読書の日記(5/1-7)

2023.05.12
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ベルンハルト、くまざわ書店、『消去』/『線が血を流すところ』、『みんなのフィードバック大全』、『正反対な君と僕』/バウアー、猛烈な労働、出会いの日/八幡山、無茶苦茶な旅行、歴代ホームラン数/猛烈な仕込み、楽しいGW、ラーメン未遂/席を譲ること、他者に期待してみること、SPOTV NOW/『名探偵コナン』、バグる感覚、腰痛/連休最終日、ルヴァンのクロワッサン、アーセナル対ニューカッスル

抜粋

5月1日(月) 

人はゆっくりとたっぷりと本を読んでいく、楽しく働き5時で上がり、調布に戻り、くまざわ書店。働いているあいだにチラチラ考えていて新宿に出てブックファーストとかに行けば確実だろう、でもくまざわ書店というのは意外なものがある書店だ、なんでこのラインナップの中でこれがあるわけ、という本がひょっこりあるのがくまざわ書店で、だからそういう幸運を期待してくまざわ書店に行ってみるのがよかろう、どうしても今日ほしいということでもないのだから。というところで『消去』を求めてくまざわ書店に来たわけだ。とうとう『消去』に至ろうとしている。今年は本当にベルンハルトの年ということのようだ。貪るようにベルンハルト。ただただベルンハルトを読みたい。しかし『消去』はなく、がっかりもせず、代わりに目が捉えたのは見覚えのある質感で、トーンで、ふっと焦点を合わせるとジェスミン・ウォード、『線が血を流すところ』、帯にはデビュー作とある、奥付を見ると去年の暮れに出ている、まるで知らなかった、刊行の情報というのは全然知らないままでいられるものなんだなあとつくづく思う。それを手に取りそれから『みんなのフィードバック大全』も取って2冊を購入。後者はツイッターとかで見かけて気になっていた本だった。よきフィードバッカーになりたい。そしてみんなで健全にフィードバックし合える風土みたいなものをつくっていきたい。と常々思うので……

5月2日(火) 

ご飯を食べる時間はなくなって店を開けた。でもご飯を食べていないということはそのあと思い出すことはなく、つまり空腹を感じることはなく、わーっと猛スピードで働き続けた。今日はお客さんの数としては昨日とそう変わらない感じだったのだけど3時4時くらいで破綻したというか、あ、これは、どうしたらいいんだ、というパニックの感じになってけっこうお待たせしてしまったオーダーがあった感じだった、昨日と今日の違いはなんだろうか、ふたりでテンパりながらどうにかこうにか進めていって大わらわで大変で楽しかった。大変なのは楽しい。

5月3日(水) 

ヒイヒイ言いながら動き続けて目の前のことと明日をどう迎えるかのことを目まぐるしく考え続けて何を今日済ませてしまうべきか、何は明日に回してもいいのか、その優先順位を付けていった結果洗い物は明日に回してもいいからチーズケーキを焼いて鶏ハムを仕込んでとかそっちをやることにして洗い物がすごい溜まり方をするのを無視して仕込みを進める。夜までめいっぱい、大量の読書の時間が流れ続けて美しい日だった。パニックに近い中でもこの美しさを感受できる気持ちはまったく弱まらずにあり続けたのでよかった。

5月4日(木) 

仕込みのことを考えると追い詰められる。だから切迫もしている。店を閉め、売上を見ると報われた気持ちになる。素晴らしい売上。昨日も今日も初台はお客さん数は歴代1位を記録していて歴代1位の日が続いたらそりゃ切迫もするわけだ。下北沢も異常な売上を続けて記録しているし西荻窪も上下はあるが素晴らしい。これまで長らく週売上の歴代1位は去年のゴールデンウィークの週だったが、それは今年に入って何度か上回られたが、今年のゴールデンウィークはその比ではない、木曜だから4日消化時点ですでにほぼ歴代1位の数字になっていて、あと3日あるわけで、このペースで進んだらとんでもない塗り替え方になる。日本のホームランの記録はバレンティンの60本だが、これを村上宗隆が100本とかで塗り替えるようなそういう塗り替え方。

5月5日(金) 

8時半に家を出、ジェスミン・ウォード。隣に座っているおじさんが「区間急行なんて名ばかりですよ」と連れの女性に言って女性が「へーそうなんだ、じゃあもう口出ししない」と返すと「口出ししないほうがいいよあなた電車乗ったことないんだから」と言った、そのあとPayPayの話になると女性が主導権を握り返す感じになって男性はみずほ銀行の口座と紐付けてチャージをどうこうできるようにしたいがそのためにはみずほダイレクトというやつに登録しないといけない、女性はクレジットカードと紐付けている。そういう話を聞きながらアメリカ南部の小説を眠い頭でゆっくりとたどっているとPayPayと登場人物たちが混ざり合うような不思議な感覚になった。
店に着いてコーヒーを淹れ、iPodでイースタンユースをシャッフルで大きな音で流して今からの時間を鼓舞するためだ、大きな音に囲まれながらカレーを仕込み和え物を仕込みごぼうのおかずを仕込み人参のおかずを仕込みとすごい勢いで動いて11時になる頃に前田さんがやってきて爆音イースタンユースの状況に面食らった。

5月6日(土) 

何時頃だったか起き上がり、飯食い、出、ジェスミン・ウォードを読みながら下北沢に向かう。勤務は初台だが初台のコーヒー豆が大ピンチということで下北沢に取りに行った。ボア・ソバージュでは高校の卒業式を終えた双子が庭で親族たちと飯を食っていた。双子の一人は伯母を見て「シルより落ち着いた感じ、重心が低いぶん安定感があって頼りになるというか、その場からふっと消えたりしないだろうなという感じ」と思った。その場からふっと消えたりしないだろうなという感じ。シルは自分たちを捨てた母の名だった。伯父の案内で庭の奥に行くとトヨタの車をプレゼントされた。母からの贈り物ということだった。兄弟はなんともいえない心地になった。森が黒く湿っていた。下北沢は今日も人がいっぱいで、店に行ってコーヒー豆を頂戴して佐藤くんと少し話すと今日はわりとゆっくりということで広場の人もこころなしか少ないそうでそろそろ人々も連休疲れとかだろうか。初台に行き4時半、野口さんと交代。

5月7日(日) 

それで閉め、飯食い、ゴールデンウィークが終わった。帰りの電車で今週分の売上の集計を早速やって日本のホームランの記録はバレンティンの60本だが、これを村上宗隆が90本とかで塗り替えるようなそういう塗り替え方に着地した。すごいことだ。嬉しいことで、そしてその嬉しさはもう消えていたというか、この数字に着地するんじゃないかと思っているときのほうが嬉しかった。すでに溜まりに溜まった仕事への意識やいっぱいの疲労とかのほうが目の前にあった。
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