配さえなければ、楽しく働けるのですが、と思う。誰かに替わってもらいたい。

6月25日(火) 

念のために『消去』と『ルール?本』もリュックに入れて家を出てくまざわ書店に。
とにかく息継ぎせずにずうっと読み続けたくなりそうな小説。目を離すことができなそうな小説。そういうものを今日はとにかく欲していて、意識に入ってきたのは『成瀬は天下を取りにいく』、『同志少女よ、敵を撃て』、『地図と拳』とかだった。それから海外文学のほうに行くと『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が見え、そう、こういうのが読みたい、これを読んでいたときみたいな、ひたすら読み進めたくなるようなそういうのが読みたい、と思う。それから前に山口くんが読んでいて以来何度か気になっている『われら闇より天を見る』が目に入り、なんかこれな気がするな、と思う。文庫のほうにも行ってみて、何もなければこれかな、と思って文庫のほうに行き、ハヤカワとか東京創元社とかのあたりをうろうろ見、テッド・チャンが見えたり、瀬崎くんが読んでいた『ザリガニの鳴くところ』が見えたり、これも山口くんが読んでいた『頬に哀しみを刻め』が見えたりしたのち、『自由研究には向かない殺人』が見えて、なんとなく存在はうっすらとは知っている本だった。それが急に、これっぽい、という気になった。

6月26日(水) 

目を覚ますと4時58分で、また眠りに入るまで、と思って『自由研究には向かない殺人』を取った。60ページ進むと寝、よく眠る。

6月27日(木) 

今日は午前のミーティングもなく、起きると布団の端に置かれた自由研究の本を取って読書を再開し、『みどりいせき』に続いてドラッグで変性した意識が描かれる小説になった。森の中から花火を眺めた。そして気持ちのよい終わりを迎えた。風通しのいい語り、隙あらばユーモアが顔を出そうとする語り、アンディ・ウィアーなんかはその最たるものだが、僕はそういう語りのものを読んでいたくて、この小説はそうだった。

6月28日(金) 

今日は一日雨だが、でも最近は案外雨の日も関係なくお客さんがあったりもしていた、と思って前向きな気持ちで店を開けたが今日のような強い雨が予報されている日は別なのかすっかり暇だった。やるべきいくつかの仕込みを済ませると月報をこしらえ、お客さんは少しずつで、6月が終わりに向かってしぼんでいく。

6月29日(土) 

駅に着くと32分が特急、33分が快速、でもこれはたしかトラップだったはず。36分の区間急行に乗るのが一番で、なぜなら32分の特急に乗っても笹塚で乗り換えるのはこの36分の区間急行になるから。たしかそのはずで、経路を検索してもかたくなに36分のに乗れと出てくる。でもどこかに不確かな感覚があったので、笹塚で確認しようじゃないかと思って特急の電車の番号というのか、それを見ると「8502」とあった。僕の乗る区間急行が笹塚に停まったときに、向かいのホームにそれが見えるのかどうか。
そう思って電車に乗ったが笹塚に着く頃にはすっかり忘れていたし、そもそもたとえ8502からの乗り換えがあったとしても、8502は乗客を降ろしたら笹塚に残る理由はなく、先に新宿に向けて発車していただろう。

6月30日(日) 

昼飯を食べると布団に入った。眠すぎて。それで『消去』を開いてワインボトル用コルク栓製造業者と妹の結婚が一週間で破綻した、妹にとって夫は一週間で不要な存在になった、「というのも妹がワインボトル用コルク栓製造業者と結婚した理由である母と、母がツェツィーリアとアマーリアの対男性問題に関して、とはすなわち娘たちの将来に関して打ち出していた方針が忽然と消えてなくなり、もはや存在しないからであり、母の死によりこの結婚は根拠を失ったからだ」というところを読んで「根拠を失った結婚」と思うとまた寝て、アラームが鳴って起きるとかつて、『未必のマクベス』だったか、この小説でラムコークが出てきてとても飲みたくなり、と言ってお客さんがコンビニでコーラを買ってきてこれでラムコークをつくってくださいと言われてとても喜びながらラムコークをつくったことをなぜか思い出し、それからまたアラームを掛けて寝、4時まで寝ていた。
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