読書の日記(3/7-13)

2022.03.18
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『親密さ』、弱さ、自信/『本当のような話』、与えるというもの/飲酒はビール1缶/プランクチャレンジ/『21世紀のチェーンストア』、根本的な人間としての生きざまの選択についてサジェッションを提起する本/「ふんだんに」/チェーンストアの巨人、「唐あげニワトリ」/人身事故の朝/ドトール、大勉強の男/ベルンハルトに目を輝かせる酒井さん/『フランチャイズシステム構築マニュアル』、ザーの務め、ジーの儲け/見ることと見られることの非対称性/プランクと腹筋/3月11日の日記/青のこと、土と青/誰かが覚えた痛みについて/『親密さ』と心理的安全性/

抜粋

3月7日(月) 

見て以来毎日『親密さ』のことを思い出しながら暮らしていて駅まで歩きながら店員1と2を演じた二人の顔を思い出していた。稽古のときの彼らの顔は不思議と印象に残る強さで弱さこそが武器なんだというのはまさにこういうことだったのかもしれないと思う。僕はフヅクエという店での接客において弱さとか遅さとかぎこちなさこそが重要だと、今だったら水澤さんとか入ってきて間もない人と一緒に入るときによくそういう話をするそれはもしかしたらこれも『親密さ』の影響があったりするのだろうかとふと思って映画を見てそんな学びとか気づきとかを得たいわけじゃないけれど否応なく得てしまうものはある。なんせ今回は僕はコーチングとかマネジメントみたいな部分で、わあ、参考になる、と思いながら見ていてそれは最初に二人が橋を歩くそれは口論の場面で自信を奪うのではなく与えることについて話されていて我が身を振り返っていた。

3月8日(火) 

起き、今日は何を読みながら電車に乗ろうと床に並んだビジネス書を見る。『フランチャイズシステム構築マニュアル』が目に入って手に取るがすぐ戻し、それから『21世紀のチェーンストア チェーンストア経営の目的と現状』を開いてみると「人の一生は」と始まって「その人ひとりだけのかけがえのないものである」と続いて「間違えた生き方をしては、とりかえしがつかない一度きりの人生だからである」とあって言うまでもなく「間違えた生き方」という言葉にイラッとしたのだがしかしこのタイトルでこの書き出しってこれは一体どういう本なのだろうと思ったらしく今日はこれにした。
雨が少し降っていた。傘を開いて駅まで歩き、ホームでまた本を開くと「では、どのような職業や職場なら、すばらしい、生きる値うちのあるものになるだろう」とあって「生きる値うち」という言い方にイラッとしたのだが
その根本的な人間としての生きざまの選択について、サジェッションを提起するのが本書である。 渥美俊一『21世紀のチェーンストア チェーンストア経営の目的と現状』(実務教育出版)p.ⅰ
『21世紀のチェーンストア』がまさか根本的な人間としての生きざまの選択についてサジェッションを提起する本だったとは。

3月9日(水) 

店に着くと入り口の横のソファに酒井さんの姿が見えて入ると厨房に敷野くんがいる。敷野くんとちゃんと話すのは初めてで気持ちのいい話し方や聞き方をする人だった。3人で今後の話とかをして話が終わるとビールを一本もらった。飲み飲み本棚を見上げると『消去』があって『推敲』があって『昏乱』があってタイトルだけでベルンハルトだ。『昏乱』がもうすっごく面白くて、と酒井さんがすごく純朴なきらきらとした目で言ってそれがなんだかすごく面白かったので大笑いした。そんな爽やかな笑顔で述べられるようなたぐいの面白さではないでしょ、という愉快さ。『骨を引き上げろ』はそんなに面白かったんですかという話になってそれでベルンハルトの並びにあったジョン・ウィリアムズの『ブッチャーズ・クロッシング』が目に入って似た感触かもしれないと思った。克明に力強く情景や運動が書き込まれている感じ。

3月10日(木) 

