抜粋
12月11日(月)
帰ってご飯。コンビニで買ってきた肉野菜炒めとブロッコリーとエビのタルタルソースのやつとユー・ウェン作の手羽元と豆豉の煮物、白菜とアボカドのやつ、それからトッテナムとニューカッスル。トッテナムの試合を見るたびにソン・フンミンの存在の大きさを感じる。
布団に入って『証人』は今日も2ページで30ページから読み始めて32ページで閉じる。このペースだと300日とか掛かる。
12月12日(火)
ラウンジに上がっていくとB&Bが営業中だったので入って三浦哲哉のあたらしいやつがほしかった。最初のところにそれはあって、取ると何を見たいのか、ベルンハルトコーナーを見に行って、そうするとなんと『消去』があるじゃないか! なぜ入った。10日前にこれがあれば迷わず買っていたのですが。今は僕には『証人』があって、ここで『消去』を取ってしまっては、たぶん『証人』は読まれない。ありゃりゃと思いながら『自炊者になるための26週』をレジに持っていった。
12月13日(水)
電池が切れた。2時とか3時までダラダラダラダラと布団の中にいてツイッターで見かけたバンドの動画に夢中になったり解散で名前を知った和牛の漫才を見たりかまいたちのUFJのやつを見て涙が出るほど笑ったりして起き上がっても『氷の城壁』を開いたりでまるで動き出さない。
35キロ地点で立ち止まったらもう走り出せないみたいなそんな感じかも、と夜に榮山さんに話したが目指す42キロなんてないわけだし適切な比喩ではなかったかもしれないが、とにかく昨日休んだらというかノンシフトの日を過ごしたらそうなって、今週はシフト的には木曜もノンシフトだし他は半日だし余裕があるようにも見える、その見えもまた弛緩を生む一因となっているのかもしれない。今週は時間あるし、今はべたーっと過ごそう、というような。
12月14日(木)
終わってラウンジに籠もって働き、途中でフラフラしていたらハウスには今日もタコス屋さんが出ていた。外に置かれたテーブルに酒瓶が並んでいて見るとメスカリで、それを見た瞬間に初めてメキシコという言葉が浮かび、昨日突如として面白くなった『証人』とつながり、メキシコ、と思う。これは今日メスカリを飲めということだと解釈し、買おうと思ったが中にいる人たちのどの人がお店の人でどの人が客なのかわからない、楽しそうで、スペイン語の会話がにぎやかに交わされている。立ち上がった男と女が手を取って踊りだした。なんというメキシコ!
12月15日(金)
開店前、大家さんがやってきてちょっとびっくりする話をするのだけど、と言うので途端に緊張してまず浮かぶのは取り壊しとかだ。何かが話し始められたので断ち切り、まず結論からいいですかと、たぶん少しこわばった顔で言うとこのビルを他の会社に売却することにした、2月からオーナーが替わる、ということだった。それ以外は変わらない。契約はそのまま引き継がれる。
12月16日(土)
電車に乗りながら『自炊者になるための26週』を読み始めて最初はトーストの章だった。
自分は何をしたいのか。パンにどう働きかけ、そこから何を引き出したいのか。
私の場合、トーストを焼くときのポイントは、「いいにおいのする熱々の湯気を、パンに充満させること」です。
三浦哲哉『自炊者になるための26週』(朝日出版社)p.16
たちまちトーストを食べたくなって、めちゃくちゃトーストを食べたくなった。うちにはトースターがないが、オーブンレンジでおいしくトーストできるのだろうか。あるいはグリルか。
12月17日(日)
電車がやってくるとご飯の章が終わったので閉じてクラムボンの「Folklore」を聞いた。電車から降りると音量を最大にしてE3とかの出口まで向かいながらリピート再生させ、つくづく名曲。人類がこの曲に初めて触れた瞬間のことを思う。音源が最初だったんだろうか、あるいはライブで演奏されたんだろうか。とんでもない瞬間だ。だから何度も、何かが変わっていきそうな、という声を聞きながら、小綺麗なビルの階段を上がって外に出て、そんな気がした、あとすこしで、と原田郁子は歌い続けて、店のネオンがたくさん瞬いているが音楽の中にあってすべて引っ込んで背景だ、大地と待ち合わせたのはあのあたりだろうか、向こうに「田中」と書かれた看板が見えるからもしかするとあの下だろうか。僕はまだ少し移り気で、と歌。そんなわけはなくて路地を右に折れ、去り際のタイミングをつかみそこねてる、と歌。大地の姿があった。