読書の日記(10/9-15)

2023.10.20
367.jpg
こちらは抜粋です。残り約13,000字のフルバージョンはメールマガジンかnoteで読めます。

抜粋

10月9日(月) 

一日雨。水戸に行くという遊ちゃんと一緒に出、朝から愉快に話しながら電車に揺られる。店に着くとアイスコーヒーをつくって昨日はあのあとも猛烈に忙しかったようで、大量の洗い物がある、仕込みはけっこうよくここまでやったなという感じで立派で、それでも今朝やらなければいけない仕込みも大量にあって早々に動き出して、どんどん風呂敷を広げていく。11時になると大河内さんが来たのでまず洗い物をひたすら片付けていってもらった。僕はひたすら仕込みをしていった。今日は開店前もしひとりだったらちょっと無理だった感。昨日も今日も頭の中ではテイラー・スウィフトの「Shake it off」がエンドレスで流れていて元気なものだ。

10月10日(火) 

遅くまでGASを触り続け、頭がどんどん冴えていく。布団に入ってもそのテンションが続いて眠気がなかなかやってこなかった。『黄色い家』がどんどん進んでいった。花が書いたスクリプトを実行したらエラーが発生したのでログを出力したあたり。エラーハンドリングが大切だね、と黄美子さんが言ったあたり。ヴィヴさんが機密情報をハードコードするやつがこの世にはゴロゴロいるんだよな、と言ったあたり。

10月11日(水) 

閉店直前のオオゼキできくらげとかを買って帰る。今日は豚肉とアスパラとピーマンと玉ねぎときくらげの炒めものをこしらえ、ご飯も炊いてバクバク食べる。
おてがる光に契約者を伝えるメールを送るときに「フヅクエ株式会社」と打ち、フヅクエ株式会社、と思う。俺の会社。

10月12日(木) 

家を出ると金木犀の香りがして振り返ったがどこから香っているのかはわからなかった。『桃を煮るひと』で金木犀の香りが苦手、という話が書かれていたことを思い出して、これから金木犀の季節になるたびに毎年思い出しそうだなと思った。その記述と、この本のウェットな手触りや優しい黄色とピンクと、この本を持って移動している電車や駅と、この時期の感情や出来事までは紐づかないだろうか、そういうあれこれを思い出しながらこれから歩くことになる。

10月13日(金) 

今日お客さんとやり取りしている中で、僕の根源的な喜びというのは人がのびのびしている姿を見たときというか、人がのびのびと過ごすことに関与できたときに生じるものなのかもしれないと思った。人がのびのびしている状態や光景が好きで、その状態に貢献できたと思えるとき、自分には意味がある、みたいに思えるのかもしれない。のびのび全般が好きだがフヅクエで支援するのは「ゆっくり本を読んで過ごしたい人ののびのびの実現」で、そしてそれを、この9年で、たくさん実現してきて、と考えていると、なんだかやっぱり感動してしまうな。

10月14日(土) 

飯の時間にする前にどうしてなのか『黄色い家』を読む時間が入って蘭がエンさんについてすごくいいことを言った。こんなことを言う、こんなふうに世界や他者を眼差す人だったのか、と思うと胸が熱くなる感じでいい場面で、それから家全体に閉塞感が染み入ってきた。一方で我が家はシンナーの匂いが染み入る日々で下の部屋のリフォーム工事でどういう工程でこの匂いが発生するのか、塗装だろうか、シンナーの匂いがどこからともなく漂ってきて洗面所の排水溝とかそういう穴っぽいところから来ている感じがする。早く済んでほしい。

10月15日(日) 

日曜日の終電は空いていた。『黄色い家』を開く。
みんな、どうやって生きているのだろう。道ですれ違う人、喫茶店で新聞を読んでる人、居酒屋で酒を飲んだり、ラーメンを食べたり、仲間でどこかに出かけて思い出をつくったり、どこかから来てどこかへ行く人たち、普通に笑ったり怒ったり泣いたりしている、つまり今日を生きて明日もそのつづきを生きることのできる人たちは、どうやって生活しているのだろう。そういう人たちがまともな仕事についてまともな金を稼いでいることは知っている。でもわたしがわからなかったのは、その人たちがいったいどうやって、そのまともな世界でまともに生きていく資格のようなものを手にいれたのかということだった。どうやってそっちの世界の人間になれたのかということだった。 川上未映子『黄色い家』(中央公論新社)p.429
けっこう毎週くらいにこれ思っているな、と思う。けっこうゾッとすることがたびたびある。自分がいる場所を見つめて、打ちひしがれそうになることがたびたびある。打ちひしがれそうになりながら特に打ちひしがれないのは救いだし、本当はこの救いの内実をこそちゃんと見つめるべきだよなとも思う。そこに自分を守ってくれる大切なことがあるのかもしれないのだから。
・・・
残り約13,000字のフルバージョンはメールマガジンかnoteで読めます。