読書の日記(3/18-24)

2024.03.29
390.jpg
書籍版新作『読書の日記 予言 箱根 お味噌汁』『読書の日記 皮算用 ストレッチ 屋上』が12月に発売になりました! 
https://fuzkue-s3-v4.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/DN_56_cover_2_16adc7232b.png
こちらのページは抜粋版です。残り約17,000字のフルバージョンはメールマガジンかnoteで読めます。

抜粋

3月18日(月) 

起き、ちゃんと生活できないなと思う。こんな生活のどこに喜びがあるのだろうと、ありきたりな自己嫌悪に陥りながら、6時から動き出す。仕事。これが意外なほどに捗ってよかった。10時からは今月の経理をやっつけることにして3時間。はっはっは。3時間で済むものだ。1時におしまいにし、今日もオーブン焼き。シティとニューカッスルの試合を見ながら。

3月19日(火) 

布団に入って『2666』。ロサ・アマルフィターノとフェイト。砂漠の中のモーテル。静かな夜に光が流れていく茫漠としたイメージ、この感じが僕にもたらす切なさや広がりはなんだろうと思う。しばらく読み、眠気が来なかったがそろそろ寝るべく本を閉じて明かりを消して目をつむって、しばらくそうしていると頭の中で人の話し声のようなものが聞こえ始めてこれは眠りの入り口に足を踏み入れたしるしで、これで寝られると安心したのだが、しかし眠りに到達することはできず、それどころか気配も遠ざかり、諦めて明かりをつけて読書に戻った。読み進めるとフェイトは刑務所を訪れてドイツ語を聞く。スペイン語話者のロサがドイツ語を英語に訳してフェイトに伝える。そしてページの左側に大きな空白が見えて「フェイトの部」が終わって、お次は、と思って見ると「犯罪の部」でとんでもないやつがやってきた。

3月20日(水) 

布団に入って『2666』を開くと何人目の被害者だったか、エミリア・メナ=メナという名が登場した。スペイン語の姓は父方の姓と母方の姓を並べるのがたぶん一般的なわけだが、父方、母方という順序は今も揺らがずにそのままなのだろうか、最近は何かが変わったりしているのだろうか、明日調べてみようと思ってエルビラ・カンポスはさまざまな恐怖症について話した。神聖恐怖症、橋渡恐怖症、閉所恐怖症、広場恐怖症、死体恐怖症、血液恐怖症、犯罪恐怖症、寝台恐怖症、毛髪恐怖症、単語恐怖症、衣服恐怖症、医師恐怖症、女性恐怖症、降雨恐怖症、海洋恐怖症、花弁恐怖症、樹木恐怖症、開眼恐怖症、幼児恐怖症、弾丸恐怖症、移動恐怖症、道路恐怖症、色彩恐怖症、夜間恐怖症、労働恐怖症、決定恐怖症、対人恐怖症、天体恐怖症、万物恐怖症、恐怖恐怖症。

3月21日(木) 

目を覚ますと『2666』を持ち上げ、フアン・デ・ディオス・マルティネスは引き続きエルビラ・カンポスのマンションに通い、警察署長はビジャビシオサに行って部下の助手にする少年を預かって帰って帰り道でコヨーテを撃ち殺して死骸を持ち上げたあたりでアラームが鳴ったのでスマホを取った、いつもそうするようにまたニュースアプリを開くとトップページに表示された「今読まれています」みたいな赤字が目を引いてそこには「大谷翔平の水原一平通訳がドジャース解雇…米報道」とあり、息を呑む。いったい何がと思って開くと違法賭博に手を染めて大谷の資金を使って損失を補填して、みたいなことが書かれていて、その瞬間に思うのは「見る前の時間に戻りたい」ということで、見る前の時間、それがまだ起きる前の時間、それに戻りたい、それが起きていない世界線に行きたい、そう思うし、また、こういうことを本当に思うのだなと思うが、「夢であってほしい」とも思う。朝で僕がまだ寝ていてこれが夢で、いったいなんという夢を俺は見たんだろうと呆れて笑いながら起きたい。

3月22日(金) 

4時ごろから初台、シオール。このときだった。つまり、2024年3月22日16時ごろ、僕はとうとう花粉症になった。突然鼻水が出始め、そして止まらなくなり、手持ちのティッシュはすぐに足りなくなってペーパーナプキンでしのぐがすごい勢いで鼻水が分泌されてこんなことはいまだかつてなかった。少し風邪っぽい気がして風邪かもしれない。ぼやっと熱っぽいような気がする。そして突然Notionがダウンする。鼻水は止まらないしNotionは落ちちゃっているしで仕事にならない。Notionが落ちちゃっていると本当に仕事ができないというか、Notion内で何かする作業は言わずもがなだし舞台がNotionの外のことも曖昧な記憶に頼るしかなくなるし、けっこう本当に致命的という感じがある。さすがに命には到りませんが。

3月23日(土) 

店着き、まずはクラリチンEXを飲みたいので朝飯を食う。そしてすぐ飲む。果たしてどれだけ効くか。いつまで効くか。1日1錠の薬なので1錠しか持ってこなかったが予備も持ってくればよかった。必要だったら2錠でも3錠でも飲みたいから。OD上等。それで真面目に準備をすると戸塚さんが来て開店で、先週の2時間もハードだったが今日の最初の時間もハードだった。先週とはまた別様のハードさで、ふたりですごい勢いで働く。一日シフトだった今日、けっきょく座る時間はほぼないままひたすら働き続けることになった。

3月24日(日) 

家に着くとシャワーを浴び、たちまち寝るだろうと思いながら布団に入った。『2666』を開くとたしかにその通りになってすぐに意識が落ち、しかしおしっこをしたくて目を覚ますとそのまま目が覚めて読書を再開させた。すると小説は400ページを迎え、いつまで経っても眠気はやってこず、その間もサンタテレサでは遺体が発見され続け、無数の事件のうちのひとつの容疑者としてドイツ人クラウス・ハースが逮捕されて4つある独房のひとつに入れられた。
・・・
残り約17,000字のフルバージョンはメールマガジンかnoteで読めます。