読書の日記(7/18-24)

2022.07.29
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売上目標と現実/サウナ、水風呂に入る/『正反対な君と僕』/フロートメニューの撮影/親切とカルト/プルースト、どうしてもそれを好きになりたくなり、それを好きになる/西荻窪、行き方、しゃべり場/『ウトヤ島、7月22日』を見る夜中/『ショットとは何か』、遺体の滑走/まだ誰にも知られていないと考えること/『組織デザイン』、人情味/B&Bの10周年/

抜粋

7月18日(月) 

それでお湯に入るともう一度サウナに入り、汗をかく。今日も長座体前屈をする。僕の心はもう決まっているようでこのあと全身で水風呂に入るつもりらしい。一日一歩のはずが飛び級だ。図に乗ってしまったのか、いいのか、大丈夫だろうか。横に誰か友だちがいてくれたらな、と思う。俺が全身で水風呂に入るところを見守ってくれる人がそばにいてくれたら。でもあいにくひとりだ、ひとりでもできるもん。そう言い聞かせ、サウナを出る。そしてまた足にぴちゃぴちゃ水を掛け、下肢を入れ、そしておそるおそる、上半身も沈めていく。まだ心臓まで入っていないのに何か肺が狭まるような気配があって、頭がアラートを発しているのを感じる。これはやはり危険なことなのでは!? 無理はしないほうがいい。機会はいくらでもあるし、やはり友だちに見守ってもらいながらやるべき行為なのかもしれない。心理的安全を確保しながら水風呂に入る必要があるんじゃないか。

7月19日(火) 

ツイッターを見ていたら流れてきた漫画の広告に目が止まって「私、谷くんのこと好き。片思いしてんの。で昨日、一緒に帰ろうって、私が誘ったの。それって、何か、おかしい……?」というセリフとその絵がなんだかとてもよくて、うわあ読みたい、と思ってアプリを入れて読んだら大感動。『正反対な君と僕』というやつだった。鈴木も谷くんも周囲の人たちもみんないい。謎のガパチョがおもしろい。僕の目には涙。

7月20日(水) 

今日は夕方になるとどんどん疲れと眠気がやってきて、ちょっと昼寝する、と言って寝室に行ったのが5時前くらいだった、それで『ショットとは何か』を読み始めて若かりし日の蓮實重彦が下北沢や笹塚の映画館に通っていた話やドン・シーゲルの『殺し屋ネルソン』がたいへんな作品だという話を聞き、それで眠気がやってきたので本と目を閉じた。次に目を開けたら9時半だった。本当によくない。目覚ましがてらで遊ちゃんと外に出てスーパーに行って豚肉とかを買って帰る。それから部屋にまたこもって仕事をする。ひきちゃんがデザイン案を上げてくれたのでいくつかリクエストのコメントを書いたり、明日の提案資料を完成させたり、それで12時だ、豚肉買ってきたけど今から料理とか面倒過ぎると思ってコンビニに行って冷凍の牛皿を買ってきて温め、あとはおかずがまだいろいろあったので盛って晩ごはん。それからまた仕事で2時過ぎまで。完全にリズムがおかしくなった。

7月21日(木) 

電車に乗るとプルーストを開き、語り手は道行く少女たちを眺め、かわいいと思うとどこかに連れ込みたい欲望に駆られた、しかしためらいや気後れに邪魔されてなかなか行動に移せなかった。
そこで、私は菓子屋兼飲物屋カフエ=バーにはいり、つぎつぎにポルトを七、八杯傾けるのであった。とただちに、私の欲望と行動とのあいだを埋めることの不可能な距離というものがなくなって、アルコールの効果が、その二者をむすびつける一本の線をひくのだった。ためらいとかおそれとかの余地はもうなかった。その少女は私のところまでとんでくるような気がするのだ。私は彼女のところまで行き、私の唇からはひとりでにこんな言葉が出てくるのだった、「あなたといっしょに散歩したいのですが。断崖の上に行ってみませんか? あそこでは誰にも邪魔されることはありませんよ、うしろに小さな森があって、その森が風除になっている組立ハウスがいまあいているんです。」人生のあらゆる困難はとりのぞかれ、私たち二人の肉体のからみあいの障害になるものはもう何もないのだ。すくなくとも私にとって障害になるものはもうなかった。 マルセル・プルースト『失われた時を求めて〈6 第4篇〉ソドムとゴモラ 1』(井上究一郎訳、筑摩書房)p.408
怖いよ!

