「なんで初台にしたんですか?」ということはよく聞かれることの一つで、一つと書いたけれどもそれ以外によく聞かれることってそんなにないような気もしてきた。
で、なぜ初台か。
元々、聞き覚えや行き覚えのある町が多かったため、新宿より西側で探していた。ただ何線沿線がいいっていうのは特にはなくて、京王新線、小田急線、田園都市線、東急東横線、どれでもよかった。幡ヶ谷も笹塚も見たし、下北沢も代々木上原も池尻大橋も三軒茶屋も代官山も祐天寺も、条件に合いそうな物件があれば見に行った。
条件というのは家賃の上限と、あとは2階以上で窓広め、というところで、それが満たされていたらどの町でもいいような気でいた。
ただ、営業後にバルト9に行ける距離で、と考えると、東京を自転車で走るということがどういうことなのかを知らなかったその時の僕には京王新線なら幡ヶ谷まで、小田急なら下北まで、くらいかな、田都や東横だとちょっと遠そうだよね、というところだった。
物件を探している時分、一度いろいろな町について詳しい方を友人から紹介してもらって時間をいただいてお話をうかがったことがあって、それは何かと「ほえ〜〜〜」という、「町ってなんだか楽しいですね!」というやたらに楽しい時間だったのだけど、その中で京王線はどうかな〜、コンセプトとか的に、合うかな、ということは言われていた。
そういう中で初台のこの物件は、実はいちばん最初に見た物件で、そのときは最初だし様子見ということもあって「まあ、悪くないですよね、窓大きいしわりと広いし」という感じでスルーしていたのだけど、他の物件を見ていく中でむくむくと「あの箱よかったよな… あれが実は正解なのでは?いや、あれこそがそれだ!」と思うに至った。
そして問題は次のステップに移った。京王線はちょっとあれと言われたし、初台がどんな場所なのか知らない。そこをよくよく考えてみなくては、と。
初台。
まったく馴染みのない町だ。大学時代にICCと新国立劇場にそれぞれ1度ずつ行った、それくらいしか記憶になかったし実際それ以外で行ったこともないはず。だからオペラシティ側じゃない側の初台なんてまったく初めて見る町だった。
印象としては「のどか」という感じで。一つ横にいった幡ヶ谷や、あるいは南下した下北沢なんかと比べても店の数がずっとずっと少なくて、新宿駅の一つ隣りだし首都高がすぐそばを走っているとは思えない静かな場所で、なんというか、商売をやる上でこののどかさはけっこういいんじゃないか、店が周囲にたくさんあると疲弊しちゃうんじゃないかメンタル、みたいなこともあった。
また、バルト9にはすぐ行ける、映画館あれこれある渋谷も近い、緑が見たくなったら代々木公園、飲みに出るにも八幡とか上原とか幡ヶ谷とかお店たくさんあるっぽいし、友達がわりと住んでいる高円寺にもじゅうぶんアクセスできる、よし、初台!みたいな、なんというか、「住む町じゃなくて商売する町の話してるんですけど?」と言いたくなるような決め方だった。
そして日々、思った通りに静かだし、どこにでもアクセスできるし(東京に暮らすのはほぼ初めてのことなので、チャリがあれば東京ってこんなにわりとどこでも行けちゃうのか、と日々びっくりしている)、ほんと、けっこういい場所だよなやっぱり、と実感しながら暮らしている。