読書の日記(5/13-19)

2024.05.24
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抜粋

5月13日(月) 

午後はまずはちまちまと些事を潰し、それからスタッフ募集の下ごしらえを始めていって今回でちゃんとマニュアル化していく、今までのを活かしながらより快適にできる型をつくっていく、という欲望が強く湧いてきたらしく、エントリーのフォームに回答が来るとそのままNotionのデータベースに追加されていく状況をつくることにした。これまではスプレッドシートのまま管理していたが、スプレッドシートだと常に全応募が表示される状態になっちゃう、これをNotionで管理できればいろいろなフィルタリングでステータスに応じて表示される場所を変えて、みたいなことができるので絶対に快適なはずで、というのでいくらか久しぶりの感じでChatGPTにスクリプトを書いてもらったりしていると出る時間になり、外は雨が降っていた。

5月14日(火) 

布団に入ると遊ちゃんが起きたので『消去』を開いて読み始める箇所を探し、「妹たちについて何か喜ばしい思い出はないか、と思いめぐらしても、何ひとつ浮かんでこない」と笑いながら音読した。遊ちゃんも笑った。夕方は先週読んでいた咳をする妹たちの箇所が面白いのは僕だけなのか、そうではないのか何か確かめたくなり、遊ちゃんが廊下に出てきたところを捕まえて、遊ちゃんは家を出る用事があって急いでいたのだが、無理を言ってその箇所を読んでもらった。やっぱり遊ちゃんも笑いながら読んでいたので面白いということがわかった。どこを読んでも面白い。

5月15日(水) 

今日は少し疲れていて太ももが弱い筋肉痛になっていて、昨日がやはりいつもよりもがんばって漕いだことが知れてこの痛みはいいものだった。でももしかしたら昨日寝る前にしたダイナミックストレッチによるものかも。初めての動きだった。ともあれ疲れているのもいいもので、午前中は残りの経理作業をやっていったら気持ちがどんどん塞いでいく感じがあって恐怖を逃すためにひとりごとをずっと言っていた。経理が済み、恐怖を逃すためにリゾットをつくることにしてつくりながらやはり恐怖を逃すためにサッカーの続きを見た。キャベツと鶏肉のリゾット。

5月16日(木) 

代わりではないが吉田健一の『言葉というもの』というやつが見えていいタイトルだった。吉田健一の何か新しいものが見えたらとりあえず買うというのが僕の決まりになっているようで、その決まりに従って手に取った、目次を見ると「言葉というもの」「説話」「日本語」「素朴に就て」「読むことと書くこと」「控え目に」「無駄を省くこと」「言うことがあることに就て」「何も言うことがないこと」とあって素敵な目次だった。言うことがあることに就て。何も言うことがないこと。どれも読んでみたくなるタイトルだった。無駄を省くこと! 吉田健一が何を無駄だと思っているのか気になる。

5月17日(金) 

今日はここにはない大量の蔵書はどれもカバーが巻かれて保管されていて、ひとつひとつに読んだ時期のレシートが挟まれているということだった。その人が去年のいつだか、蔵書の整理を考え始めた小林さんから本をもらって、それにもやはり富士そばのレシートがあった。やはり小林さんから本をもらったという友だちに聞いても同じようにレシートが挟まっていたということだった。小林さんが人に本をあげていたことを知り、僕は去年の8月とかに『グロサ』を、ダブって買っちゃったんだけど阿久津くん要る? と言われてもらったわけだったが、あれは小林さんの優しい嘘だったのかもしれない、と初めて考えた。そう考えたら涙がこみ上げた。

5月18日(土) 

漕ぎ終えてシャワーを浴びるとビールを飲みながらポテチを食べながら読書を続けて、思い立ってオーブン焼きも焼いた。鶏肉と椎茸とカブと人参とキャベツとかだったか、ポテチを食べ終えるころにちょうど焼き上がってパンがポテチに代わった格好となった。椎茸をオーブン焼きに入れるのは初めてだったがすごくよくて、ちょっと醤油を垂らしたりしながら食べた。「蓋を閉めるとか風呂に入るとか、片づけるとか床に落ちているものを拾うとか明日の用意をするとか、まじですべての行動が一つ一つやる気せえへんよなあ」ということについて新宿駅のホームで考えている場面が描かれてインセンティブの真ん中の「cent」が「励ましの歌を歌う」という意味だと出てきたということだった。励ましの歌を歌う!

5月19日(日) 

店に着くとすぐに準備を始め、いくつか仕込みを進めると納豆で飯食う。11時になると岸本さんが来て12時になると店が開いてお客さんはトントンとあって、しかし忙しいわけでもなく、だけど仕込みで忙しく、だけど店もやっぱり忙しいのかもしれなく、よくわからない忙しさを絶えず感じながら働き続けて水を飲む時間もあまりなかった。不思議な忙しさで交代のころには妙に疲れていて山口くんにバトンを渡すと帰った。そうと決めていたように銭湯に行き、熱いお風呂にゆっくり浸かった。ウィトルウィウス的人体図もメイクした。
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