読書の日記(10/18-24)

2021.10.29
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『起業のファイナンス』/UNITED ARROWSでズボンを買う/念願のエコバッグ/あずさ、インダストリアルドローン、松本城/藤原印刷見学/松本ブルワリーからのビュー/かがやき、あさま、乗り間違え/那須ミッドシティホテル/姪っ子たち/ワーケーション/温泉/『一九八四年』/メールアドレス、アナリティクス、リスティング広告/気づいたら府中/タクシーのよしあし

抜粋

10月18日(月) 

時間は未定だったが打ち合わせの予定があって家に帰るとまず煮物、くったりするまで白菜と生姜を蒸し炒めにして鶏肉を合流させ、火を通したら出汁と醤油と味醂で味付けをしてがんもを入れる。そこまで行けばあとはもう煮えるのを待つだけでいい気なものだ、打ち合わせの予定はなくなって夜、酒井さんと少し電話で話す。 煮物食い、うまい。飯が進む。がんもも肉厚でとてもいい。今度また買いに行く。それでキッチンをきれいにしたり今日のうちに進めておきたい仕事をがんばって終わらせて明日の荷物を準備したりして1時過ぎに布団に入る。『一九八四年』を開いて僕は1985年、松坂世代は1980年生まれで明日松坂大輔の引退試合がある。

10月19日(火) 

タクシーに乗って10分くらいで急に目的地に着いて藤原印刷だった。もっと工場然とした見た目なのかと思っていたがファサードはそういう気配はなくて会社だった、入ると藤原隆充さんが出迎えてくださってブックストアエイドのときに打ち合わせの場に同席したり一対一でもそのあと雲散する企画の打ち合わせをしたことが一度あったけれどリアルでお会いするのは初めてだった、だけどもうこれはどっちがリアルということはないんだなと思うというかそこに「初めて会った」という感覚はまったく入ってこなくて、だから画面越しも画面なしもすっかり地続きになったなと思う。逆にそうならなかったらもう大半の人と知り合えない気すらしてくる。 それで荷物を置いて続きの部屋に進むと突然工場が始まって機械が動く大きな音が気持ちいい。 天井にスプリンクラーみたいなものがあって霧が噴霧されていて、あれはなんですかと、これから何度も何度も藤原さんにすることになる質問をすると紙はとにかく温度管理と湿度管理が大切で工場内は温度25度湿度60%を常に維持するようにしているということでさっそく面白い。

10月20日(水) 

1時半、昨日の反省から居間で眠くなるまで本を読んでそれで寝室に移動することに今日はして、だけど文庫本を片手で開いていたら、片手で開けるということは片手が空くわけだから、スマホのライトで照らすみたいなことも可能なのでは? と思って移ってそうしてみる。するとスマホケースも手伝ってくれて手を使わずともページを照らせるポジションが簡単に見つかり、晴れて眠るまでの読書を遂行することができた。陰惨な昼食を摂る食堂のテレスクリーンで潤沢省の発表がある。「傾聴願います、同志諸君! 素晴らしいニュースです。我々は生産性向上のための戦いに勝利しました!」
彼は室内のざわめきには耳を塞いで、テレスクリーンから流れてくる報告に聞き入った。チョコレートの配給を週二十グラムに増量してくれたというので〈ビッグ・ブラザー〉に感謝するデモすらあったらしい。だが、つい昨日―彼は思った―配給が週二十グラムに減るという発表があったばかりではないか。あれから二十四時間しか経っていないというのに、誰もがそんなことを鵜呑みにできるものだろうか? できる、みんな鵜呑みにしたのだ! パーソンズはいとも簡単に動物並みの愚かさで鵜呑みにした。隣のテーブルにいるめがねの反射しか見えない男は狂信的に、情熱的に、先週の配給料は三十グラムだったのではなどと言い出す手合いは必ず追い詰め、告発し、蒸発させてやるという猛烈な欲望を発散させながら、鵜呑みにした。サイムもまた―〈二重思考〉を使う何かもっと複雑な方法でではあるが、サイムも鵜呑みにした。それならば、記憶を持っているのは自分だけということなのか? ジョージ・オーウェル『一九八四年』(高橋和久訳、早川書房)p.91,92

10月22日(金) 

カフェラテを買って飲みながら帰りおいしい、くじ引き券を両親にプレゼントした。3日間お世話になったせめてものお礼だ。布団を片付けたり荷物を詰めたりして、スタッフ募集の告知をSNSでおこなうと家を出て今日はそばを食べに行く。勝手に20分くらいだろうと思っていたが車は延々と田舎道を走り続けて40分くらいは掛かったか。雨が落ちてきた。山の中で住居とか蔵とかなのか敷地にはいくつかの建物があって畑もある、奥に店があって式衛門という名だった。座敷の席についてメニューには十割、超粗挽き、吟醸、外一とか6つくらいあってそれぞれに書かれた説明の最後はそのそばを擬人化した言葉があって王様とか貴婦人とか金剛力士とか若々しい王子とかいろいろあった。そのうち3種類くらいが日替わりで用意されているらしく今日は十割と吟醸のハーフというやつと超粗挽きとど田舎そばということで僕はハーフにして温かいお茶がおいしい。やってきたそばはずいぶんおいしかった。お腹いっぱい。

10月23日(土) 

人件費も賄えない日がいくつもある。せめて今日は忙しくなるといいな。しかし予約はほとんどない。 だから暇なのだろうと思って、それならば座れるようにしたい。以前定食屋営業のときに使っていたハイチェアを屋上から持ってきた。開けたら予想通りでゆっくりとした始まりだったのでほとんど座っていた。 その様子が一変したのが4時前で一気にわーっとあって、このオーダーをやったらちょっと休憩に上がろうかなとか思っていた矢先で一気に満席になった。

10月24日(日) 

気づいたら府中で、またやっちまったと思う。はいはいと思って階段を下りて、上り方面のホームに上がる階段の前にはロープが掛かっていて電車は終わったとある。振り返って電光掲示板を見るとたしかに下りはまだあるが上り方面には何も表示されておらず、すでに電源が落ちているようにすら見える。ずいぶんやっちまったと思う。歩くという選択肢が一瞬浮かんだがきっと現実的な距離ではないだろう、タクシーしかない。僕はタクシーという乗り物は本当に避けたい生き物で移動にそんなお金掛けられないというか電車だったら200円とかなのにと思うとちょっと無理だと思ってしまうし歩けるなら歩く、時間なら使うよ、という感じ。 暗いけやき通りもきれいで見上げると夜の色になった葉がきれいだ、白い光がぽつぽつとまだらになって浮いている、その並びにタクシーが数台見えて客待ち場所のようだ、そういえば松本でタクシーに乗ったときにこういう車社会でそんなにたくさんタクシーに乗る人もいなそうなところでタクシー運転という仕事はどういうふうに成り立つのだろうと思ったが、だけど松本は松本城に行く人とかそういう観光の人で意外に回るのかもしれない。とにかくその並んでいたところに乗ると行き先を告げて車がすーっと走り出す。最初はこのただただ余計な出費にうんざりしていたが夜のドライブはいいもので、照らし出される道がどれだけなんでもない道でも見入ってしまう。
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