読書の日記(4/4-10)

2022.04.15
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高田馬場の記憶/早稲田松竹、おじいさんと一緒に映画を見る日、『ピクニック』『やさしい女』/新宿、ルミネ、ブックファーストがちっちゃくなってた!/水澤さんひとり立ち/マイナンバーガール、調布市役所/フヅクエ株式会社、社員誕生/プランク効果/箱そばの変化/Strategy Choice Cascade、まるで知らない競技をやる感じ/切実にたどり着きたい状況は、どんなものなのだろうか/夜の散歩、味の素スタジアム/B&B、『語源辞典 形容詞編』『ある無名兵士の変遷』『吉田健一短編小説集成』『現代思想入門』/5Forces、3C分析/遊ちゃんの音信不通/日記祭、トークイベント/インナーサークルとアットホーム/調布飛行場、野川公園/コンシャスマーケット、ワピリッツ、レモンサワー/完全試合、岩手の誇り/

抜粋

##288 ##4月4日(月)  映画館を出ると雨は変わらない勢いで降っていて夕方だった、新宿に着くとルミネの6階とかのブックファーストに上がって今日どうしてなのか佐藤尚之の『ファンベース』を読みたいと思っていて前に五十嵐さんに教わったやつだ。あるかなと思って行ったのだがブックファーストがちっちゃくなっていた! ナッツとかドライフルーツとかの量り売りの店ができていたがあそこは書店スペースだったところだろうか、スタバは変わらずあったがあの場所だったっけと思う、スタバの場所が変わるとも思えないがブックファーストに囲まれていないスタバは不思議な見え方だった。とにかくブックファーストはずいぶんな縮小に思えた、小説の棚数も先週のツタヤと同じくらいでほんのわずかだった。ちくま新書の棚を見たが求めていた本はなく、まあしょうがないと思って出て初台に。エクセルシオールに直行して仕事。
##4月5日(火)  お昼になってご飯を炊いて納豆とキムチ炒めのやつでお昼ごはんを食べ、満腹になったら一気にとろんとした。考えることはたくさんあっても今日絶対にこれをやるみたいな手を使う作業が少ないとすぐに怠けに誘われる感じがあってお昼寝の誘惑だ。だってほら、22日からちゃんとした休みを作っていないし、ほらしょうがないでしょ、みたいな気持ちもあってそれを言い訳にしてずっと半端に働くつもりだろうか。等々考えるが布団にゴロンとしてしまったのは3時半くらいだったろうか、1時間のアラームを掛けて寝たら5時15分くらいになっていてここで起きられてまだよかった。
出、初台に。今日も水澤さんを覗きに行くことにしてのそれで7時まではマキノさんがいるから9時過ぎくらいにちょっと顔を出したらなんかいいタイミングかなと思いそれまでエクセルシオールで仕事。外だったら昼寝しないで済むというか昼寝に関しての意思の力は必要なくなるのでそれはやはり便利だと思う。ここ数日そうしているようにエリオット・スミスを聞きながら働いた。ちゃんと働けてよかった。
それで9時過ぎに行き、すると「お、ちょうどいいところにやってきたな」という顔で迎えられ、外に出てそのときどきのメニューの書き換えの指南をして、スタッフ全員にInDesignを操作させようとするというのもどうなんだろうなと教えながら思う。今までよく破綻なくできているなとも思う。
##4月6日(水)  それからまた手を動かす仕事を終えると長いあいだ考え事。やっと大地から宿題として出されたロジャー・マーティンさんのフレームワークでなんか考えてみたらというやつを直視して、でも見てみてもなんのこっちゃわからない、今日は結局Jane's Addictionは聞いていなくて久しぶりにXenia Rubinosを聞いていてやっぱりこの人の音楽ものすごく好きだ、ともあれRogerでMartinだ、「Winning Aspiration」「Where to Play」「How to Win」「Must-Have Capabilities」「Enabling Management Systems」、なんだろうこれはと思う、それで調べたら都合のいいブログが見つかってこれはStrategy Choice Cascadeというものらしい。