抜粋
8月8日(月)
僕らとお客さんが、「案内書き」という、個の外にあるテキストを介してこそ恐れなく気持ちよくコミュニケートできるように、僕たち自身もマニュアルというテキストを介して問答する。
見解を話すのではなく、マニュアルに話させる。見解を正すのではなく、マニュアルを正す。
これは「質問箱への対応」というマニュアルに書かれた文言だ。墓碑には「Manual is Justice」と刻みたいくらいだ。そういえば今どのくらいの項目があるんだろうと見てみたら680あった。いい感じだ。
ただ、ただというか、マニュアルのありようみたいなものをちゃんとみんなに伝えられているのだろうかというのは自信のないところで、「現時点での正解は」というところをもっと強調したほうがいいような気はする。これは絶対的な正解なのではなく、あくまでも暫定的なもので、すべては暫定である、それはいつでも変化する姿勢を持ち続ける、このことをちゃんと言いたい。『現代思想入門』で脱構築の話のところで「仮固定」という言葉が言われていたが近いような気がしていて、「ひとつの定まった状態ではなく、ズレや変化が大事だと考えるのが現代思想の大方針なのです」、フヅクエのマニュアルの大方針だ。「何か「仮固定的」な状態とその脱構築が繰り返されていくようなイメージでデリダの世界観を捉えてほしいのです」、そういうイメージでフヅクエのマニュアルを捉えてほしい。「仮固定的同一性と差異のあいだのリズミカルな行き来が現代思想の本当の醍醐味である」、その行き来がフヅクエのマニュアルの醍醐味である。
8月9日(火)
なすと豚肉と大根おろしをのせた冷たいうどん。チンしたなすと茹でた豚肉をめんつゆと水と生姜のつけ汁でつけて、うどんに盛っていってその汁を最後に回しかけるというそういうやつ。今日も「ゆる言語学ラジオ」を聞きながらつくった。ソシュール回で楽しい。ラングとかパロールとかシニフィエとかシニフィアンとか、大学1年生とかのときになんの授業だったかで習ったなあ、と思ったけれど今こうやって書きながら脳裏に浮かんだのは無印の無地の単行本サイズのノートで読書ノートとして使っていた、そのノートにそういう言葉を書いた気がする、日本人の、新書、講談社現代新書、橋爪大三郎『はじめての構造主義』だ、これを読んだ記憶がある。授業で学んだというのはもしかしたら記憶違いかもしれない。それにしても今大学生だったら、本当に嬉々として講義を聞きまくるだろうなと思う。
8月10日(水)
ボーナストラックに着くとミストシャワーが設置されていて気持ちいい。強いのか、地面がけっこう濡れているし通るとちょっと濡れる感じもある。メガネが気になる。それでB&Bに行って伊藤さんと打ち合わせ。キャンペーン一週間を振り返り、日毎の数字を打ち込んでいってふむふむと言い合う。特典の対象の方の4人に1人がフヅクエに来てくれている日とかもあってこれは打率が高い。まあそれじゃあ引き続き、となって話が済むとそこからはマネジメント的なことに関して伊藤さんに教わったりする時間で楽しい。冷たい麦茶を飲みながら話す。
終えてぐるっと本を見てから広場側の出入り口から出ていくと、今そこを出ていった人がそのまますたすたと広場を横切りフヅクエに入っていくのが見え、やっぱこれはめちゃくちゃいい動きだなあと思う。この流れをつくりまくりたい。これは幸せな遊びだという確信があるから。
8月11日(木)
セブンでハンバーグとひじきのおかずを買ってひじきのおかずを買ったのは今日仕込まれていた人参のおかずがひじきが入っていておいしかったその影響だろう。それで帰り、それらとキムチを盛って晩ごはん。「ゆる言語学ラジオ」では今日もソシュールの話がされていて前回聞いていたときのソシュールの講義を聞いていたのは実はたった6人で、ソシュールの本を書いたのはそこにはいなかった人たちで生徒たちが取ったノートをもとに書いた、書いた人たちは後年、講義に出席しなかったことを深く後悔したという話がじわじわとずっとおもしろい。用事でもあったのかな。
8月12日(金)
ひいひい言いながら働いてこんなふうにタイトに下北沢で働くのは久しぶりの感覚でうれしい。4時半に榮山さんが来てしばらくすると出、僕はすでにクタクタになっている。吉祥寺を経由して西荻窪に。今日で学んだ。東西線と書かれているやつは東西線直通の総武線ということらしくそれがどこで直で通じるのかというと中野のようだ。だから中野までは総武線だから乗っていいやつだということだ。これでひとつクリアした感。もうひとつは対岸のオレンジ色のやつだ、つまり中央線だ、吉祥寺に停まる中央線は、西荻窪にも停まるのか、停まるのと停まらないのがあるのか、僕はまだそれを知らない。
8月13日(土)
昼過ぎまで寝て午前中に一度バケツを引っくり返したような降雨があったそうだが今は落ち着いている。今日は遊ちゃんとタコパ。雨雲レーダーのやつを見るとあと20分で降り始めるとあるから早く出よう、成城石井に行ってタコミートの粉のやつとかキドニービーンズとかアボカドとかライムとかを買い、また別のスーパーでエビと挽き肉とヴィーニョ・ヴェルデとコロナビールとかを買う。家に帰るとライムをカットしてコロナを開けて飲んで、久しぶりに飲んだコロナは軽くて爽やかですごくおいしいものだった。
それでワカモレ、玉ねぎの代わりにきゅうりを使ったサルサ、キドニービーンズを入れたタコミート、エビを塩とにんにくで味付けしたやつをこしらえ、あと冷蔵庫にあった枝豆も茹でた、それからパクチー、チーズ、ライムをそれぞれお皿に入れて最後にトルティーヤチップスと4つにカットしてフライパンで温めたトルティーヤをたっぷり用意し、立派なタコスパーティーの食卓が完成した。
8月14日(日)
『ことばが劈かれるとき』を読みながら出勤。今日は下北沢の昼番。休日の下北沢のシフトに入るというのはものすごく久しぶり。昨日はどの店も当然というのか獰猛なまでに暇だったようで、数だけ見るとそう思う、だけど伝票を見るとその数少ない人たちが過ごしていってくれたそれぞれの時間が感じられてやはり愛おしい気持ちになる。下北沢はテイクアウトも少ないが出ていて、どういう状況で広場でカレー食ってたんだろうと思ってウケる。今日はスーパーで2枚入りの超熟を買ってきたのでマヨネーズとチーズでトーストしてバクバク食う。たまに食うトーストはうまい。