抜粋
1月31日(月)
息を呑む。もうずっと、カーテンのように降りしきる雨と木々をおかしな形に曲げていく風の強さとその中でどうにかこうにか生き延びようとする人たちの姿に圧倒されながら読みながら泣きそうというか涙が溢れる。本を読んでいて泣くことは僕はめったになくて映画はいつも泣くけど本は泣かない、だからこれは貴重なことが起きていてそれにしても描かれている具体的な情景をなかなか想像できない、だからさっきの話に戻るようにヘトヘトに疲れる、だけどこの想像できなさはそもそも想像できないような情景でありモーションだからなのかもしれない。カテゴリー5のハリケーンの中で、だってその渦中で、人は自分のモーションを感知できないだろう、もうただただわけもわからないまま生きよう生きよう生きようとその思いだけを掴んで、いやそんな思いなんて頭にはないのかもしれない、ただただ我なんて無いただただ夢の中で、ひたすら手を伸ばし足を動かすそれだけだろう。それが完全な形で描かれているように感じる。ものすごいものすごいものを読んでいるというか見ているというか体験している。
2月1日(火)
『骨を引き上げろ』が終わって次はどうしようかなと思いながら、今日は『WHYから始めよ!』を開いて「インスパイア型リーダーはここが違う」というのが副題だ。インスパイア型リーダーは布団に入ってそれを読み始めると1ページとかで寝た。
2月2日(水)
遊ちゃんとスーパーに行き、ピザの材料を考えながらカゴに入れていく。4つ焼きたい。まずスープのやつ、それかられんこんとアンチョビ、きのことネギ、トマトソースとピーマンとマッシュルームと玉ねぎとチーズ、そんな感じにすることになってあとはビール。戻るとまずビール。それから遊ちゃんが具の用意をし、僕は生地づくり。しかし家のスケールが故障してしまったらしく、200グラムの強力粉、50グラムの薄力粉、さてどうしたものかと思い、まあ大差はないだろうと大さじ=15グラムということにして測っていった。そこにオリーブオイルと水と砂糖とドライイースト、混ぜ、そして塩、そういうレシピで捏ねたいわけだが、ダルダルだ、なんだろうこれは、前に作ったときとはまったく感じが違う、粉を足したがダルダルには変わりなく、手にこびりつく、まったくまとまらない。暗い気持ちが忍び寄ってくるのを感じる。遊ちゃんがもう一度生地をつくったらいいじゃないと言うが、だけどスケールなき今、何が間違っていたのかの検証ができない、だからもう一度つくるといっても何をしたらいいのかわからない、そんなことを言いながら生地を4つに分けてラップにくるみ、果たして膨らむのだろうか、時間が経てば何かよくなるのだろうかと思いながら15分待機。
2月3日(木)
飯食ってシャワーを浴び、またパソコンの前に座り、2時まで働いている。今日ちょっとパソコンの前にいすぎ。さすがに。それにしても、本当に、このエネルギーを、売上を上げるための行動に集中させることができたら、ここまでにどれだけのことができているのだろうなと思う。売上はなるようにしかならないと思い込みすぎている気がする。いやなるようにならないとなんて思っていないから今のは都合のいい嘘だ。やっぱり「これならできる」と思ったことに手を伸ばしちゃうということなんだろう。Notionをよりよくしていくことは、できる道筋が見えるから、いくらでもやれるのだろう。売上の上げ方は、わからないということなのだろう。わかるようにならなければいけないよ。わかるようになるためには、たくさんの試行が必要なのは、わかっているはずなんだが。
2月4日(金)
夜になり、今日必須のことが済んだ、そうしたらいよいよこれだ、確定申告の作業に入った。freeeを開くと未登録の取引が700件ある。これをゼロにするのが今日の宿題。ひたすら勘定科目を振り分けていく感じで消耗品消耗品消耗品、なんでも消耗品だ、こうやってみるとめちゃくちゃ消耗しているなと思う。
2月5日(土)
ああ、そうか、今は蔓延防止等重点措置の期間で、そうなるとこうなるんだ、と思って愕然とする。諦めきれずに吉野家を見てももちろん同じで、松屋も見るだけ見ようと歩いていくと角のところで向かいからやってきた男とすれ違いざまに軽くぶつかり、僕は「あごめんなさい」と言って、だけどなんだかよくないぶつかられ方だ、気分が悪いと思って振り返ると向こうも振り返っていた、すると男はつかつかと怒気のこもった足取りで歩いてきたから僕は後退しながら制するように手のひらを向けながら「えごめんなさいって今言いましたよね?」と言うが聞き取れなかったらしく「ええ!?」と怒りの声を向けられる、もう一度「えごめんなさいって今言いましたよね?」と言ったら「あそうなんだ」と思ったのかどうか、男は何も言わずに踵を返して歩いていった。背の高い痩せたスーツ姿の中年男性。殺気立ち過ぎ、と思いながら、歩きながら、涙がじんわりとにじむのを感じた。なんでこんなふうな人の怒りに触れなければいけないのか。いや、なんであの人はこんなふうに怒りを持たされてしまったのか。あの人の一日に何があったのか。何かが悔しくて涙がにじんだ。それから、自分のとっさに発動されなかった攻撃性についても考えて、朝も夜も、とっさには身動きできなかったなと思った。でもとっさに怒りで対応しなくて済んだのはよかった。メガネが折れたりパソコンが壊れたりしたらとても後悔したはずだから。
2月6日(日)
店。よく働く。非常に忙しい感じ。うれしい。店にいるあいだはやさしい気持ちでいられる。5時、新宿から走ってきたという川又さんが来て場を落ち着かせてから出、下北沢に。寒いしお腹が空いた、箱そばでかき揚げそばの大盛り。朝昼ご飯に食べるミニかき揚げ丼セットとは違う感覚のようだが小腹を埋めるものとしてのかき揚げそば大盛りというのはなんなのか。食い、ボーナストラック。仕事。