読書の日記(2/6-12)

2023.02.17
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日記チェックの日々、振り返りの重要性、目標とロードマップ/超相対性理論、正反対な君と僕、それで君の声はどこにあるんだ?/ぼるが、PCR検査、忙しい水曜日/『スラムダンク』の映画、日記の終わり方、混乱と興奮/雪、ANDON、ダルビッシュ/腹痛、盛岡、盛楼閣/材木町、光原社、HAKARI/一高、ナガサワコーヒー、BOOKNERD/宮古、『喫茶店のディスクール』、紺屋町練り歩き/草津、『私を空腹にしないほうがいい』

抜粋

2月6日(月) 

2時半ごろ布団に入り榎本空。スタンレーという学生が「僕らにとっては、毎朝起きるのも、息をするのも、抵抗の一部なんだ」と話す。「あのときの現場の悲しみと怒りの分厚さと言ったら、言葉では表現できないくらいだったよ。結局みんな、ブラウンは自分だったかもしれないと、どこかで思っているんだ」。
そんなスタンレーの言葉に、私はうまく返事をできないでいた。言語のせいというよりは、その経験の密度が私にはわからなかった。スタンレーが、言葉を続けてくれる。
ミシェル・アレクサンダーの『新しいジム・クロウ』を読むといい。あれは絶対に読んだほうがいいよ。あの本が出るまで、黒人ですら、自分たちが何を経験しているのかわからないでいたんだ。だから彼女の本が出て、視界が開けるように感じたのを覚えている。やっと言葉が見つかったってね。言葉に救われることがあるんだよ。 榎本空『それで君の声はどこにあるんだ? 黒人神学から学んだこと』(岩波書店)p.60
経験の密度がわからないこと。やっと言葉が見つかったこと。言葉に救われることがあるということ。

2月7日(火) 

汗びっしょりで冷たくて起きる。午前中から午後に掛けて休みなくミーチング3本。最後は『読書の日記』のイラストレーターの方との打ち合わせで出していただいたラフ案を見ながらあれこれ話す。とても楽しみ。

2月8日(水) 

交代して僕もわーっと働きこうやって問答無用できっちり働かざるを得ない状況はありがたい。久しぶりに店で真面目に集中して働くことができてやっぱり楽しいしやっぱりいい店だ。10時過ぎくらいにいろいろが片付いて気がついたらお客さんもいなくなっている。なので50ページ原稿チェックをしてよく昼寝をする生活だ、忙しい日は座る機会もなく昼から夜中までノンストップで働き続ける、『マーティン・イーデン』を読んでいる。今日の分が済むと定食を食べ、片付けをして、けっきょく最後は大急ぎになって終電にどうにか間に合う。今日は行き帰りが原稿チェックと思っていたので本を持っていなかった、だから困ったがスマホで仕事をしたら進んだのでこれはこれでよかった。仕事の切れ目がない。

2月9日(木) 

今日は夜はもともとは『スラムダンク』の映画を見に行く予定でそれはおとといに優くんが見てきたと言って僕と武田さんは見ていなかったからだ、僕も武田さんも『スラムダンク』はあまり通っていない、僕は最初の10巻くらいは多分読んでいてそこからずっと経って岡山時代とかに山王戦が繰り広げられる最後の10巻とかを読んで大号泣という、飛び飛びの経験しかない。武田さんはそれよりもないようだった。だから僕たちは終わりは湘北が勝つのか山王が勝つのかもわからないレベルでその状態で交わされる会話はとても面白かった。俺は湘北が勝つほうにベットする、みたいなそういう感じで僕の最終的な予想は「山王には勝つけど桜木花道は怪我をして3回戦は湘北はすぐに負ける」というものだった。果たしてどうかを確かめるためというわけではなくて、優くんがそんなにいいと言うなら見に行こう、これはいい機会だ、武田さん一緒に行こう、そういう口実が必要だ、そうなっての今日だった。

2月10日(金) 

ラウンジで上着を着たままいくらか働き、今日はひたすら寒いのでいったん帰ろうと思う、その前にANDONに寄って武田さんに挨拶をする、昨日の武田さんは武田俊さんで今日の武田さんは武田昌大さんだ、昌大さんの武田さんは今日で下北沢のANDONからは離れて秋田で新規事業を立ち上げるということで扉を開くと厨房にいるのは後任の店長さんで武田さんは客席側にいて他のお客さんと話しているところだった。僕は、あの最初の春、静かな寂しい心細い春をともにした人たちに対しては思い入れがけっこうある、だから武田さんがいなくなるのはけっこう寂しい、でもやっと秋田に帰れることはよかったなとも思っている、これからもお互いにがんばりましょうね、そんなことを言って手を差し出して握手した。たくさんのおにぎりを握ってきた手だった。

2月11日(土) 

盛楼閣を出るとまずは荷物をホテルに預けてしまうことにしてホテルに向かった、町の地図は頭にできてはいないけれど懐かしく感じる景色もいくらでもあって開運橋と北上川のあたりはぎゅっと懐かしくて晴れていたら川の向こうに岩手山が見える。駅からホテルまでは15分くらいあっただろうか、遊ちゃんの言う「駅前」の範囲の広さが面白い。着いたのはドーミーインで大浴場があるというので大浴場があるところがいいと思ってのそこだったが去年オープンしたばかりだそうですべてがきれいだった、荷物を預けているうちにお腹が痛くなったのでトイレに籠もった。籠もり終えるとしばらくロビーのベンチに腰掛けて本日のSNS投稿活動をおこなってこれももう少し計画的な人間であれば予約投稿にすればよかったのだよなと思う。予約まではせずとも用意をすることはできたはずだ。でもここで自分の計画性の甘さを責めても仕方がないので投稿し、今日の仕事は終わりとする。そこから材木町のほうに歩く。

2月12日(日) 

宮古駅へ向かうバスは地図を見ると東へ東へまっすぐ走っているらしい。窓外の景色はすぐに山間のものになって、いくつものトンネルを通っていく。本日のSNS投稿をしようとするのだが電波はなくなったり戻ったりを繰り返して遊ちゃんは岸本佐知子を読んだりKindleを読んだりをして僕は原稿チェックを続けていく。ちょうど昨日可否館で思い出していた遊ちゃんがお経で笑っちゃった話が書かれていて草津に旅行に行ったときのことだ、そこを読んでいると「特にやることもなく、湯畑を眺めながら座って、遊ちゃんはやはり昨日さわや書店で買ったという『私を空腹にしないほうがいい』を取り出して、岩手弁で書かれた文章を岩手弁で音読した、初めて聞いた、音楽みたいだった」とあってこれも昨日の夜の平興商店で出た話だったからびっくりした。
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