抜粋
11月14日(月)
ともかく長い時間を掛けてデータをつくっていた。週次の数字の推移はわかった、でもつまり、それってどういうことなの、どういう調子なの、薄い上がり方ではあるけれど上り調子だと思いたいのだけど、それはどうやったら確信できるの? 近似曲線というのが必要なものだったのだろうか、ここで僕は自分の知識の限界に簡単にぶつかるわけだが移動平均とかがそういうものっていうことでよいかな? ということにして移動平均で線を描いてみることにした、でも移動平均にしてもどういう幅の平均を取るのかだがなぜか6週だった、根拠がない。ともあれ6週ずつの移動平均が見えてそうすると薄く右肩上がりであることが示された感じがあって、それでそこから、この調子で右肩で上がってくれたらどうなるのかという数字を伸ばしていく、すると3月くらいで「ここまで来たらほぼ黒字になるのでは?」という数字(そもそもどこまで行ったら黒字になるのかもわかってないから大変な酷さだ)に成長することが知れて、
大丈夫大丈夫、このまま行けば大丈夫大丈夫大丈夫!
と部屋で大きな声を出した。
11月15日(火)
電車はよく混み合っていた。ドラッカーを開くのだが中巻の後半からの組織構造の話が全然ピンと来ない感じが続いていて頭に入らない。
体にひどい疲れを感じたので2日連続で銭湯に行く。風呂に入る前に喫煙所で煙草を吸いながら、「オッケーこれについてはクヨクヨ考えるのは終わり。これについてはやることは家に帰ったらお礼のメールを送ること、今自分にできるのはそれだけ、以上。だから次のことを考える」と考えていて見上げた男だ。切り替えができる男だ。ネクストアクションの男だ。阿久津・ネクストアクション・隆。これから俺のことは阿久津・ネクストアクション・隆と呼んでもらいたい。
だから風呂に入ると今日はお湯に色と香りがついていて黄色緑というか、それじゃ黄緑か、黄緑とは違う、黄色っぽい緑、テラテラとしたそういう色で匂いは懐かしい感じだった。じっくり風呂とサウナで体を温めながらギフト券の発売について考えていたらひとつまた考えが浮かんで、継続的に考えるというのは本当に大切なことだなあと思う。最近水風呂が冷たくなっている感じがあってこれが冬ということだろうか。
11月16日(水)
2時。『水平線』を最後に小説を読んでいなくて、やっぱりしばらく小説を読まないと頭が窮屈になるというか、感覚としてはただ物足りない感覚だけど、頭が窮屈になっていく気がする。小説ではないと広がらない頭の広がり方がきっとある。これはどうしてなんだろうか。フィクションが必要ということか。なぜフィクションが必要なんだろうか。誰かがこれを創造した、誰かがこれをでっち上げた、そこにある欲望への信頼、あるいは愛着、みたいなことだろうか。わざわざ作り話を作り上げる人間という動物の不思議さみたいなことを感じることが、僕の中に何かを生んでいるのだろうか。
とにかくこんな時間だけど小説が必要だと思い、『家の本』を寝床に持っていく。エクス・リブリスなんて一体どれくらい久しぶりだろう。装丁は変わらず緒方修一だ。
11月17日(木)
箱そばに行って昼飯。店に入る直前にポスターでかき揚げそばの写真を見たら、本当に簡単なもので、俺もあれ食べたい、となったのでかき揚げそばを頼んだ。山﨑颯一郎の記事と吉田正尚の記事を読みながら食べて敦賀気比高校出身のオリックスの選手たちだ。かき揚げそばはおいしいのでうれしい。希望と記憶、生きていくうえでより必要なのはどちらだろうか?
11月18日(金)
久しぶりに「ゆる言語学ラジオ」を聞きながら鍋をこしらえ、完成する直前に遊ちゃんから電話があった、食べながら話して明日は仕事は昼からだから午前中に『ドライブ・マイ・カー』のゴミ処理場と厳島神社に行こうかなとのこと。今日は牡蠣を食べた。遊ちゃんに阿久津くんは今日はいい日だった? と聞かれて、つい、いい日なんてないよ、と弱気なことを言い始めてしまって歯車が狂った。毎日切迫しながら、でもやりきれない自分のだらしなさにうんざりしながら、酒で何かを緩めて、それだけだよ、というような心地。
11月19日(土)
店じまい、ビール。ビール。ビール。帰ってコンビニでビールとビールとクリームソースのフェットチーネ。何で見たのかは忘れたがきっと何かで見てパスタを食べたくなったのだろう、それで買った次第。家に帰ると遊ちゃんが帰ってきていて帰ってきたのはついさっきだ。長丁場の大移動お疲れ様で、パスタを食べながらあれこれ話す。パスタもとてもおいしいセブンは本当にすごい。
11月20日(日)
初台までの電車で『マネジメント』の中巻を終えた。組織構造について書かれた中巻の後半は本当にずっと全然ピンとこない話で僕にはまだわからない話なのだろう、僕は『マネジメント』を終えたあとに「もしドラ」とか、あれ? 「もしドラ」で合ってただろうか。「もしもドラッカーが高校野球部のマネージャーだったら」? そんな仮定の話だったっけか。そんな転生みたいな話だったっけか。とにかくそのそういうやつ、ああいうやつを読んでみたいと思っていてそれがけっこう楽しみだ、そういうああいうやつはきっといくつかあるのだろう、いくつか読んでいくなかで、きっと大事とされていることが繰り返し出てくるから、ああ、あそこが『マネジメント』の肝なのねと、学び直していくことができそうな気がしている。