抜粋
7月24日(月)
飯食い、早く仕事に取り掛かるためにも早く家を出よう、と思ったあたりでふとテーブルの上の『氷の城壁』が目に入って読み直し始めてしまって、1巻、2巻と、そのまま全部読んだ。まったく愚かだと思いつつ、満ち足りた心地で、それにしても続きはいつ発売になるのだろう、連載はとっくに終わっているのではなかったのか? たとえ連載が済んでいたとしても、一挙に出しちゃうよりも刻んだほうが売れるのだろうか。僕は一挙のほうがありがたいというか、この作品に関してそれは起きない予感がしているけれど、間が空くことで興味が薄れていって、続きが出たときにはもうアクチュアルじゃなくなっている、ということが容易に想像つくのだが、しかしマーケでティングな世界的には間を空けるほうがよいということなのだろうか。たしかに、次が出たら、そのタイミングでまた話題になって、また1巻から買われる機会も創出されて、みたいなことも想像できる。家を出た。
7月25日(火)
ツイッターがXになって、アイコンが変わって、ブックマークバーに見慣れない黒い四角いアイコンがあって、それは僕のブックマークバーだと「プロ野球 スポーツナビ」と近い。慣れだとはわかっているけれど、青い鳥がいい。慣れちゃうことは承知しているけれど、のんきな青い鳥の世界であってほしかった。もとに戻らないかな。
7月26日(水)
オオゼキは10時までだったがコンビニに入ったら人参となすがあったので買って帰り、人参と生姜のラペみたいなもの、キャベツを塩もみしてごま油とかで適当に味付けたもの、なすとにんにくを炒めて豆板醤とケチャップとカレーの素みたいなやつで味付けたものをつくって最後のはさっき佐藤くんに教わったやつをベースにした作り方だった。それらをご飯の横に添えてカレーを温めて食べた。大満足。眠い。『星を継ぐもの』。主人公が木星に派遣された。いよいよだ!
7月27日(木)
映画館が明るくなって目の前の手すりをくぐって通路に出、そのまま帰ることになったのでコンビニでビールを買って歩きながら、ああだこうだと映画のことを話した。先週とかに読んでいた日記で高校の国語の中地先生のことが書かれていてジブリの映画を見てああだこうだ言ったりする授業だった、4年前の時点では中地先生はまだいて、高校のウェブサイトを見ると先生のテキストがあった、そこに何かの条件として「千尋の髪留めの輝きに感動できること」と書かれていた。先生はこの作品を見て、どんなふうに舌なめずりしたのだろう、と思う。
7月28日(金)
何かをお出ししたときに見えた本が『プロジェクト・ヘイル・メアリー』という方がいて、残りページがわずかで、え、今、終わろうとしている? と思ってそれだけで感動していくような感じがあった。アストロファージ。うわ、終わる? 終わる? と残りページが少なくなっていくのを見て(見えやすい位置だったもので)、うわっ! 終わる! と思っていたらカバンから次の本が出され、丸善ジュンク堂のカバーが掛かっている、それが一度ほどかれた、それはまた『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の表紙だった、つまりさっきのは上巻だったことが知れた。上巻の後半はめちゃくちゃ感動するんだよな、と思い出し、言語の習得、コミュニケーションの始まり。その方は結局5時間くらいの滞在で、きっと今日でめちゃくちゃ読んだんだろうなと思ったら僕はとても幸福だった。この店の存在意義だった。
7月29日(土)
帰りの電車では浴衣を着た人を何人か見た。疲れた。プルコギ丼みたいなものを買って帰り、温め、ご飯はもうひとつ温めて特盛にした。食うと、テーブルの上の『正反対な君と僕』の3巻を取って読み始め、鈴木の家の帰り道の光あふれる景色が本当にきれい。平と東のボウリング回が僕は本当に好き。東が平の怯えを察して「大丈夫だよ」と声をかけるところも、帰りの電車で平が怒れよと言うところも、全部好き。翌日、下駄箱の前で、東の「ありがとう」に平の「ごめん」がかぶせられるところでビシャビシャ泣いた。
7月30日(日)
それで店に着き、お客さんはおひとりだった、敷野くんと外でべらべらと話し、敷野くんが帰っていき、少しすると新たなお客さんがあってメニューを開くこともなくジン・トニックとチーズケーキが頼まれた、何度も来てくださっている方なんだな、と知れると、西荻窪に流れる時間を感じるようで、愛おしさがあった。ひとつひとつ動きが慣れない感じでオーダーをこなし、それから定食のおかずの味チェックと称していろいろ味見していっておいしかった。