食べているとマキノさんから連絡があって電車に乗ったということで思ったよりも早かった、レロン・リーと落合博満の記事を読むのを途中でやめて急いでそばを食べて出て新宿駅の待ち合わせは難易度が高い。いくらか手間取った末に京王新線の改札前で落ち合って京王線の定期券売場に行った。いくつかの変更の手続きみたいなことで年の瀬にマキノさんの通勤定期を買ったときに名前はマキノさんの名前で生年月日や電話番号は僕のやつにしていてそれは名前くらいは俺もわかるけど生年月日や電話番号なんて調べないとわからないし調べずに空で言えたらちょっとどうかしている、それでそれを調べるのが面倒だったからで、それにこんな情報は使うことのないどうでもいいものだと思ったからだったのだが全然どうでもよくなかった、何か変更しようと思ったときに本人確認が不能な状態だからこうやって仕事終わりに来てもらって二人で窓口に行かなければいけなくなった。窓口の方の名前が僕と似ていてそれをマキノさんが僕に教えようと「名字が似ている」と言うのだが音がとても聞きづらい環境で僕は「幼児が寝ている」に聞こえて窓口の向こうの事務所の中に職員の子どもが寝ているスペースがあるのかと思ってそれはいいなと思った。

3月11日(金) 

ビールの次は遊ちゃんを真似してレモンサワーを頼んでみたらかなり硬派なレモンサワーで甘みはゼロだ、ぶつ切りにされて凍ったレモンが入っていてそれを溶かしたり箸でつついて「風味よ溶けろ〜」とやったりしながら飲んでいてふろふき大根の唐揚げとかはまぐりと新わかめの酒蒸しとかウルイとホタルイカのヌタとかを頼んで土と青と同じでどれも本当においしくて口の中が全部おいしい。隣のテーブルの中年の男性と女性は同僚とかだろうか、最初から関係性がよくわからないなと思いながら別に関係性がわかってもわからなくてもそんなのはもちろんよその席のことでなんでもよかったのだが男性は11年前の3月11日の話をしていてビルが揺れてエレベーターからずっと変な音がしていた。それをけっこう張り切った高いテンションで話していてこれはまずいと思った僕はそのとき話していた話でかぶせようと口調と勢いを強めて話してみたがもう遅くて顔を上げたら遊ちゃんがハラハラと涙を流している。そうだよね。そうだよねと思って「そうだよねえ」と言って、遊ちゃんは「条件反射なの自分でも今でもこんなふうかと思うんだけど」と言ってそうだよねとしか僕は言えなくて遊ちゃんは11年前のその日福島県の大学生として福島にいた。同級生のマンションに数人で集まって10日間過ごしたあと埼玉だったかに避難した。自分は逃げたんだという意識がずうっとあってくどうれいんの『氷柱の声』を先日読んでその時の自分の選択を少しだけ許せるような気持ちにやっとなれてそこまで11年が掛かった。

3月12日(土) 

今日もせっせとプランクをしてスパイダープランクが加わって4種目になりつつある。スパイダープランクはきつくてすぐに音を上げる。プランクをやるたびにYouTubeを開いているとロナウジーニョの動画がよく流れてきて何度も見てしまってすごい。こんなふうにサッカーをするサッカー選手は他にもいるのだろうか、いるのなら見たいと思って布団に入ると今日は井戸川射子の『ここはとても速い川』を読み始めてすごい語りだ。
校門横の自転車置き場はいっぱい、地域の祭りやから小さい子も多いやんか。子ども乗せがしっかり固定されてる自転車が並んどって、雨避けは立体的なケース、卵のパックみたいやわ。透明な膜でも守られて、カバーされてれば冬でもちょっとはあったかいやろう。こんなんは乗ったことない、と思いながら堅いパイピング部分を撫でてみる。夏はでも、熱がその中でこもって息苦しくないやろか。 井戸川射子『ここはとても速い川』(講談社)p.6

3月13日(日) 

店に着いてヤクルト優勝の号を先日なんでだかやっと買った『Number』を読みながら朝ごはん。去年の日本シリーズは本当にいい日本シリーズだったなと思う。MLBはロックアウトが終わったと思ったら菊池雄星がブルージェイズと契約というニュースがあってうれしい。日ハムは昨日は近藤健介が監督をして楽しいし新庄は本当にすごいかもしれない。それは先日日ハムの守備のハイライトみたいなものを見たときに思ったことで去年は守りがひどかった印象があったから見違えるようだった。監督就任から数ヶ月でチームはそんなに変われるものなのだろうかというかチームじゃなくて個々の技術か、個々の技術はそんなに変われるものなのだろうか。あるいは意識が置かれるだけで全然違う動きが体に導入されるのだろうか。プロというものを半ば完成品みたいに見てしまうところがもしかしたら僕にはあるのかもしれなくてそこでちょっとした意識付けや短期間の練習でまったく違うアウトプットができるようになる余地があるものだとあまり考えていなかったのかもしれない。とにかく一年間楽しい顔で野球をやってくれたらいいなと思う。
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