それはP&Gとかで使われる戦略立案のフレームワークというものらしい。500円の有料記事だったがすがりつくように購入して、解説をふむふむと読んでやっと何をやるものなのかわかって、でもそれぞれをどういうふうに考えたらいいのかわからないというか、え、何これ突如めちゃむず問題解かされる感じ、みたいな感じというか、まるで知らない競技をやる感じがあって、なんというか、わからなさがすごくてむしろ面白い気持ちになるようだった。とりあえず今朝みんなに伝えたようにまずは来たるべきを立てるんだよ、ということで「Strategy Choice Cascadeをつくる」というプロジェクトをつくって5つの段階それぞれを考えることをタスクとして設定した。だから今日はまずは「Winning Aspirationを考える」というタスクになって勝利の憧れだ。ウイニングアスピレーション、ウイニングアスピレーション、と考えたがやっぱりわからない。苦し紛れに書いたのが「読書専門店という市場を創造し、トップシェアを取る」という言葉で、本当かな、と思う。果たしてフヅクエはどこまでやれたらいいと僕は思っているんだろうか。切実にたどり着きたい状況は、どんなものなのだろうか。足元の、ちゃんと店を立て直す、ということ以外今はあまり考えられなくて、でもこの500円のブログの他の記事で間違った戦略の考え方が紹介されていてその中に「現状の最適化を戦略と考える」というのがあってまさにこれだ。でも、じゃあ、なんだ、なんだろうかな、「5年後までにフヅクエを10店舗にする」とかだろうか。いいかもしれないけど、どうしても、なにがなんでも、10店舗にしたいだろうか? そう考えると答えに窮する自分が明確にいて、「10店舗にならなかったら敗北した気持ちになる?」と問われたら、きっとならないだろうな〜、と思う。考える取っ掛かりがわからない。あるいはもう取っ掛かりは実は掴んでいて、ここで粘り強くああだこうだ考えることこそが求められていることなのかもしれない。
##4月7日(木)  それで催しのないスタジアムは薄暗くて、薄暗いどでかいものが目の前に静かに横たわっている、僕はすぐに「またここに来たい」と思った。少し上がっただけだが空がずいぶん広く、暮れつつあるそれはいい色をしていた。コンコースからは桜の並木が見下ろせて、思ったよりも高い場所なのか手すりから身を乗り出して見下ろしたらお腹がひゅっと冷たくなった。
地図を見るとここを向こうに行くと武蔵野の森公園に行くようだ。なぜか僕は武蔵野の森公園に行きたいと前から思っていたから行きたいと言ったが地図だと近そうに見えるけどずいぶん遠いんじゃないかと言われてそうなのかもしれない、たしかに地図をさらに見たら武蔵野の森公園まで行ったらもうすぐに野川公園で、野川公園というのはもう三鷹だから、調布市と三鷹市と小金井市の境だから、それはたしかに遠そうだ。なので近くに見えるやはりどでかいスポーツセンターみたいなところまで行くことにしてそれにしても静かだ。今日はどの施設も何も稼働していないのだろうか。スポーツセンターみたいなところの左にあった建物もひっそりと暗くなっていて、そこを抜けるとAGFフィールドという陸上競技をやるところだろうか、そういうところがあってやはり真っ暗なひっそりとしたそのフィールドを柵越しに見てそれだけでも気持ちがいい。戻ってさっきの暗くなった建物のフロアマップを見るとそこにはプールや武道場があるらしい、屋上があることが知れたので屋上に上がってみた、新しいエレベーターの匂いがした、上がったがしかし屋上が開放されているのは17時までのようで残念だ、2階がプール、1階が武道場っぽく、さっきいたのは4階に該当するらしくて道理で高かった。なんとなく2階まで下りてみたらエレベーターから出た途端に遠くにいる職員らしき人がいらっしゃいませ的なことを言って何人もこちらを注視している。用のない人が来ることは想定されていない場所だったのかもしれない。そそくさと1階に下りて、また4階のコンコースに上がって元の道に戻っていく。楽しい時間だった。広いというのはそれだけでものすごく力を持つものだなと思う。
