読書の日記(3/6-12)

2023.03.17
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抜粋

3月6日(月) 

いったん起きて水を飲んだりしてから寝て起きて働いて午後になって家を出て電車に乗ると『文學界』を開いた。滝口悠生特集。秋津を散歩するやつを読んでいたら「楽器」を読んでいるときの感触がまるまる蘇ったような瞬間があって、そのあとは窓目くんとの対談だった。
窓目 あの恋愛なしに今回の恋愛は語れないからね。
滝口 もともと大学時代に好きだったその女の子のことを何かしら書くべきだ、あの大恋愛をいつか総括すべきだとはみんな言ってたんだよ。
窓目 みんなって誰だよ。余計なお世話だよ(笑)。
滝口 たしかに十万字のラブレターは書いたわけだし、それで一度整理はついているのかもしれないけど、でも結局その後に相手と一度つき合うことになったんだよね。なんか成り行きみたいな感じで。それがみんなのなかで引っかかってるっていうか、消化不良のままなんだと思うんだよね。大学時代のあのすばらしい完璧な片思いが、卒業後のごく短い交際期間によってなんかちょっと半端なままになってしまったというか、おさまりがつかないみたいな感じが、われわれにはずっとあったわけだよ。
窓目 だから余計なお世話だけどね(笑)。 『文學界 2023年3月号』(文藝春秋)p.161

3月7日(火) 

今日は確定申告を済ませてしまうのがよかろうと思ってそうすることにした。やることはおそらく法人の経費や売上として計上しているが個人のfreeeにも入ってきちゃっているもの、みたいなものを削除していくことくらいだろうと思っていたのだが去年は一年掛けて個人事業から法人へと経理の流れを切り替えていったわけだが、途中のところはいろいろ名残りがあるしずうっと個人のfreeeと連携が続いてしまっているものもあって、だから大量削除だった、削除したら「自動で経理」というところに舞い戻ってしまってどうも最終的にすることは「無視」ということらしかった、だから何度か無駄な往復をしてしまって微妙な待ち時間が常にある作業でけっこう苛つきが募った、他のことをやれそうでやれない待ち時間という感じで、なので途中で諦めて「超相対性理論」を聞くことにして作業に徹した。

3月8日(水) 

今日は夜番。いちごのシロップのドリンクの仕上げみたいなことをやったりしつつ大真面目に働いて今日もいい感じにお客さんが来てくださって僕はうれしい。ここのところ初台の底みたいなところが上がってきた感じがする。時間が過ぎていって閉店が近づいてきたころにいちごシロップを使ったカクテルの試作をしてほろっと酔った。それで閉めると急いで定食を食べて急いでビールを飲むと帰った。

3月9日(木) 

コンビニに寄ってネットプリントで「滝口悠生『ラーメンカレー』刊行記念フリーペーパー」を印刷してちらっと見えたのが「さて、皆さんがもっとも興味があるであろう、最近の私の恋愛事情はどうなのか」という一文で声を出して笑いそうになった。『文學界』での対談もそうだったけれど窓目くんは「窓目くん」というキャラクターを積極的に引き受けている感じがしてすごく面白い。ビールとしいたけを買った。コンビニのしいたけとかやたら高いのかなと思って値札を見たら148円で、「むしろスーパーより安い?」となって嬉しい。

3月10日(金) 

駅前を歩くと小田急の改札前で「ピッチャー代わるから」という言葉が聞こえて僕は「そうなんだよね」と思う、日本打線がここまで沈黙しているみたいだが、最初のピッチャーはいいピッチャーらしい、でもそこからの投手たちはきっと質が落ちるっぽいからここからなんだろうなとちょうど思っていたところだった。それで電車に乗ったら後ろから「日本負けてますよ」という会話が聞こえ、それから斜め前に立つ人のスマホが見えて野球の中継を映していた。ここまでの5分くらい、周囲全員が野球に注目しているみたいな状況になってウケた。ウケ終えるとベルンハルトを開いて「自由ハンザ都市ブレーメン文学賞」というタイトルだった。1962年、ベルンハルトは長編小説『霜』を書いた。これは今だと『凍』で出ているやつだろう。

3月11日(土) 

日の光が弱くなっていく。気持ちがどんどん沈んでいった。今日は休日のはずだが、いったい何をしているのだろうか。今日はこれを読む夜にするというのも手なんじゃないかと思いながら『アムラス』を手に取って開くと「両親が自殺したあとの二か月半、わたしたちは近郊の町アムラスの標(しるし)となっている塔に幽閉されていた」と始まって最初の5文字でもう陰鬱で笑った。

3月12日(日) 

それで今日は起きたときから背中のあたりに張りを感じていたので上がったら久しぶりに指圧に行こうかなと思っていたらだんだん圧迫感みたいなものになって夕方になったらはっきりと痛みになって圧迫感のある痛みだ、痛みは背中からお腹のほうに回り込んできて、この痛みはまるっきり覚えのある痛みで肋間神経痛だ。再来だ。痛くてそのままでも痛いし背筋を伸ばしたらもっと痛いからいつも以上の猫背にならざるを得ない。
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