読書の日記(10/31-11/6)

2022.11.11
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月末の預金残高の恐怖/丸山珈琲、真楽寺、親密さ/キックオフ説明会、傷つきうる接客、『嘔吐』/発熱、焚き火の匂い、木登り/月例会、キックオフ、契約書の読み合わせ/紅芯大根、焚き火、フィードバックループ/Themselves、still、静かなスペースのキープ/ピザ、渋滞、アンチコン/額縁、NADiff、ハンズビー/『聞く技術 聞いてもらう技術』、キャラメルチーズテリーヌ、世界堂/好調、不安、11年、なんにもわからないままやってきた/オーケー、お誕生日会、プレゼント交換

抜粋

10月31日(月) 

デッキで焚き火をしていた時間を終えて部屋に戻って大人たちは長いテーブルのまわりに座って、酒を飲んだりお茶を飲んだりしながらのんびりとした状態で話していた。右側の壁はいっぱいに本の詰まった本棚で大きなスピーカーもふたつ置かれている、そこから音楽が流れている、全面のガラスが室内を映している、ちびっこたちは部屋の左側で棚を間仕切りにした遊ぶスペースでずっと仲良く遊んでいてYouTubeでお菓子の開封動画みたいなのやベーゴマのゲームのやつを並んで座って見ている。今日は「YouTubeを見ていい日」ということらしい。

11月1日(火) 

ご飯を炊いてキャベツと大根と豚肉の鍋をつくって食べる。スライスして最後に入れた大根がシャキシャキしていておいしかった。お腹いっぱいで遊ちゃんはすっかりダウンで今日は別で寝ることにした、僕はソファで寝た、タオルケットだけなので寒いかなと思って黒い厚いやつを着た、ソファで読む宮本常一はなんだかさっぱり頭に入ってこず、本と目の距離が近すぎたのかもしれない、姿勢が変われば読める具合も変わるものだ、しばらくするとやめにして寝ることにして寝た。すぐに寝付き、途中で汗をかいて暑くなって起きて黒いのを脱ぐとTシャツから汗の匂いが上がってきてそれが焚き火の煙の匂いだった。
煙の匂いをしっかり吸い込んだ黒いやつは、その翌日に嗅いだら匂いがなくなっていたから消えたのだと思ったがしっかり内側に残っていたということだ。

11月2日(水) 

途中で休憩を挟みつつ4時間話し続けてさすがに疲れた。一所懸命フヅクエのマインドみたいなものを注入しようとがんばったけれど先走ったところも多かったような気がして反省。榮山さんに挨拶をするべく店に寄るとちょうどテイクアウトのオーダーが続いていたので少しだけ手伝うと帰って遊ちゃんがプリンとアイスがおいしいと書いていたのでスーパーでプリンを2種類買って帰り、家の扉を開けると湯気の匂いがしてシャワーを浴びたところらしい、ちょうどたった今プリンのリクエストを送ったところだったの、と遊ちゃんが言ったから僕はほくそ笑みながらビニール袋からふたつのプリンを出したら遊ちゃんが「ひっ!」と言ってそんなに驚かせたかと思ったら驚いたのはリクエストした銘柄のプリンが見えたからだ。たしかにそれは驚く。驚かせられてうれしい。僕はビールを飲む。

11月3日(木) 

渋滞を抜けたらあとはスムースで家に着いたのは11時半とかで今日は夜番で2時くらいには初台に着いたのだったか、エクセルシオールで仕事。5時過ぎに行って壊滅的に暇な休日だったようだ、マキノさんと交代して前田さんの初日だ。チャイが出たのでレシピを見ると「作り方はジンジャーミルクと同じ」とあったのでジンジャーミルクのレシピを見ながらつくってもらって、それからコーヒー牛乳が出ていきなり大物というかドリンクの中でもっとも工程が多いから大変だ、でもとりあえずやらせてみることにしてやってもらって、そうしていると次に入ったオーダーもコーヒー牛乳だったのでこれは素晴らしい機会だ、最初のコーヒー牛乳を出し終えると今度は僕がやる、それを前田さんが見る、そういうターンでこの「まずやる、そのあと見る」は本当に有効な気がする。目の解像度が格段に上がるから。そうしていると6時になったので上がってもらってひとり。ゆっくりしたものだ。エクセルシオールでもやっていた本の読める日の振り返りシートの作成の続きをやって妙に集中できた。今週で一番捗った時間になったような気がして不思議なものだ。でもだいぶ大掛かりな作業という感じがあってけっこう頭を使って疲れる。全体の利用者数、売上、それを取るのと書店ごとの利用者数、見立てとの差分、それを取るのとでは用いるデータが異なってきてもっとスマートにできないかと思うがそのために必要なスキルはなんだろうか。

