抜粋
4月3日(月)
終えると定食食って今日もうまい。「Number Web」で野球の記事を読んでいたらWBC決勝について触れられた記事で「漫画以上、いや映画以上の」みたいな言い方があってつまりここでは漫画よりも映画のほうが上等のものと捉えられているようだった。僕はことにスポーツにおいては映画よりも漫画だと思っているというか映画とスポーツの関係は難しいというか映画でスポーツを十分にやりきることは難しい。俳優の体はアスリートの体ではないからだ、どうしても運動の再現の至らなさがあらわになってしまうのが映画におけるスポーツで漫画のほうがリアリティみたいなものをつかみやすいような気がする、デフォルメによるリアリティへの近接みたいなことが漫画のほうが起こりやすい気がする、だからことにスポーツにおいては「映画以上の、いや漫画以上の」のほうが正しい気がする。
4月4日(火)
8時台の朝の電車らしい電車に乗って混んでいたが座れた、ホームで待ちながら読んでいた『すべては1人から始まる』を持って座ると隣の人も本を読んでいて、座れたからパソコン開いて仕事をしようかとも思っていたのだが隣の人が本を読んでいる中で本を閉じてパソコンを開くというのは隣の人への裏切りというか背信というか、そういう行為になるような気がバカみたいだけれどもしたのでそのまま読んで、この感覚はなんなのだろうか。さらに、今日はこの横書きの本しか持っていないからこれを読むほかないのだけど、隣の人も本を読んでいる以上、縦書きの本のほうがふさわしかったような気がしたのは一体どういうことだろうか。隣の人は途中で本を閉じた。僕は最後まで本を読んで電車に揺られ、店に着くとコーヒーを淹れて屋上に上がる。煙草を吸う。朝という感じがしていい。
4月5日(水)
今日は下北沢の夜番で珍しい日で、ひとりだと不安なので酒井さんとのタッグとさせてもらった、酒井さんもいつの間にかいろいろなオーダーに対応できるようになっていて助かった、下北沢は魔改造というか魔改造ではないか、変異、変種、なんだろうか、独自の進化、こういうことか、独自の進化を遂げているので下北沢のメンバー以外ではもうなかなか務まらない状態になっていて僕も例外ではなくてもうかなりわからない。だから週末人員の酒井さんに助けてもらいつつこなしていって平日も10時閉店になったのは3月からだったが今日も夜になってからもポツポツとお客さんが来てくれて、これはいいものだなあ、と思う、家に帰る前にボーナストラックに寄ってフヅクエに入ってそこでしばらく本を読んで過ごす、これはいいものだなあと思ってこの営業時間を維持できたらやっぱりいいなと思うし今の様子だと維持できそうだ、続いてほしい。
4月6日(木)
12時過ぎに散会し、案外終電までギリギリだった、と思いながら帰る。今日は先週よりは意識全然クリア、帰宅に向けた不安はない、と思いながら『すべては1人から始まる』を読みながら電車に乗り、座れたので座った、ふと目を開けたら電車は府中に着いたところで慌てて降りた。やっちまった、と思うと同時に府中で本当によかったとも思う。これが高幡不動だったらどうしようもなかった。
4月7日(金)
だからスピンと花布と見返しと背のてっぺんのところの色がとにかく素敵だった。2のときもそうだったがこれらの箇所にはイラストに使われている色を配置していて長谷川海さんのイラストに対してはスピンは土の茶、花布は光の明るい緑、見返しは土の明るい茶、背のてっぺんは海の深い緑だ、カナイフユキさんのイラストに対してはそれぞれジャケットの紺、本の赤、人々の薄い青、人々のもうちょっと濃い青で造本がイラストをも引き立てるようだ、戸塚泰雄さんのお仕事だ。めっちゃ素敵だなあとしばらくうっとりする時間を経、今日の作業を全面的に手伝ってくれる太田さんにいくつかの指令を出すといったん箱そばに。
4月8日(土)
映画館を出ると雨がしっかり降っていて円山町のライブハウスの前にはたくさんの列ができている、109前のミニスクランブル交差点はものすごい人で、ものすごい数の人が四方八方、まさに八方からみんな違う方向に進もうとする感じで少し高く上げられた傘で押し合いへし合いだ、なんだか傘で騎馬戦をしているみたいな歩き方になった。前に進んでいるつもりなのに左に左に動いていた。気持ちはすでに落ち込んできていてやっぱり休日というものをうまく過ごせない。
4月9日(日)
ボーナストラックに着くとふたり分のコーヒーを淹れると準備を開始して日記祭の日だ。『読書の日記』新刊の初売りだ。ギリギリになって準備が整ってパソコンの画面に通知が表示されないように集中モードにして余計なアプリとかウインドウとかも全部閉じてモニターにつないで日記のライブライティングだ、「いい一日になる気がしない。」と打ったところでスタートダッシュの販売ラッシュになって本がどんどん売れていく、僕も遊ちゃんもびっくりだ、「いい一日になる気がしない。」は1時間とか2時間とかそのままで日記を書く隙間なんてまったくない時間が続いた。めがけて買いに来てくれた方も、この場で知って買ってくれた方も、いろいろといた、うれしい気持ちの時間がずうっと続いて2時間くらいして疲れたのでちょっと休憩に出た。