7月22日(金) 

で、今日考えようとしていたのは8月以降の目標値をどうやって実現していくかということだった。現状があって、現状の通りに進んでいったときに出てくる目標との乖離があって、まずそれを確認した。大きな乖離だなあということがまず知れた、その乖離をどんな施策を打って埋めていくのか考えていく。これをやって月いくらになって、これをやったら月いくら、まだ少し足りない、そうしたら、この数字をいじって、ほら達成! みたいな感じで、それなりに根拠を持ちながら見立てているつもりだけどかなり恣意的というか、こちらの都合に合わせて現実を捻じ曲げていくようなそういう感じがあってどこかウケる感じがあった。晴れて黒字化達成の瞬間だった。

7月23日(土) 

ちょうどいいところまでで切り上げてB&Bに入ると中ではトークイベントがおこなわれているようだ、レジのところに伊藤さんとスタッフの方がいて、おめでとうございます、と言った。遊ちゃんが棚の向こうから現れてもう手にビールを持っている。ほんとに素敵ないい店、としきりに感動している。塚崎さんと宮崎さんの姿もあった。なんだかいい夜だな、とすでに思っている。僕もビールを買ってうろうろして、トークは今は内沼さんと佐久間裕美子さんで佐久間さんが元気。外国文学の棚の前で本を見ながらトークを聞くでもなく聞いていると、突然感動がやってきて、ちょっと泣きそうになった。ほんとに素敵ないい店、と思う。BGMのなさがそれを思い出させたのだろうか。2020年の春の最初の緊急事態宣言の時期、どこもかしこもが閉まっていた時期、あれはどういう日だったのか、今日はスタッフがいるときは入っていいよ、みたいなアナウンスがあってそれを聞きつけてB&Bに入った日があった。久しぶりに入る書店という空間は最高で、優しくて、安心できる場所で、胸いっぱいなりながら本の香りを吸いこんでいた。あのときなんでそうだったのかひきちゃんと本間くんも一緒で、外国文学の棚の前にいる本間くんと「本屋さんは最高ですねえ」と感激しながら潜めた声で話した、あのときも音楽は掛かっていなかったはずだ、あの瞬間と、今のこの時間がオーバーラップする。今はだからリアルのトークイベントがおこなわれている。2年前のあの静かな静かな時期と、10周年を祝う今晩のこのコントラストというか。

7月24日(日) 

6時に山口くんがやってきて7時過ぎに交代し、エクセルシオールに。9時まで仕事。今日もよく働いた。帰りも働きながら帰る。家に帰ってまた働き、シャワーを浴びて体を温めると「ゆる言語学ラジオ」を聞きながらゆっくりストレッチ。現在形は習慣、現在完了は今の自分に関係していること、過去形は過ぎ去ったこと、今ある姿からは距離があること、だから過去仮定は過去形になっている、みたいな話がされていて激しく面白かった。豚肉と玉ねぎで牛丼的な煮物をつくり、遊ちゃんが今日こしらえたオクラのおかずとズッキーニのおかずとおかひじきのおかずもいただく。それぞれ「おくらのジュー」「ズッキーニのどんどん」「おかひじきのしゃきしゃき」というのが名前だそうで、おくらはすりおろした玉ねぎを甘く炒めたものと絡めているのだろうか、ズッキーニはにんにく、オカヒジキはツナマヨ、どれもめちゃくちゃおいしかった。珍しく野球の記事を読むのではなくそのままラジオを聞きながら食べたのだがよほど楽しんでいたということだろう。
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