サイレントオープン、サイレントデイズ

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カルチュア・コンビニエンス・クラブが今度オープンさせる湘南T-SITEは事前にオープン日などの宣伝をせずに、あたかも「ずっとありましたけど?」みたいな顔で始める、サイレントオープンという方法を採用するらしい。代官山のときもそうだったとのこと。とは言えあれだけのブランド力というか知名度があると「できるらしい」という一片の情報だけ投げておけば人々の期待は勝手にジリジリと熱していくのだから、サイレントだろうとなんだろうと最初からガツンといくのだろう。だから「サイレントオープン」でググったら一番上に出てきた記事に書いてあるものとはまるで関係のないサイレントなオープンで、過剰な混雑回避のためだとか、CCCがT-SITEで表現しようとしている美学というか哲学というか姿勢というかの提示の方法といったところなのだろう。(関係ないけど僕はブルーボトルコーヒーのオープンが楽しみです)
フヅクエもCCCのやり方にならってというわけではないけれどもサイレントにオープンする形をとった。FacebookやTwitterの個人アカウントでは工事の進捗状況などを日報的に書いて、「今日は机ができたよ」みたいなことを伝えていたけれど、伝えていたことなんて本当にそれくらいで、どんなコンセプトの店をやるだとか、いつ開けるだとか、最初の3日はビール一杯無料だとか、そんなのはなかったけど、そういうことはまるで書かなかったし、外に向けての宣伝ということも何もしなかった。 看板も出していないので、初台の方々も未だにここに何があるのか、そもそもやっているのかいないのか、ご存知でない方が圧倒的多数だろうと思う。 ショップカードも作ったけれどまだどこかに置いてもらったりはしていないし、カードにある情報もURLだけだ。
変な知られ方をしたら食い物にされてしまうんじゃないか、みたいな、ちゃんと知らせて知られて困ってから言えよって言われそうだけど知られちゃったらもう遅いみたいな、トーキョー、みたいな、これはお上りさんゆえの東京という町への怯えなのかもしれないけれどもそういったものが自分の中にあるみたいで、いったんwebを経由して、どんな店でどんなつもりでやっているのか知ってもらって、そのうえで行きたいと思ってくれた方が来てくれたらいいなと、そこからジワジワ増えていったら、あるいは何らかの方法を用いてジワジワ増やしていけたらいいな、みたいな感覚でいたし今もいる。
そんなわけで今日で開店して10日ほどが経った。 今日は夕方の30分くらいのあいだに4人の方が立て続けに来られ、「こんな立て続け初めてだよ!」「まさかフヅクエ、ブレイクしたのか!」「こんなに、俺、こなせるかしら!」みたいに一人でワタワタと盛り上がったりしていたのだけど、素晴らしく充足しているように見えた静かな時が数時間流れてみなさん帰られたあとはこれといった音沙汰もなく、だいぶ経ってもうお一人来られた。というのが今日の全部。 今は来てくださった方一人ひとりにナイスな時間を過ごしていただいて、「いいじゃんこれ」と思ってくだされば万事OKの時期という位置づけではあるのだけど、「こんなにもお客さんって来ないものなんだ!」という新鮮な驚きの中で日々営業中です。そしてこの「うまくやんなきゃ一年後とかニートになってるかもしれないってことじゃん!」という強迫観念は存外、ワクワクするものだったりしている。(と震える指でタイプしている)