読書の日記(12/19-25)

2022.12.30
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冬の高尾山は富士山だ、雑誌の撮影、指圧/準決勝、ゴールマウス、キーマカレー/整形外科、ホントのコイズミ、ダンダダンとワイズマンと岩波書店/吉祥寺、一日、吉田健一/百年、プルーストの部屋、インタビュー/シネフィルたちのつつじヶ丘、ダンダダン、1号店/契約更新、聖地巡礼、2020年のボーナストラック/ツイートの表示回数、肋間神経痛、Interview Writer/クリスマスの渋谷、『ニヒリズムとテクノロジー』、ヤマダ電機/ルンバ、SPBS、ニューポート、代々木公園/暇な初台、『コーチングのすべて』、2019年のブックファースト

抜粋

12月19日(月) 

おかずが完成するとご飯をあたためカレーをあたためお皿におかずを盛り付けてきれいだ、緑とかオレンジはやはりきれいだ、どれもキーマカレーと不思議とよく合う感じでおいしい。モロッコもがんばっていていい攻撃がいくつもあって息を呑む、カレーを食べる。だけどゴールマウスはこじ開けられない、「ゴールマウスをこじ開ける」という言い方があるがゴールマウスってどれのことだろうか。3辺のゴールポストと地面のラインでできる四角形のことか。だとしたらこの四角形はいつもは口を閉じているのか。だとしたら線上に立つゴールキーパーはその壁に塗り込められた死骸だろうか。ロッキーのことを思い出す。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』にそんな場面があった気がするがどうか。だからとにかくモロッコはゴールマウスはこじ開けられなくてそもそも最後の最後で打てそうで打てない、そういう場面が何度もあって決定力というのはこういうものかと思う、一点目のフランスの先制はすごい姿勢で的確なキックがされたすごいゴールだった、ああいうのが必要なのかと思う。

12月20日(火) 

ツイッターを見ていると「ダンダダン」という文字が見えてトレンドワードだ、明日は遊ちゃんと肉汁餃子のダンダダンに行く、先週調べていたらダンダダンの始まりが調布だということが知れてそれはもう、我々は行かねばならないね、ということになったため。妙に楽しみになっている。遊ちゃんが久我山に暮らしていた時分、どういう場面だったのか僕はひとりで久我山のダンダダンに行ったことがあった、その日は井の頭公園の動物園に行った、一度解散して僕はワイズマンの映画をどこかに見に行った、動物園の作品だった、2本見たかもしれない、どこでやっていたんだっけか、シネマヴェーラとかだったか、それから久我山に行ってダンダダンで餃子を食べながら本を読んだ、あれを読んでいた気がする、ラテンアメリカの、岩波書店の、グアテマラの、虐殺の、記録の本、でも違う本を読んでいたかもしれない。それを経て遊ちゃんの家に行ったそういう一日がダンダダンの日だったのではないか。それらは別の日かもしれない。ともあれトレンドにダンダダンが見えて不祥事とかだろうか、それは嫌だなと思ったのだが見たら漫画かなにかでそういうタイトルのものがあるようでそちらだった。餃子ではなかった。

12月21日(水) 

うどんだ、信号が変わったのでうどんのところに渡ったら「カレーうどん」の文字が見えて
「カレーうどんかあ」
と思った。跳ねて汚れる様が浮かんでのことだった。でもそこには10人ぐらいの待ちの列ができていたからそもそも僕には入る資格がなかった、だから諦めてなんとなくそのまま高架に沿って、知らない方向の吉祥寺、そちらに歩いていった、うろうろしたら一日があったので入って初めて来た、いくつか「これは」と思う本があってそのあとガレージのところに入ってワゴンにある本を見ていたら吉田健一の『覚書』という本を見つけてこんな本の存在は知らなかった、挟まれていた帯には「人生と文明をめぐる十二の断章」とあって吉田健一によるそんなものは当然読みたいよなあと思うので買って、時間がもうないのでコンビニでおにぎりをふたつ買って頬張りながら百年を目指した。

12月22日(木) 

ボーナストラックに着くと獅子田さんが真っ赤な服を着ていていい赤だった、だいたいこういう色か黒かになっちゃうということだ、赤か黒か。スタンダールみたいな人だ。それでハウスのわきの階段を上がっておむすびさんの事務所に入ると契約更新みたいな時間。殿塚さんの顔は今日も若々しい。2024年4月末までの契約延長ということでもともとの契約から1年延びる格好だ、本来は3年ごとの更新だったはずだが最初の3年は感染症の影響で営業がままらない時期も長かったのでとりあえずどのテナントも1年延ばしましょうみたいな話だった気がする。延長とか更新とか言っても定期借家の契約というのは全部契約し直すみたいなことになるようで書類がたくさんだ、何度も多くてすいませんと言われるがゴム印があればへっちゃらだ、初めてゴム印を使ったのだがゴム印は便利なものだ、法人になってよかった瞬間ナンバーワンという心地。

