読書の日記(9/13-19)

2021.09.24
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9月13〜19日(全21,070文字)
『Number』、見上げる人々/ラウンジリザーズ、ジョン・ルーリー/日記の5周年/ホーローポットの戸惑い/ストレッチしながら「超相対性理論」/河野多恵子『不意の声』/Notionと部屋の整頓/WorkFlowy便利かも/ウェブサイトリニューアル本番の宴/大谷翔平の時系列、校閲の妙/優くん、野方、SWEET HOME SALAD/今日から大人気店/税理士さんがやってくる/多摩川散歩、いな暮らし、こんな定食にしたい/「ひとつのお店が持てる影響力なんて小さい。本当にそうだろうか。」「自分たちのお店が、仕事が、だれかの日常を豊かにしている。」/ソファの修理、張地の裏の世界/『アメリカン・ベースボール革命』、生き残るのはパラノイド/続くことの恐怖/久しぶりの水準の忙しさで大歓喜

抜粋

9月14日(火)
ご飯を食べながら『Number』を読み、それからワンモアコーヒー。先日店からラッセルホブスの電気ケトルを持って帰ってきて、翌朝にそれを見た遊ちゃんが言ったのはこれまで湯沸かしで使っていた黄色いホーローのポットが戸惑っている、自分はどうなっちゃうんだろうって言っているということで、まったくの同感だった。僕もこれで便利になる、火にかけなくてもボタンひとつでお湯を沸かせるようになる、これはいいことだろう、と思って持って帰ってきたわけだが、いざそれをキッチンに置いた瞬間に感じたのは言いようのない切なさで、ふた回りくらい小さい黄色いポットがとてもさみしく見えた。
これまで長い年月、遊ちゃんはいつから使っているのだろう、そう思ったら久我山の部屋を思い出して、それから『きみの鳥はうたえる』の部屋を思い出した、朝、コーヒーを淹れていた、あれも同じ色だったろうか。とにかくこれまで長い年月使われてきたポットが追いやられるような、さみしい切ない気持ちがぎゅっと湧いて、こりゃとんでもないものを持って帰ってきちまったな、と思っていたのだが、しかしその体制で数日経ってわかったのは共存できるということだった。店と同じだ、湯を沸かすのは電気ケトル、ドリップするのはドリップポット、というその棲み分けだけの話で、ラッセルホブスからホーローのポットに熱湯を移して湯温を下げる。これはいい共存じゃないか。「でももう火に掛けてはくれないの……?」ポットは少し物足りなさそうにも見えるし、そう見えるとまた切ない気持ちになるのだが、ほらでも、この使い方だと、握るところが熱くならないから素手で握れるから、これまではなんかよくわからない正方形のいい柄のやつを使って握っていた、「なんだかよくわからない」じゃなくてあれは鍋つかみだ、だから、直接触れることができるようになったのはいい変化じゃない? そう言ってみるも、「もうおべべは着させてもらえないの……?」といじけた上目遣いの涙目で言ってくるようだ。あんまりうだうだ言うと、使ってあげないゾ、と言いながら、やはり何か胸がキュッと締め付けられるようだ。
真面目に働き、働きながら初台に移動。マキノさんと交代し、店番。お客さんが何人かあってよかった。そのまま遅くまで働き、今日はなんかずいぶんちゃんとがんばっている気がする、11時過ぎ、帰る。
電車では『アメリカン・ベースボール革命』、駅からはビール、飲み始めたばかりのビールを地面に落としてそれはコロコロ転がった、拾って続きを飲んだが200円のうち120円くらいこぼしてしまった気がした、120円は誇張かな、と思ったが飲んだらあっという間になくなってしまったからむしろ130円分くらい損したかもしれない、転がって撹拌されたビールは全体に泡で包まれたようなマイルドな飲み口になって、これはこれでいいかもしれないと思う。
帰り、ストレッチ、「超相対性理論」、そのままリビングで『アメリカの〈周縁〉をあるく』を読み終え、寝室に移って『不意の声』。