##4月8日(金)  夜になってB&Bに入った。タクラムのフェアを見てみたかった。なんだかずいぶん久しぶりにB&Bに入った感じがあって入ったらとても気持ちが落ち着いた。こういう本を見ていたい、という気持ち。安らぐ。2020年の春の、書店もずっと閉まっていたあととても久しぶりに入ったのがB&Bだった、あのときに感じた体中に広がっていく安心感みたいなものを思い出す。それでフェアのところに行って「これもデザイン!?」というのがフェアのタイトルだった、選書のコメントを読みながら眺め、『語源辞典 形容詞編』という本がずいぶん気になったので取った。それから後ろを振り返って文化人類学とかのところを見ていてここのところまた『ソウル・ハンターズ』を読みたいという気持ちが起きてあれはものすごく楽しかったんだよなと思う、日比谷のシャンテの1階のカフェみたいなところで読んだ記憶が蘇る、それで見ていたら『ある無名兵士の変遷』という古めかしい感じの現代企画室の本が目に留まり、インディアス叢書だ、副題に「ゲリラ兵、軍人、修道士、そして人類学者へ」とあって面白そう。センデロ・ルミノソ、懐かしい響き、ペルーの話ということもあって今ちょうど『ケルト人の夢』がペルーだから、ペルー気になると思ってそれで取った。奥付を見たら去年の刊行で、現代企画室はかっこいい。そのまま小説のほうに進むと吉田健一の短編小説集があってすぐに読もうとは思わないけれどいずれ吉田健一をまた摂取したくなる日はやってくるのだしと思って取り、最後に入り口近くにあった千葉雅也の『現代思想入門』を取って会計。なにか一冊と思って入ったらこの有様だが、こうやって本を買うという遊びをしたかったんだなと思う。楽しかった。
##4月9日(土)  話を聞きながら僕は怖いなと思いながら僕は僕で怖い思いを持っていて遊ちゃんと連絡がつかなくなっていた。「楽しい」の語源は「タ(手)ハヌ(跳)ハナス(放)」だと昨日語源の辞典を買ったあと遊ちゃんに送って以来ふたりのあいだで「タハヌハナスィ」が流行っていて昼頃「タハヌハナスィ?」と送ったら大渋滞でまだ着いていないと返ってきた。遊ちゃんは仕事で千葉の牧場に行く予定だった。それで4時ごろ冗談みたいな感じで「もう着いた?」と送ったら返事がなく、7時ごろ「さすがにもう着いた?」と送っても返信がないままだ。さっき電話を掛けたがLINEの発信のときの音が嫌いだ。電話を掛けるのはだいたい何か心配しているときだから。電話も出ず、Slackも一向にオンラインを示す緑丸がつかない。けっこう心配が募っていって「千葉 バス」とかで検索したりして嫌な検索だ。
それで不安を感じながら『ファンベース』を読みながら電車に乗り、コンビニでビールを買って帰った。無人。今は11時。飲みに行ったならこの時間であればまだ心配はしないけれど、朝7時に牧場に行った人が帰ってくるのは夜7時くらいのものだと思っていたから心配で、どうしたらいいのだろうと思う。それでカンナちゃんに「今日遊ちゃんと連絡取ったりとかってしてます?」とメッセージを送ってふたりは毎日やり取りしている。すると朝10時ごろしたのが最後でさっき送ったやつは既読にならないとのこと。心配。
##4月10日(日)  遊ちゃんは眠って、僕はご飯を炊き、そして焼きそばをつくった。焼きそばはうまい。それから『ファンベース』を読み終え、ここのところずっと内部のことというか、マネジメントだとか仕事の仕組み化だとか、そういうことばかり考えてきたし手を動かしてきちゃったけれど、もっともっとお客さんの体験の質を上げることに注力しないといけないよなと思うと同時に、ここに書かれていたことの中で無意識にやってきたこともけっこうあって、お客さんを向くことに関して、けっこう間違っていなかったなとも思った。
2時前に布団に入って『ケルト人の夢』を開くと「彼は祖国のために、何世紀も続く奴隷状態を終わらせる反乱を準備することに完全に没頭したくてうずうずしていた」とあるのを見て僕は店を立て直すことに完全に没頭したくてうずうずしているなと思う。船上でうずうずしてから何年後だろうか、ロジャーは看守と話している。
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