12月23日(金) 

夕方に整形外科アゲイン。座って待っていると痛みがやってきて今なら点を押さえられそうな気がする。それで何度も脇腹に手をごそごそ差し込んで、ここだよな、ここだ、ここが痛みの点だ、と思って名を呼ばれるのを待つ。しばらくして呼ばれるとその点を押さえながら入り、先生がやっぱりそしたら注射かな、でもここまでは横のラインで考えていたんだけど縦のラインというのもあるかもしれなくてそこってつまり首からこうまっすぐ下りていった先だから、とそういう話を言うのを遮って先生、それはそれとして、いま僕は、点の場所が見えている感じがするんですよ、見てください、ここです! そうしたら処置室だ、そこに行ってまた点を指し示す、看護師がそこにペンで印をつける、その位置を見た先生が「そこはまさに肋間神経が走っているところだね」と言ったので正解を答えられた生徒の強烈な喜びが僕のうちに生じる。先生の期待に応えることができた! 優秀な生徒であれた! そのとろけそうな喜びのなかで注射を打たれた。

12月24日(土) 

遊ちゃんが着くまでどこか安定する場所にと思って見出したのは階段の裏みたいなところでそこだけ凪いでいて人通りが消える。寄りかかってSiriの話を読んでいると前方のベンチに座っている若い女の子二人組のところにサンタクロースの帽子と上着を着た男二人が近づいてきて、ひとりは40代、ひとりは20代という感じのコンビだ、40代がしゃべる役だ、こんにちは、クリスマスプレゼントです、と言って飴みたいなものを差し出している。女の子たちは大丈夫でーす大丈夫でーすと言うが男は「はい、サンタさん!」と言って飴を押し付ける。何度かの問答ののちに女の子たちは諦めてそれを受け取ってしまう。20代は無言でその様子をスマホで撮っている。飴を押し付けた男は飴を受け取らせると「もしよかったら、この人に、インスタグラム、交換してあげてっ!」と最後にやたら強勢が置かれた言い方をして、さらにもう一度同じ言い方で「交感してあげてっ!」と言う、なんだこれはと思う、気持ち悪くて意味がわからない。しかし女の子たちはそれはちゃんと断れるというか無言を通して拒絶した、偉い、男たちは諦めて退散する。残された女の子たちは受け取ってしまった飴をバッグに入れているが律儀なものだ。いつか舐めるんだろうか。やめとけよ。捨てなさいよ。もういいよ地面に捨てて。ところでSiriは「生きる意味ってなんなの?」という問いに対して13の答えを用意しているらしい。

12月25日(日) 

それにしても会計までが長かった、遊ちゃんは加湿器を見に行き僕はニヒリズムの本を読んで待った、ネットリンチの話。サッコという人が悪辣なジョークをツイートして大炎上したとの由。
サッコは、あのようなジョークをわざわざツイートする行為を通じて、彼女の方が自分たちより大胆に、自分たちほど遠慮をせずにツイッターを使っていることも見せつけていた。いずれにしろ、サッコのツイートはほかのユーザーに自分自身を振り返る機会を与え、自分たちにも罪があって贖罪が必要なことを思い起こさせただろう。しかし一方のサッコは罪を感じていないように見え、謝罪もせず、ツイートの削除もしない。そこで、彼女に罪を感じさせることがネットリンチの目的になった。自分が彼女のツイートを読んで体験した負い目を、彼女にも体験させてやりたかったのだ。 ノーレン・ガーツ『ニヒリズムとテクノロジー』(南沢篤花訳、翔泳社)p.388,389
このあとがとてもよくて「この状況は、誰かが待ち行列に割り込んだときに起こることと同じである」と著者は指摘して誰かの割り込みは人にふたつのことを気づかせる。「1つは、割り込みができるのだということ。もう1つは、割り込みなんて思いつかないほど、自分は列にきちんと並ぶように「よくしつけられている」ことだ」。ヤマダ電機の生活家電フロアの行列は誰も割り込みせずに秩序を保っていた、ずいぶん待ってやっと会計を済ませることができると遊ちゃんの加湿器見学の成果を聞いた、やっぱり田中みな実だということで田中みな実が言っていた象印の加湿器が一番よさそうとのこと、それは見るからに象印の電気ポットを思い出させるもので、なんというか、「これは加湿されるだろうなあ!」という期待を強く抱かせてくれるものだ。それに何よりフィルター掃除がないというのがすごい。
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