七年前、父が亡くなった時、吁希子は泣いた。彼女は最悪の状態から脱けだしてから、まだ間がなかった。相変らず、親に生きていた喜びを感じさせることが出来そうな目当ては全くなかった。その後、間もなく彼女の夫となった馗一きいちとは既に深い仲になっていたが、結婚するかどうかはまだ判らず、結婚したとしても、父がそれで本当に安心するとは言いきれなかった。彼女はあれほど永生きしてもらいたい、丈夫でいてもらいたいと念じていた親がとうとう片方だけになってしまったこと、父を安心させ、喜ばせることが出来ずじまいであったことを思って、泣いた。そうして又、父が自分の最悪の状態を知らずに亡くなったことを思って、泣いた。が、彼女は幾度自分に問うてみても、あの最悪な状態を本当は父に知ってもらいたかったのだ、慰めてもらいたかったのだという気はしなかった。いつ頃からか亡父の訪れを請うようになった自分が、彼女は不思議でならないのである。 河野多恵子『不意の声』(講談社)p.14
このモタモタした語りというか、「最悪な状態」という思わせぶりな言葉が何度も繰り返されるこの感じはすごい、このもたつきがもたらす迫力みたいなものが確かにあって、最悪な状態、気になる〜! 焼きそばを食べたいな、と思う。
9月15日(水)
ゴミを捨てに遊ちゃんと外に出ると、朝8時の陽の光はずいぶんオレンジ色で、季節が移ろっていく、今年最初のこの色を一緒に見られて、オレンジだねえ、と言えてよかった。まあ遊ちゃんは昨日とかのゴミ出しのときにすでに見ていたかもしれないが。そういえば金木犀の最初の香りも一緒に歩いているときだった。
で、また寝る。寝たらけっこう遅くまで寝てしまう。あと2時間早く起きたかったなと思う。起きた瞬間から敗北が決定しているようなそんな感覚がある。よくないことだ。とりあえずご飯だ。焼きそばが食べたいと遊ちゃんに言うと、最近ちょこちょこそれ言うね、と言った、なんか食べたいんだよねと言ってスーパーに行き、カゴに入れたのは豚こま肉、人参、玉ねぎ、キャベツ、マルちゃんの焼きそば麺で、レジの人にはきっと感づかれたと思う。逆に、これで焼きそばじゃないものをつくるとしたら何がありえるんだろうか。麺は、いつも3玉は多いと思っていたら1玉でも売っていてありがたかった。
ラウンジ・リザーズを聞きながら仕事をしようとする。本当にすっごくかっこいいなと思う、そこはかとなくセクシーに思う、マーヴィン・ポンティアックも同じ感覚で聞いていた、ジョン・ルーリーは僕にとって色気たっぷりの人ということなのだろう。仕事をしようとするが、しかし今日はダメというか、Notionを整えることをやり始めてしまう。このプロパティは不要だなとか、このデータベースにはこういうプロパティがあるとさらに便利かもしれないなとか、それで新たにこういう形で配置しておけば、こんなふうに使えるかもなとか、そういうことばかりしてしまう。さらに部屋の掃除とか机の整頓とか、掃除機掛けとか。掃除機を掛けていると遊ちゃんがリビングに来て、「精が出るねえ」と言ってまさにそんな感じだった、「へい、旦那」と応えた。
9月18日(土)
店開け、予期していたとおりお客さんはまったくで、長いあいだ座っていた。今日はもともとは下北沢は2人体制だけど、これは1人で大丈夫でしょうと思い山口くんには初台に来てもらうことにした、3日丸々フルタイムはさすがに疲れそうで、来てもらえたら助かるため。
しかし雨はなかなか強まる様子がなく、窓の外を見たら傘をさしていない人もいたりするくらいだった。どうしたどうしたと思っていると人々もそう思ったのか、3時くらいからお客さんが少しずつやってきて、山口くんもやってきた。それでも暇であることには変わりないから、と思って4時過ぎに出、エクセルシオールでお仕事。すると6時前、山口くんからヘルプの連絡が来て、なんというか嬉しい誤算で喜んで店に戻る、あと一席で満席という状態になっていてすぐに満席になった。ばばばーっと働いて落ち着くと7時過ぎにまた出、ドトール、閉店の8時までばばばーっと働いてやはり山口くんに来てもらってよかった、すごく助かった。
今日は2人か3人か鈍器系の本を読んでいる人を見かけてあれはもしかすると『東京の生活史』だったのだろうか。
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