『nice things. 2016年7月号 訪ねたい場所』

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旅行したいなーとはあまり思わないタイプの人間なのだけど最近はたまにはどこかに足を伸ばしたい気もするっちゃするけど楽しめる気もまったくしない、ので鎌倉とかで一泊とかそういうぐらいの旅行をしたいような気がしないでもないというかしたほうがいいんじゃないかというような気がしている。
なんとなく神奈川が好きというか、神奈川方面は魅力的というか、というのがあるのか、大学時代が藤沢市民だったので神奈川は暮らしていた場所ではあって、鎌倉や江ノ島などもたまに遊びに行くような土地ではあった。オッパーラであるとかで、いい夜があったりもした。同居人とあれはたぶん卒業直後なのかな、同居人の車で雷の夜に稲村ヶ崎のイタリアンのタベルナ・ロンディーノに行ってイカスミのパスタとか食った。やたらタベルナ・ロンディーノを僕らは好いていた。そうかあれはだからルームシェア解散前夜で、翌日彼は大阪へと、車で走っていったのだったか。引っ越しまであと何日かあった僕は一人取り残されたコルビュジェ湘南台というすばらしいネーミングのマンションの1階の3LDKとかのがらんとした一室でその夜たぶんマックでハンバーガーとかポテトとか買ってきて、食いながら、プロ野球中継をPCで見た、開幕戦とか。ダンボールの上とかにPC置いて。たしかそんな光景があったはずだ。
鎌倉。卒業後、だから神奈川を離れてからも何度か行ったその土地を僕はなんだかたまに行きたい場所として持っているらしく、今度は保坂和志の『季節の記憶』を読みながらか読んでからか、クイちゃんたちが歩いた場所をたどるか認識するかしながら、鎌倉に行きたいような気がここのところずっとしているようなそんな気がして、それでaiaoiに泊まって「素敵な内装ですねー」とか言って、早々と部屋に入って酒でも飲むか飲まないかしながら本読んで寝落ちして、起きたら写真で何度か見た素敵&立派な朝ごはんをいただいて、行ったらいい場所を指南してもらってチェックアウトしてそのあと一日また適当に過ごす、海を見たりして過ごす、なんとなく気持ちが疲れてきたから小田急、ひさしぶりの小田急に乗って、片瀬江ノ島から、湘南台で下車してみようかなとか思いつくけれどなんかやっぱり疲れたからもう普通に帰ろうと言って。湘南台から新宿まで僕は大学時代に定期を作って使っていて、それで新宿やら渋谷やらの映画館に行きやすいようにしていた。そういうことを思い出す。この方向、新宿方面のこの流れを何度となく過ごし、そして当然帰りは逆方向で同じだけの数、帰ってきた。そういうことを思い出す。それで今や「帰る」はこっちになったんだなと、あまた思い出した、岡田利規のというかチェルフィッチュのというか素晴らしい『三月の5日間』で連泊しているラブホからいったん出てカレー屋に行ってホテル目指して帰るこの「帰る」の方向の違いが旅行感あって非日常感あるよねというあの場面というかあの感覚を、また思い出して、そうか今の僕は帰るはこっちなんだねただいま新宿、ここにはなんの感慨もないね、でもいちおうただいま、そんなふうにして小旅行は始まりすらしなかったのではないかというような気配を漂わせて終わる。
そんなふうな感じでaiaoi泊まってみたいんだよねとちょくちょく思っていたら掲題の雑誌で紹介されていてやっぱり近々かいつかかできれば近々で泊まり行きたいなと思った。また、わたしのだいすきな1988 cafe shozoも出ていてまた年末に行こう、年末って半年後か、遠いのか近いのか全然わからない、ともあれ大好きというか大リスペクト引き続き、と思った。黒磯。というか読んでいたらどこも訪ねたくなったから俺簡単。波佐見町とかすごい気持ちよさそう。
というわけで掲題の雑誌の「今月のカフェ」的なコーナーで紹介いただきました。編集者の方が何度かうちに来てくださっている方で、雑誌の取材でそういうことってこれまでまずなかったので、やはりそれはうれしいことだった。ちゃんとうちを知ってくださったうえで、紹介に値する場所だという確信を持って来てくださる、というのは、僕はこうやって取材とかを受けるようになるまで取材する人って事前に店に行ったりしているものかと勝手に思っていたので必ずしも全然そうじゃないということがわかってまあそういうもんなんだねそんなのやってたらキリがないだろうししょうがないよねとは思っているのだけど、やはり実際にこの場所のこの時間を知ったうえで来てくださるというのは、の方が、受ける側としてはうれしいことなんですよね。なのでうれしかったです、という話でした。