11月4日(金) 

ミーチング終え、開店の準備をし、朝ごはんをたらふく食い、開け。コンスタントにお客さんがあってうれしく、そしてチャイシロップやら何やらの仕込みを並行してやっていってほとんど座ることはないまま5時になって川又さんと交代で上がる。今年の誕生日はプレゼント交換をしてみようということになって僕は遊ちゃんが描いた絵を飾るために額縁をあげたい。たぶんウレシカで壁に飾られた絵を見たこともきっかけのひとつになっている。額縁的なもの、NADiffにないかなと思って行くと店のレイアウトが様変わりしていてすっきりしてかっこうよくなっていた。

11月5日(土) 

新宿に行く、人が多い、すぐにげんなりする、感知する世界をクリーンにするためにイヤホンをして13&Godを耳に注入して久しぶりに聞くこれはやはりとてもいい。アンチコン。一時期の、というかけっこう長い時期の僕のヒーローの一人。アンチコンはレーベルだから一人じゃなくて一団か。僕のヒーローの一団、というのも妙だ。だからとにかくそれをバックグラウンドのミュージックにして新宿を歩いて世界堂。
薄いものを挟む額縁は4階らしく、確認しなかったが薄くないもの、油画とかだろうか、そういう用の額縁はまた別フロアということだ、すごい世界だ。だから薄いものを挟む額縁フロアに行くわけだがまるっきり未知の世界だ。額縁はたくさんある、無数にある、いくらでもオーダーメイドできる、OKそれはわかった、でも違いはわからない、サイズが違うことしかわからない、色が違ったり木も違ったりするのだろうしそれが違いなんだろうけどその違いを違いとしてうまく検知できない。うろうろする。四つ切、八つ切、桜かまぼこ、三々、アイナ、太子、大衣。

11月6日(日) 

西荻窪はうれしい数字。初台は微妙。なかなか全部がうまく行く日というのはないものだ、難しいものだなと思い、ワインを飲み、『聞く技術』を読む。
重要なことは、心のなかで一人ポツンといるためには、外の現実で手厚く守られている必要があることです。(…)
現実的なサポートがあって、心が脅かされていないときに、僕らは心の個室を手に入れることができます。
前章にも出てきたウィニコットは、これを「ひとりでいられる能力」と呼んでいます。
ほら、電車の中で読んでいるときみたいな感じです。本当はまわりに人がいるけど、それでも一人でいられる。
でもね、それって、まわりが自分に危害を加えてこないとわかっているからですよね。周囲が包丁を握りしめている乗客ばかりだったら、たとえグリーン車に乗っていたとしてもゆっくり本を読んだりしていられません。
孤独の前提は安定した現実です。
逆に言うと、現実が不安定で、厳しい状況のとき、人は孤立に追い込まれやすくなる。 東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術』(筑摩書房)p.90,91
それから「安心って、結局のところ、予想外のことが起きないという感覚です。日々の生活で予想と同じことが起きる。変なことをだれもしてこない」という言葉もあってとにかくフヅクエの話としてこのあたりは読んでいる。今の引用のところなんてぴったりフヅクエの話だ。本当はまわりに人がいるけどそれでも一人でいられる、それってまわりが自分に危害を加えてこないとわかっているからですよね、周囲がおしゃべりやバチバチ仕事をしている客ばかりだったら、たとえカフェにいたとしてもゆっくり本を読んだりしていられません。安定した現実が、孤独の時間をサポートする。孤立というのはまさに多分『本の読める場所を求めて』の最初のほうで描いたカフェでの状況で孤立は周囲の客のありかたや店の人間のありかたでつくられていく。あなたが心ゆくまで孤独の時間を楽しめるように、僕たちは環境を整えるし状況を律していく、全力でできる範囲のサポートをする、というそれがフヅクエだ、ということだ。
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