本の読める店のための音楽『music for fuzkue』配信開始のお知らせ

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本日、『music for fuzkue』の配信を始めました。
この1年近くフヅクエ店内でエンドレスで流し続けていた、岡山県在住の音楽家nensowによる、フヅクエのために制作された61分30秒のアンビエント・ドローン作品です。
この誰しもにとって困難な時、家で過ごす時間を少しでも明るいものにできないか、自宅での読書の時間にフヅクエなりの彩りを加えることはできないかと、「#自宅フヅクエ」という取り組みを始めて半月ほどが経ちました。
日々たくさんの方が参加してくださり、それぞれの読書の時間を共有してくれています。
ハッシュタグを通してたくさんの人たちの読書の時間を感じることで、不安や不確かさに否応なく晒される不安定な毎日の中、小さく弱いものかもしれませんが、何かしらの安寧が得られる場になってくれているのではないかと、勝手に思っています。
ここには、本に救われてきた人たち、本を尊ぶ人たちによる、静かでやわらかな連帯のようなものがあるように思えます。
こいつは、すごくいいものだ(なにより僕自身が、店もほぼ休業中だったりで何かと暗くなりがちな中、このハッシュタグにものすごく救われています)。
ツイートを拝見していると、みなさんそれぞれ、飲み物を用意したり、おつまみやお菓子を用意したりして、読書の時間をより素敵なものにするための工夫をこらしているようです(僕は最近フォンダンショコラを焼きました!)。
その中で、「そこに、本を読む時間を彩り、支える音楽があったら、もっといいんじゃない?」とふと思い、nensow君と相談し、配信をスタートすることにしました。
もともとは、この1年近くにわたり、nensow君による音源のブラッシュアップ、旧知の写真家である齊藤幸子さんによるジャケット用写真の撮影、それから阿久津によるテキストの執筆と、CDにすることを前提に制作しており、配信はCDが発売して少ししたら始めようか、というつもりでした。
その制作も大詰めを迎えており、5月ぐらいにはリリースできるかな、というところまで来ていましたが、そんなわけで、まずは配信から、始めちゃえ、というところです。
「すべての音が鳴っているようだ。
これまでフヅクエに流れてきたすべての時間がこの中で、鳴っているようだ。」
これが、僕がこの曲を延々と聞きながら(あるいはこの曲が流れる中で過ごし続けながら)、ずっと感じていることです。
これまでたくさんの人が本を読んで過ごしてきたフヅクエの時間のすべてが、この61分30秒の中に凝縮されて、反響し合っているような、そんな音だと感じ続けています。一年聞き続けても飽きなかったので、一生飽きない予感がしています。
ヘッドフォンで大音量で聞くのも、スピーカーから小さな音を流して聞くのも、どちらも気持ちいいはずです。
ぜひ、穏やかな時間のおともに聞いてみてください。
2020年4月14日 フヅクエ 阿久津隆