抜粋
2月21日(月)
今日も酔っ払う。
2月22日(火)
新宿は経由したくない、それならば帰りも同じ経路かと思ったら吉祥寺からバスというルートが出てきたのでそれにした。バスはそう混んでもおらず、ゆったり座って日記の赤入れが済んだ。それでやっと外を見ると6時でも空に光が残っていて、家が黒い輪郭になってその向こうに広がる空はうっすらと青白い。青の下のほうは淡いサーモンピンクになっていてずっと向こうに見える山の真っ黒の稜線を縁取っている。真っ黒の稜線がサーモンピンクをうっすらまとっているようにも見える。光は刻々と失われていって、ああ、暗くなる、ボールが見えなくなる、と思う。外遊びをしていた子供の時分、暗くなっていくことは終わりが近づいてくるサインだった。まだ見える、まだ見える、と言いながらボールを投げたり蹴ったりしていた。日が短い季節は外で遊べる時間が短かったわけだ。日の長さと遊びの時間が密接に関係していたなんて、とうに忘れてしまった、覚えていられたらよかったなと思う感覚だった。
2月23日(水)
8時になると戻って店のビールを片っ端から飲もうとしているような飲み方でビールを飲んで佐藤くんとあれこれ話す。けっこう長話になったしいい話になった。佐藤くんが帰っていくと僕はご飯をどうしようと思っておかずはあるけど肉も食べたいの。だからセブンに行って豚と卵ときくらげの炒めものみたいなやつを買ってきてそれで定食のおかずをいろいろ皿に盛って味噌汁も温めていい晩ご飯だ。けっこう飲みすぎたらしくてふわふわとしている。毎晩なんでこんなことになっているんだろうと思う。
2月24日(木)
『だから僕たちは、組織を変えていける』を読みながら電車に乗って傾聴について書かれていたのでちょうどいいタイミングだったから熱心に読んで「相手目線で世界がどう見えているのか」とあってこのこれを忘れちゃいけないよなと思いながら店に着いてコーヒーを淹れたら時間になる。ブースを借りて1on1on1、マキノさんと佐藤くんと。傾聴するぞと思って始めたのだがまずは僕が今の状況だとか僕のつもりだとかを演説して、それから二人にいま困っていることとかはないですかねと話を聞いた。ああ、そうだよなあ、という話が聞けたのでよかった。
2月25日(金)
10時になり11時になり12時になる。30分で済むようなことを終えるまでに3時間とか掛かってまったく今日はどうしようもない。休みなんだからこれでいいとも言える。眠くて気持ちも落ち込んでいる。残っていたキーマカレーとおかずをいろいろ食べてシャワーを浴びて体幹。今日は3つやったあと他のものを調べていたら腹式呼吸がよさそうだ、試しに教わりながらやってみるけど腹式呼吸は難しい、もうちょっと丁寧な教えをもらいたいと思って別の動画を探すとキクチが現れてフォームローラーのキクチだ。今日も柔らかい甘い声で優しく教えてくれる。肛門と尿道を締めるイメージということでそれがなかなか難しい。僕はそういうあたりが弱いのかもしれないとも思う。一生懸命肛門と尿道を締めて呼吸をがんばっていると時間が過ぎていって2時近くになっていた。
2月26日(土)
閉店とともに店に戻りソファに座って引き続きうんうん考えている。考えの糸口も掴めないような感じがあってビールを飲んでいたらいよいよダメだ。店を今後どうしていくのか、それを考えようとしていると自然と戦争のアナロジーで考える感じになっているのに気がつく。『孫子』でも読んでみたほうがいいかなと思う。
たらふくご飯を食べて出、今日も初台の路上ではガールズバーの客引きの女性たちが白いベンチコートを着て突っ立っている。薄暗い町の一角で白がぼわっと浮き上がっている。
2月27日(日)
『建築探偵の冒険・東京篇』を読んでいると「旅行で行く先々で目にする西洋館の持ち主に建築保存の要望書を渡しつづけて何十年」という人が出てきて世界には本当にさまざまな眼差しでこの世界を眼差す人がいるんだなあ、と開けた嬉しい気持ちのいい気持ちになって車両の中をゆっくりした歩調で横断していく警備員にぎょっとした。
車両を歩いていく人に対する怖さみたいなものが植え付けられた、そのムーブ怖いからやめてよと思うようになったのはやはり京王線の事件以降だろうか。そういう人が発生しないように警備員が巡回しているのだろうけれどのっそりのっそり歩いていく人の動きがおっかない。それに、あの人が警備員だという保証は? という警戒の気持ちがまず現れる。そして店に着くと納豆を食べる。